第6話 メール

   6.メール


 クラスメイトの友人が遺書を残し行方不明になったと聞いた。

 その時はまだ学生で、実習で夜を眠れない時分であったのだが、それなりに付き合いのある友人だったので、クラスの男連中でグループになり、彼を捜そうと言う話しを持ちかけた。


 しかし皆実習の最中。明日の課題などに終われる日々で、心配だが、実習が終わる2週間後までそんな事は出来ないという事だった。


 しかし遺書めいたものはあるし、まさかという事も考えられる。俺は声を大にして実習なんぞよりも大切なことがあるだろう、という趣旨の事を説いたが、厳しい実習で精神的にも身体的にもいっぱいいっぱいの彼らは、苦虫を噛み潰した様な表情はすれど、首をたてにふらなかった。


 家庭があったり奨学金を借りたりして皆実習で落ちるわけにはいかなかったのだ。うちの学校は学費が安いだけに凄まじく厳しく、あっさりと学制を落第させるので、全員がそれに怯えていた。


 俺は渋々了承し、自分も捜すことはせず、日々の実習に身を投げた。


 次の日に行方不明の友人にメールをおくってみたが返信は無かった。



 1週間後、行方不明だった友人は、近所の漫画喫茶の駐車場で練炭自殺をしていた。


 実習は急遽中断となり、学校に集められた俺たちは皆後悔でむせび泣いた。

 俺も同じ様にして、捜そうとしていたが行動できなかった事を吐露して泣いた。


 その日の夜。もうこの世にいないはずの友人からメールが返ってきた。俺は肌に粟を立てて驚きながら、それを見た。


『恨むぞ』

 

 たった一言の返信に目を白黒させながら動揺した。


 心当たりはなかった。そいつとは仲良くしていたつもりだった。

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