第3話
うっ。頭が痛い。だんだんと先程の記憶がはっきりしてきた
(そうか。俺は寿命宣告された後、また気を失っていたのか)
目の前は真っ白な天井。
(たぶん、さっきと同じ病室に寝かされたな)
腰を上げ、部屋を見渡すと突然風を感じた。窓があり、開いていた
透明な窓の向こうには、夕日に照らされ、長い年月を「雨が降る」という行為を天が繰り返してできた「海」というものが広がっていた。
突如として思い出す昔の「記憶」
――――将来の夢は世界中の景色を見てまわること
懐かしい……
しかしこの夢は諦めなくちゃいけない。病気ではもうどこへも……
俯き始めた
突如部屋に響いた、ガラガラと扉を思いっきりスライドした音
「っ!?」
目の前に突如として知らない女性が現れた。
「ねぇあんた、あと8年で死ぬらしいわね」
急になんだ。人の病室を本人の許可なく勝手に入ってきて
「私が誰だかわかんない?」
わかるわけが……
いやよく思い出してみろ。端正な鼻。キリッとした目。細くしなやかな体。
「そうか!思い出したぞ」
「夏希だ!夏希じゃないか!」
「違うわ」
なんとなく違和感はあるが、似ている故に間違えた。
「え?じゃあ誰ですか?」
「夏希の妹の
「夏希の妹…」
(そうか。1回だけ夏希に聞いたことがあった)
―――なぁ夏希?
―――なぁにー
―――明日から夏休みじゃん
―――うーん、そうだねぇ
―――俺たち2人だけで海に行かないか?
―――良いよー行こう!
―――よし!そうと決まったら明後日から行きますか!
―――ごめん
―――どうした?
―――その日妹のピアノの発表会があって、送り迎えをしないと
―――え!夏希って妹いたんだ!
―――言ってなかったっけ?
―――全然知らなかった……
―――何年私と一緒にいると思ってるの!
―――ほぼ毎日やったな!それでどうする?じゃあ今週の土曜は?
―――それなら行けるはずだから準備しとくー
あの時が遠い昔のように感じる
「そういえば夏希は元気にしてる?」
波が激しく海岸にぶつかった音が遠くで鳴り、窓を通して聞こえる。
「お姉ちゃんは消えた」
「っ!?」
「どういうことだ!」
(たしかに最近いや、2年前のあの日から夏希を見ていない)
「こんな手紙が私の机の上に…」
俺は恐る恐るその手紙を受け取った。
――――――
唯冬と秋へ
この手紙を唯冬の机へ置いておくので、後で秋くんと一緒に読んでください。
たぶんこの手紙を2人が読んでいる頃には私は、旅に出ていると思います。しかしなにもないので探さないでください。
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