滅びのカウントダウン 1

 谷山家で突然倒れた秋葉は、青子がどんなに呼びかけても反応がなかった。

 彼を抱き起すと信じられないほど軽い。

 まさに等身大に作られた人形のようであった。


 部屋の入り口で顔面は蒼白、呼吸も停止しているのではないかと全身を硬直させ、この世で最も恐ろしい事態が勃発してしまったかのように村瀬は完全にフリーズ状態である。そんな村瀬に青子は「しっかりしてよッ、村瀬さんッ!」と声を張り上げて怒鳴った。


 ビクッと村瀬が反応し、ふらふらしながら秋葉のもとへと足を運ぶ。

「どうしたの村瀬さん。いつものあなたじゃないッ」

 青子がどんなに大声で叫んでも、村瀬は心ここに在らずの状態で、反応が鈍い。


「救急車を……呼びますか?」

 早苗の母親が申し訳なさそうに小声で訊ねる。


「いえ……大丈夫です。私たちは家へ戻ります。娘さんのことは心配しないで下さい。一、二週間ほどで、元気になって戻ってきますから……多分…………」

 最後の方の言葉は、自身がなく、どんどん尻つぼみに小さくなっていく。


 村瀬は、等身大の人形となってしまった秋葉を抱き上げて立ち上がった。

 常に冷静沈着な彼からは考えられない。

 その緊張が青子にも伝染してしまったようで、ポケットに入れておいたスマホを取り出そうと試みるが、手の平は氷のように冷たく、ガタガタと震えてアドレスを開いて見知った名前を探すが、震えて上手くいかない。


「は、濱田先生に、連絡を入れますか?」


「……秋葉のこの状態は、どんなに進化した人間の医療技術ではどうにもならない」

「では、では、どうしたら…………?」


 青子も蒼白になり、あまりの緊張で口の中がカラカラに乾いてしまって、上手く話せない。


「と、とにかく、屋敷へ……」

 村瀬は、弱々しく支持を出す。

「分かったわ」


 村瀬が強く抱きしめている秋葉は、不自然に瞼を開いたままで、覗く瞳は何も映していないガラス玉のようである。

 恐ろしくて口に出来ないが、秋葉の状態は、死人のようであった。




 村瀬の車は青子が運転していた。

 こんなに落ち込んで憔悴しきっている村瀬に運転をさせたら、必ず運転操作をミスって盛大に自爆事故を起こしかねない。

 そして三人で仲良くあの世へ直行なんてッ「それだけは絶対に避けたい」の一心で、今まで軽自動車しか運転したことがない青子である、今運転している車は村瀬のもので、二千五百馬力の高級セダンで、エンジンも大きければ車体も大きい。

 緊張でハンドルを握る手が、ずっと嫌な汗をかいている。


 後部座席の状況は、バックミラーで確認するのも怖いくらい必死の形相で、村瀬は秋葉を抱きしめたまま微動だにしない。

 村瀬の計り知れない動揺と恐怖が、運転している青子にも伝わってきて、呼吸も苦しく、気づかぬ内に青子は肩を上下させ口呼吸をしている、それも酷く荒く。


 こんなに安全運転を心がけて、制限速度ぎりぎりのスピードで車を走らせたのは、免許取りたての初日以来だ。


 村瀬は言った。秋葉は人間の医療ではどうすることも出来ないと。それでも今、一番頼りになるのは濱田医師だけしか青子は知らない。車に乗り込む少し前に青子は濱田医師に連絡を入れていた。


 その瞬間、スマホからは濱田医師の恐ろしいほどの緊迫感と、息を飲む気配だけが伝わって来た。


 あの日、明里のために往診に来てくれた時の老医師は、明里を診察している時よりも、秋葉の状態を確認している方が真剣で、青子は単に秋葉が難病でも抱えているのだろうかと、その時はただの傍観者の立場で軽く思っていた。

 だが、秋葉が抱えている問題はそんな簡単な言葉では語れるものではなかった。


 これは飽く迄自分の主観だが、秋葉は常に「命のシーソー」の中心に立っていて、シーソーが大きく傾いた方向によって生死が決定するという危うい状態なのだろうか。



 離れの屋敷に到着したのは夜の九時過ぎであった。

 車が離れの屋敷に到着した時には、濱田親子が既に待機していた。


 まったく使い物にならない村瀬から秋葉を抱き上げて、使用人と一緒に彼の自室へと運んだのは息子の雄介医師である。


「どうしよう、どうしよう。秋葉が…………」

 後部座席で顔を両手で覆い、狼狽しきっている村瀬を座席から引っ張り出す濱田の老医師は、村瀬の胸ぐらを掴み上げるた瞬間に、パンッと鋭い音を響かせて頬を平手打ちする。

「しっかりしろ村瀬ッ、お前がそんな状態でどうする」

 濱田医師の厳しい恫喝どうかつに、村瀬はガタガタと震え、涙でぐしゃぐしゃになっている情けない表情のまま、

「こ、今度こそ……今度……こそ秋葉は、御神おんかみに連れて行かれてしまう。俺のせいだ。俺が秋葉を止めなかったから…………ッ」と言って、村瀬は崩れ落ちるように濱田医師に縋り、恐怖に怯える子供のように号泣した。


「この、バカタレが……」


 濱田医師は、秋葉を神によって失うのではないかと、初めて会った頃の十六歳のまだ高校生の少年のように不安で押し潰されそうな村瀬の頭を抱え込むように抱きしめた。


 彼は秋葉がまだ二歳半の幼い時に両親を無くしている。


 村瀬隆弘は、心無い母親によって雪深い神社の前にヘソの緒が付いたままの生まれて直ぐの状態で捨てられていた。

 その小さな体を簡単に布で包んだだけで、見付けられた時には凍死寸前であったという。


 そのせいか村瀬は一人になるのを酷く恐れている。


 秋葉とは血の繋がりはないが、村瀬の本当の弟して自分もまだ未成年だったというのに、手のかかる幼子の親代わりとして大切に育て、色々な教育も施してきたのだ。

 秋葉は幼い頃から村瀬にしか心を開かない。

 そして村瀬もおかしな言い方かも知れないが、秋葉を実の子供以上に愛し、もう三十四歳という年齢だ。何度か縁談の話があったが、それがどんなに良い所の娘で、誰もが羨む良縁だったとしても結婚をして家庭を持つという考えは、彼の中には一ミリも無かった。

 

 すべては大切な秋葉のためで、それ以上でもそれ以下でもない。


 そんな村瀬だからこそ…………である。

 

 だからこそ、濱田老医師は告げる。


「分かっている。もし、御神が秋葉を高天原に連れ帰ると言ったら、わたしたち全員で身体を張って、連れて行かせないと談判すればいい」

「だ、談判…………?」

「そうだ。わたしも雄介もそのために来た。そして隆弘、お前もだ。青子さんだっているから、なにより心強い」


 村瀬のことが心配で老医師の隣に立っていた青子は、突然、神様に身体を張って喧嘩を売る仲間の一員に、自分は既に含まれているのだと知って、青子は一瞬、指で自分を指しながら「なんで? あたしが?」と言う言葉が口から飛び出す前に、必死にその言葉のすべてを飲み込みこんで、いつものように鼻息も荒く、偉そうに腰に手をやって仰け反り、大口を叩く。


「まっ、まっかせなさいッ。そんな神様はあたしがぶっ飛ばしてやるわッ!」

 と、息巻いてしまった。


 この時ばかりは己のバカが付くほどの単純さに思い切り後悔し、ギャグ漫画の一コマのような虚しい涙が波形になって、流れた。





 ベッドに寝かされている秋葉は、本当に等身大の無機質なただの人形である。


 彼からは、生きている人として必要なモノすべてが存在していない。

 少し開いている瞼から覗く目は、美しいガラス玉だ。


 濱田の息子の雄介医師が秋葉を抱いて移動している時、揺れる手足の関節部分が擦れ合い、玩具おもちゃのようにカチャカチャと音をさせていた。


 こんな時に不謹慎だと思うが、開け放した障子から見える広くて長い縁側のガラス張りの引き戸から差し込む幻想的な明るく蒼い月明かりに照らされる秋葉は、天才と謳われる意匠いしょうの人形師が精魂込めて作り上げた最高傑作の作品のように、その表情はうっとりするほど美しい。


 前に濱田老医師が「秋葉の全身は、ただの器だ」と言っていた。そのため彼には喜怒哀楽の表現が上手く出来ず、その姿を見る者には「何と不愛想な子供だ」と受け取る者は多いと。そのため濱田医師は秋葉の事を「可愛くないだろう?」と青子に訊ねたことがある。


 一緒の仲間となり、彼らと接する時間が長くなればなるほど、秋葉の感情は豊かで、本当は表情だって少しだがコロコロと変わり、可愛いクソガキである。


 ここで働いてくれている人々が、秋葉と村瀬を大切な家族の一員として、接している理由が、今なら理解できる。


 青子は無意識に秋葉の冷たい綺麗な頬に触れた。


「秋葉ぁ~、早く目を覚ましなよ。あんたがこんなだと、あたしマジでつまんないよ……」


 ただ眠っているだけに見える秋葉に、何気なくかけた青子の言葉に、ベッドを囲んで、この離れで働いている者たちが全員が目頭を押さえたり、ハンカチで目元を押さえて泣いている。


 彼は、こんなにも多くの人たちに愛されているのだ、青子は更に早く目を覚ませと言葉を口にする。


 そしてこの部屋に集まっている者たちは、この屋敷で働いている人々も含め、十五人が固唾を飲んで「高於ノ御神たかおのおんかみ」のお出ましを今か今かと、姿勢を正して待っている。その全員の顔には命をかけてでも神と本気で喧嘩をする覚悟を決めた者たちだ。


 誰も彼らに要請したわけではない。

 全員が「秋葉を連れては行かせない」という強い意志で集まっている。


 と、言うのに……。神様というヤツ……もとい方は、この世の出来事は全てお見通しのはずだ。秋葉が今、どんな状態でいるのかも十分に分かっているはずだ。


 なのに。

 

 神はこの状況を嘲笑あざわらっているのか、はたまたただの偏屈な性格なのか、なかなか姿を見せない。

 これでは日を跨いでしまうではないか。

 覚悟を決めて集まっている者たちの中には、そんな神に対し不満や何となく腹立たしいく思う者も出だしていた。


 雄介などは慣れない正座に足がしびれてきたのか、足を崩し胡坐をかいた。

 そして今の彼の精神状態を雄弁に語るべく、その足をカタカタと動かし、貧乏ゆすりを始め出す次第である。


 秋葉のこの状態は、無謀にも人間界に神々が住まう高天原そのものを引っ張り込むという暴挙に出て、神の命の素と言うべき神気を限界まで使い過ぎたため、「秋葉」という人間を維持するためのエネルギーが空っからの枯渇こかつ状態になっているのだ。

 早く言えば人の姿を形成するだけの神気が残っておらず、ただの器である人形に戻ってしまったのだ。これが神々の住まう高天原であったなら、無限に存在する神の力である神気のエネルギーで溢れているため、このように神の気が枯渇するような事態には決して陥らない。


 そのため御神は、秋葉にこのような事態が起こる度、あの厳つい顔で「次はないと思え。再度秋葉に何か合った場合は、我のいとし子を高天原に連れ帰る」と脅し文句を残して、秋葉に必要な神の生命力である神気をたっぷりと補充していくのだが…………。


「遅いッ。遅すぎる。高於ノ御神は武神であり、荒神でもある大神おおがみのはずだ。何をぐずぐずしている。俺の大切な秋葉が可愛くないのかッ!」

 と悪態を吐く雄介である。

 いつもは軽薄そうなイケメン医院長を演じているのに、今は本来のがそのまま出てしまっていた。


「秋葉を可愛いと心から思っているのは、アンタだけじゃないんだからなッ」

 と天に向かって、偉そうに叫ぶ命知らずである。


 その態度に、濱田父は呆れたようにため息を吐き、雄介の後頭部を派手な音を立ててひっぱたいた。

「いい加減にせんか」

「親父は悔しくないのかよ。今回ばかりはマジであの神が秋葉を高天原に連れ帰るのではと、全員、覚悟決めて待っているのにッ」

「そーよッ。あたしもその何とかっていう神に、一発ぶん殴らなきゃ、気が治まらないわよッ」

 変な所で意気投合する二人は「だよなーッ」とガッツポーズをする。


 盛大なため息を吐いて頭を抱える老医師の傍で、酷く落ち込んでいた村瀬が緊張感の糸が切れたように噴き出して笑い出す。


「おっ、隆弘、いつものエンジンがかかってきたか? 俺たちでスクラム組んで、あの御神やろうを天界までぶっ飛ばそうぜッ」

「おおぉぉぉぉぉッ!」

 拳を振り上げるのは、言うまでもない青子である。

 それに対し村瀬は少し困惑顔で、あれでも御神は一応は大神で武神で荒神でもある。その御神がマジ切れして大暴れすれば、日本など彼が人差し指の一突きで、前に観た昭和時代の映画のように「日本沈没」させるのは簡単だ。

 雄介と老医師のじいちゃんの間に挟まれる形で座る村瀬に、じいちゃんは一言いうのであった。


「こいつらは、一度死ぬ目にでも合わんと理解できない、どーしようもない馬鹿なヤツらだ」

 と、にべもないことを言う。

 その瞬間、秋葉のベッドの前に並んで座っている四人の背後に、全身が鳥肌立ち、おまけに、その背中に大量の氷をゴロゴロと投入されたような悪寒に、四人はギギギッと音がしそうにゆっくりと背後を見やる。そこには思い切りいかっている荒神の顔で、御神が後ろで仁王立ちしていた。


 雄介と青子は文字通り飛び上がり、素早い速さで立ち上がり戦闘態勢に入る。

 武神らしく見上げるほどの長身でガッチリと盛り上がった筋肉に覆われた体格の高於ノ御神が腕を組み、不遜で言いたい放題の雄介と青子を、それは恐ろしい眼光で睨み、その視線を老医師と村瀬に向ける。


<久しいなご老体、それに隆弘――!>


 御神の視線が村瀬に留まった瞬間、村瀬の顔色の悪さと泣き腫らした顔を見て、御神も同じく蒼白になる。


<ど、どうしたのだ隆弘。誰かに意地悪をされたか? 誰に泣かされたッ>

 御神はムキムキの大柄の体躯で村瀬の前に跪き、父親が大切な我が子を案ずるように、大きな手の平で村瀬の頬を両側から優しく挟み込み心配そうにその顔を直視して、そのまま視線をギッと雄介に向けられる。


「言っとくが、泣かせたのは俺じゃねぇよ。アンタだよ」


 雄介は不敵にも御神を指して睨み、厳しく発言する。


 すると「そうだッ!!」と、この部屋に集まっている使用人全員の人差し指が同時に一糸乱れず御神を指す。


<??……わ、我が隆弘を泣かせたと?>

「そうだよッ! アンタが余計な事を言うからだ。今度秋葉に何かあったら『秋葉を高天原に連れ帰る』とね。何千年も生きていて、とうとうボケたか」

<――ッ!>

 炎のように燃え上がり揺れている髪が、怒りで噴火したように勢いを増し、天井に届くほど垂直に吹き上がる。


 部屋にいる使用人たちが一瞬怯むが、怒る高於ノ御神の膝に村瀬が手を置くと、不安を隠しもせず御神を見上げてくるいとし子をギュッと抱きしめ、

<そうか、我の余計な発言で、そなたをそんなに不安にさせたか。済まなかった>

 と詫び、お前たちを連れて高天原に帰るのは、今ではないと返答する。

 それに素早く反応したのは老医師であった。

「御神様、失礼ながら、それはどういう意味ですかな」

 年齢を重ねたぶん、老医師は思慮深く察しが良い。


 御神は人形の姿に戻ってしまった秋葉の手を握り、神気を送り込む。

 秋葉の手から貪欲に吸い込まれていく神気の量は驚くほどで、サハラ砂漠の砂に水を撒くようなモノで、まったく底が見えてこない。

 それだけ秋葉が人としても神の子としても、大きく成長していることを意味していた。


 神は嬉しそうに笑みを浮かべる。


「どうか……しましたか、御神」

<いいや。秋葉もそなたもしっかりと成長していると、嬉しく思ってな>

「わたしもですか?」

<そうだ。我のいとし子の成長は父としては嬉しいばかりだ。隆弘、お前もこちらへ来なさい>


「いえ……。わたしは…………」


 照れる村瀬に御神は手を差し伸べ、父を誤魔化そうとしても無駄だ。そなたが酷く疲労していることなど、我には一目瞭然である。と自信満々で宣言する。

 人の間では村瀬は細身だが、この屋敷の中では一番の背が高い。御神の膝上に乗せられると体躯が人の二倍近くある神の前では、幼子も同然に小柄に見える。

 御神の膝に招かれるまま座ると、神は心から愛する我が子を鍛え上げた己の胸に抱え込み、秋葉と同様に神気をその身体に流し込んでいく。


 温かい気が、心身共に疲れ切っている全身に流れ込み、気持ちの良さに眠くなってしまうほどだ。


 その時神は、独り言のようにそっと言葉を零した。

 それは、信じがたいほど恐ろしい言葉であった。


 高於ノ御神は言葉を発する。

 まるで昔の神話を語るように朗々と。


 秋葉と隆弘を連れて高天原に帰るのは今ではないが、そう遠い未来でもない、と。

 

<そなたたちも感じてはいるだろう。日本の国が大地震、または愚かな人間たちによって現在引き起こされている無意味な大戦争に巻き込まれ、日本本土は四分割に割れ、海中に、日本海に沈む>


 その場につどう者たち全員が息を飲み、沈黙した。


<地球の地軸が狂うと、人間も自然もすべてが発狂したように狂いだす。人間は人としての心を失い理由なく無差別に殺し合う。それはもう既に始まっている>と。


 日々ニュースで流れる話題は、悲惨なものばかりである。


 人が多く集まる場所で手に鋭いなたを振り回し、まったく無関係な女・子供・年寄りなど弱い人間を残酷にその者の体を鉈で叩き割って殺してまわる猟奇的殺人。

 人の財産を、残酷な笑みを浮かべながら、言葉巧みに根こそぎ騙し取る詐欺。

 何が気に入らないのかその人間は変貌し、何かに取り憑かれたように自身の運転する車で突然煽り運転をし、無関係の車体に狙いを定め、不必要に追い回し、そのため追われた車は事故を起こし、尊い命が奪われる。


 実の親殺し、または子殺し。


 介護に携わる看護師、医師による寝たきりの患者への暴行や虐待、そして悲惨な殺人が起こる。


 数えれば切りがない。


 それは日本に限ってのことではない。

 世界すべてが狂い始めている。


 日本の地震科学者はこう言う。

 日本を揺るがす大地震は、三十年以内に起こると。

 だが現実は、そんな悠長に構えている時間はない。


 大地震は今日か、明日か、一週間後か、または数か月後か。


 それこそ神のみぞ知るである。



 全世界の神々たちは愚かな人間たちに激怒し、こんな人間はいらないと心底幻滅し、既に全てを終わらせる滅びのスイッチに、神々の指は乗せられ、カウントダウンを数えながら、スイッチを押すのを指折り数えながら待っている状態であると――――――。









 

 

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