二章 歪んだ家

第4話 因襲 <日出 卯の刻>

夜霧の家は異質である。

その稼業も。

そして。

その性質も。


夜霧家は代々殺しを生業にしてきた。


夜霧の名は常に歴史の闇で語り継がれてきた。

その名は伝説であり、

伝承であり、

巷説でもあった。

又、お伽噺でもあった。

只、夜霧の家は確実に存在していた。


夜霧の者達は

人里離れた山奥でひっそりと暮らしてきた。

彼らがそうした暮らしをしていることには

一つ大きな理由があった。


『夜霧の者は人にあらず』


夜霧の血は濃い。

彼らにとって一族の血は最も尊いモノだった。

それ故に。

夜霧家には古くから伝わる

決して破られることのない血の掟があった。


「夜霧の血は

 一組の夫婦によって

 次の世代へと受け継がれる」


夜霧家は代々近親婚によって

その血を守ってきた一族だった。

そして。

この掟が意味するところはつまり、

兄妹間での殺し合いである。

生き残った一組の男女だけが

子孫を残すことができる。

この掟の根底にあるのは

「弱肉強食」

の原理。

生物界における真理である。

勝者が生き延び、

夜霧の血はさらに強くなる。

そう信じられてきた。

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