第4話

(夏希……)


「お姉ちゃんを探さなくちゃ!」


「探さなくちゃって、探すなってここに書いてあるだろう!」


「だからって探さず放っておくの?」


「それは……」


「もう!あんたお姉ちゃんの恋人でしょ!」


「っ!?」

「俺はあいつの恋人なんかじゃ……」


「じゃあなんで何年も何年も一緒にいるの?」


(そうか。俺はあいつのことが好きだったのか。だから夏希と一緒にいるときはとても楽しく、笑うことができたのか)


「もういい!勝手に私が1人で探しに行ってくる」


「待て!」


「なによ!今さら」


「俺が……おれが探しにいく…夏希を」



――――――


あれから俺はたくさんの人に聞き込みに行った。


「すみません。この女性を知りませんか?」


「いやー知らないなぁー」


――――――


だんだんと探している範囲を広げ、田舎にも足をのばす。


「すみません。この人知りませんか?」


「いや〜しらねぇべぇなぁ〜」


――――――


どこへ行った夏希


「この女性知ってますか?」


「うん?なんか見たことあんなぁー」


「っ!?本当ですか!」


「あぁ。でも3日前くらいやった気がするで」

「えらい別嬪さんが田舎にきちょるもんでびっくりしたのを覚えちょる」


「どこへ向かったかわかりますか?」


「ええとー多分、店を出て左の道をずっと歩いて行ったんちゃうかなぁ」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


どれくらい歩いたか、わからないくらい歩いた先の八百屋でようやくそれっぽそうな情報を手に入れた。


「左の道ってこっちか」


(夏希……理由は知らんけど待っとけよ)


夏の爽やかな風とともに潮のにおいがする。


(潮のにおいがするっていうことは、こっち方面に海があるということか)


少しづつ町並みが空いてくる。家々の隙間から見える色はコバルトブルー


ついに堤防までたどり着いた


「夏希はこの後どこへ行ったんだろう」


なにかを訴えるようにきらきらと輝く海面。揺れる波と濡れる砂


海を眺めていると、ふと自分を見失いそうになる。

広大な自然は何十年も何百年もかけて形成されるが、人間は数十年で電池がきれる。替えることのできない電気がきれるが、それがまた他人を成長させる。


少し寂れた岩かげに向かった俺。そこには絶景という名に相応しい神秘的な空間が広がっていた。


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