第3話

どこから話を始めようか?とりあえず、今の状況から説明を・・・


今俺は渋谷駅の合流地、いわば乗り換えで人がごった返す中心地に俺はいる。


いや、俺だけじゃない。目の前のには瞳子もいる。しかし、この空間には俺と瞳子しか歩いていない。


全部が止まっている。まるで一時停止された映画のようにみんなが静止している。動作の途中で皆止まっているのだ。


「だから、言ったじゃない。本当だって」

瞳子はそう言って後ろ髪を靡かせるのだ。


俺は絶句する。頭が追いつかないからだ。

俺も追いついてないからみんなはもっと追いついていないよね。

だから、整理する事にする。一緒にね。


事の経緯はこうだ。

連絡先を交換したその日の夜に瞳子から連絡があった。


「明日の夜空いてる?空いてるなら渋谷駅で待ち合わせしましょ」


簡潔に書かれた文章が俺に送られてきた。え?

これってデートだよね。俺はガッツポーズしながら返事を送った。


勿論答えは、ノープロブレム、「空いてます」だ!


そうして、俺はデートだと浮かれて、しかも憧れの制服デートだと浮かれながら、トイレで髪型死ぬほどみて、歯も何回も磨いて向かうのだ。浮立つ自分にちゃんと言い聞かせる。別に期待してるわけじゃない、身だしなみは立派なマナーだと・・・


目印の山手線の改札口前に瞳子は待っていた。


「ごめん、遅れた。待った?」


一度は言ってみたかったセリフを俺は言ってみる。決まったか?と俺は思いながら、ポケットに手を突っ込む。


「ううん、大丈夫」


「そう?良かった!」

と俺は返答する。瞳子はそんな俺の顔を見て微笑みかける。


「じゃあ、行こうか?」

と言い俺は歩き出したが、瞳子は動かない。微動だにしないのだ。両手で持っている鞄は揺れもしない。


「大丈夫ってそういう意味じゃないよ。私はもっとずっとこの機会を待ってたの」


「え?」



「家賀良人、私はあなたに会うためにここに来たの」

そう言って瞳子は指を鳴らした。その瞬間、駅構内の人々の動きが止まった。


「ねえ、私の事好き?」

と瞳子は俺に尋ねる。俺は思わず、うなずく。


「じゃあ、お願いがあるの」


「何?」


「私を助けて」

そう言って彼女は俺を見つめるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る