エピローグ
満身創痍のリンケージたちは、司令部の指示に従って移動を開始した。
戻ってシャワーを浴びて、それからぐっすり眠ろう。
皆、同じように考え、ゆっくりと機体を歩かせる。
と、ここでレオンが気づいた。
「あれは……」
5階建ての半壊したビル、その2階部分に深々と横向きに突き刺さった異形のハルバードだった。『本体』は灰燼に帰したはずだが、その『付属品』はまだ形を保っている。
レオンは片腕となった〝ロードナイト〟を近づける。特に意味などない。単純に気になったためだ。
もしレオンがこの機体についてもっと知識があったならば、絶対にこんなことはしなかったはずだ。レオンたちはこの〝ノートゥング〟という名前すら知らない。〝ノートゥングZ〟のツヴァイトとは何かを知らない。武装の名前が〝ノートゥング〟であり、機体側の名前が〝ノートゥングZ〟であることも知らないし、だからその意味を考えることすらできないのだ。
だから、敢えて〝ノートゥングエアスト〟とも呼ぶべきものが、今ビルに突き刺さっている異形のハルバードであるなど、夢にも思わない。
『付属品』は消えたが、まだ『本体』が健在であることなど、夢にも思っていない。
〝ロードナイト〟が残る左腕のマニピュレータで〝ノートゥング〟の柄に触れる。
その瞬間、コックピットに
「なんだ、これは――!?」
『レ、レオンさん!?』『何よあれ!?』
異変に気付いたコウイチやマナミが驚愕の声を上げる。
ハルバードから触手のようなものが伸び、〝ロードナイト〟に絡みついていく。装甲には血管のような隆起が走り、機体を黒く染めていく。
コンソール画面には高速で文字列がスクロールし、何かが上書きされていく。
レオンの意識に黒い『何か』が侵入しようとする。
『壊す殺す喰らう啜る崩す喰らう消す呑み込む潰す殺す―――――――――――』
(こ…れは……なん、だ……!?)
破壊衝動が脳に直接刷り込まれていく。
レオンの意識が遠のく。負の念とでも表現すべき何かが意識を覆ってくる。
薄れていく意識の中で、レオンはディスプレイに表示され、点滅する文字列を見た。
『SYSTEM FORMAT COMPLETE.
THE GOD WEAPONS THE 3rd NORTHUNG WAKE UP.
NORTHUNG ZWEIT ACTIVATE. 』
その文字列を見届けると同時、レオンの意識は闇に沈んでいった。
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