第5話 不死の剣《ノートゥング》

「状況を知りたい」

『いきなり新型機の格納庫が襲われた。今乗っているのはその襲撃犯だ』

 レオンからの問いかけに、コウイチが答えた。

『なによ、仲間割れなの?』

『そんなんじゃない』

 マナミは怪訝な表情で訊くが、銀河は厳しい表情で呟いた。

『あれは、あんな残忍な行為がそうであるはずが――』

『まさかこんな形で相対することになるとはね』

 全周波数帯オープンチャンネルで発せられたのは、この基地へ来た自分たちに世話を焼いてくれた女性、ウィストル・ユノーの声に相違なかった。

「あんた…!」

「ウィストルさん!?」

「なんなのこの状況!?わけわからない!」

 銀河は怒りを、コウイチは驚愕を、マナミは困惑を見せた。

 唯一、レオンだけは冷徹にウィストルの声を聞いていた。

『あの時はあなたたちに助けられ、今度は命を奪う側になったわね』

 フフフ、と嗤うウィストルに対し、レオンは一言、

「御託はいい。お前たちは俺たちの敵。その事実に違いはないな?」

『ええ、そういうことになるわ』

「なら、話は簡単だ」

 〝ロードナイト〟は構造相転移ソードを構え直した。

「アンディ、フランク、アブ。やつらを狩る。ついて来い」

『おう』『はいよ』『あぶー』

 傭兵たちに、迷いなどなかった。


「全力で撃つわよぉ!」

 マナミは戦域内の敵機全てを照準した。

〝ムラクモ〟のコンソール画面が展開し、ターゲットが次々とロックされていく。それに合わせて全身のミサイル発射管と大小の砲身が展開・起動した。

「さぁさぁさぁさぁ――!」

 無数の砲撃音が立て続けに轟く。

 まずは大量のミサイルだ。直進するもの、一度上空へホップアップしてから目標に向かうもの。各種ミサイル計16基が発射された。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――――っ!!」

 続いてリニアガンと背部の大口径砲が火を噴く。連射される砲弾と、圧倒的な運動エネルギーを持つ砲弾が、横殴りの破壊の雨となって降り注ぐ。

 まず犠牲になったのが〝スサノオ〟だ。内蔵型のビームガンでの迎撃を諦め、早々にシールド〝ヤタノカガミ〟を構える。しかし、大口径砲弾の直撃に左腕ごと弾き飛ばされ、ミサイルの1発が頭部を吹き飛ばした。トドメにリニアガンの砲弾が胸部装甲に命中し、パイロットごとコックピットを消し去った。

 〝シュトルーフェ〟は複合兵装〝ヘルクレス〟内蔵のチェーンガンでミサイルを迎撃しつつ、格納庫を遮蔽にして難を逃れていた。

「くそっ、なんだあのMLRSと自走砲を足したバケモノはっ」

 パイロットは舌打ちしながらメインセンサーの映像を見た。

 40メートルの巨体から放たれる暴力の塊はまるで全てを破壊する竜巻だ。正面から立ち向かうのではなく、ただ逃げて通り過ぎるのを待つしかない。

 〝カウスメディア〟も〝アルカディア〟も〝ノートゥングZ〟ですら迎撃を途中で放棄している。遮蔽に隠れ、電磁シールドを展開し、光のバリアを展開して防御体勢を敷いている。〝シュトルーフェ〟も〝ヘルクレス〟を楯

(無尽蔵に撃てるわけじゃないはずだ。弾が尽きれば…)

『グラ、プ――1より――ザ、ザザ、ザ――』

 〝アルカディア〟のパイロット――指揮官からの通信が入るが、ノイズが酷く聞き取れない。それどころか、とうとうノイズしか流れなくなってしまった。

電子戦攻撃EA?くそっ」

 気づくと、通信どころか各種センサーにもノイズが走り、戦域情報共有システムによる近接接続すら不可能になっている。友軍の状態は、目視で確認するしかなくなった。

「02より01!02より01!誰でもいい!応答しろ!」

 戦場で孤立したという状況と、あの巨大な人型兵器がハルクキャスターを落としたという事実を思い出し、背筋を寒くした。

「おい!誰か!」

 ノイズしか返ってこない通信機に集中したせいで、

「だれ――ぐぁぁぁっ!!」

 直上から急降下してきた2基のブレードイグニスに気づかなかった。


「AL粒子、戦域への拡散完了」

 銀河はAL粒子を用いた電子欺瞞ジャミングを展開し終えると、前方に飛び出し、砲撃の合間を縫って〝シュトルーフェ〟の隠れる格納庫の陰へ向かった。

「アンナさん…」

 本来ならばアンナ・ヘスが乗っているはずの機体。それが今は誰ともしらないやつが乗っている。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!」

 裂帛と共にイグニスが飛び出し、電子攻撃の混乱から立ち直れていない〝シュトルーフェ〟の両肩に直撃した。直方体の複合兵装ごと両腕部が地面に落ち、

 ザシュン――、と腰部を横薙ぎにされて、機体の上半身も地面へと落ちた。


 〝クロガネ〟は無数のビームを受けながら突進していた。

 〝アルカディア〟に装備された8基の粒子砲から、暗色の巨体を打ち倒そうとビームが放たれるが、闘牛の如き〝クロガネ〟を止めるには至らない。正確にはダメージを与えてはいるものの、異常な耐久力が撃墜という結末を迎えさせていない。

「これだけ撃ち込んでなんで落ちないんだよ!?」

 命中しては粒子が弾ける様が徐々に近づき、パイロットは戦慄する。

「根比べだぁぁぁ!」

 焦っているのはコウイチも同じだった。ダメージは確実に負っている。ビームが装甲を貫くのと接敵のどちらが早いか。その勝負だ。

(150メートル……120メートル……)

 ガトリングキャノンが弾け飛び、機体が右側に傾ぐ。

(90……60……)

 強引に右ブースターの出力を臨界させ、無理に機体を持ち直そうとする。

(30……今!)

 右に傾ぎながらの地面にめり込む様なスライディング。

「ゼロ距離だ!取ったぞ!」

右腕のバンカーを突き出す。下から掬い上げるアッパーの形で突き出された鉄杭は、〝アルカディア〟の腹部――動力源である分子反応炉モレキュールリアクターを打ち抜いた。

バギンガギンとバンカーの炸薬が尽きるまで打ち尽くす。

勢い良く腕を引き抜くと、重厚な10メートルの機体が一瞬浮いた。

「トドメェ!」

 両肩のハッチが開放され、バレットクラスターが展開。散弾のように撃ち出された無数の金属球が〝アルカディア〟の装甲を食い破っていく。

 ガシャン――

 ただの鉄塊と化した最新鋭機はやっと地面に落ちることを許され、そのまま沈黙した。


 〝カウスメディア〟の180ミリ対艦砲が火を噴く度に、舗装が吹き飛び、格納庫が倒壊していく。

 その合間を縫うように、4機のライトニング級が疾走する。

 ビルの壁を進み、格納庫の屋根上を滑走。ワイヤーランチャーで向かいの建造物へ飛び、縦横無尽に駆け抜ける。

 大きなS字を描くように迫る4機に、〝カウスメディア〟のパイロットは舌打ちした。

「ちょこまかと…!」

 フットロックやアンカーを解除し、アルナスル対艦砲を背部に仕舞う。代わりに35ミリサブマシンカノンを取り出し、その速射性をもって小型機の接近を阻もうとする。

 しかし、弾幕を厚くしてもライトニング級の進撃を阻むことができない。

 正面には飛び出した〝ロードナイト〟。そこに照準して35ミリ高速徹甲弾(HVAP)がばら撒かれる。発射と同時に〝ロードナイト〟が傾ぎ、機体の50センチ横を砲弾が通り過ぎた。

 もはや、互いの距離は極至近。

 鬣を靡かせながらの一閃が来る――と思わせ、先頭を奔る〝ロードナイト〟は大きく跳躍。〝カウスメディア〟の頭上を通過する。パイロットは思わずその姿を追って――

 サブマシンカノンを保持していた腕が肘から切断された。レオンの後ろを追随していたアンディの〝ナイト〟によるものだ。

更に、フランク機によって反対の腕が。アブ機によって対艦砲が切断された。

本来ならば〝カウスメディア〟の装甲は戦車砲直撃にも耐えられる強度である。しかし、対象の物性を強制変換する荷電粒子兵器を前にして、重装甲の効果も半減した結果だった。

『くそっ、四対一なんて――』

 外部スピーカー越しに漏れたパイロットの声に、レオンは一言。

「戦場で言い訳か」

 後方からアンカーを射出し、頭部にワイヤーを巻きつけた。

「各個撃破される状況を作ってしまった時点で――」

 ワイヤーを高速で巻き取りながら突進し、相転移ソードを突き出す。

「貴様らの負けだ」

 背部から胸部へと、刃が突き抜けた。


 残るはウィストル・ユノーただひとり。

 先ほどから〝ムラクモ〟の砲撃を受けていたはずだが、佇む姿に損傷は見受けられない。

 ガーディアンはじりじりと近づいていくが、

「お返しが必要ね」

 〝ノートゥングZ〟は左腕を掲げ、魔法陣を展開。光の球を作り出し、そこから太い粒子砲撃が放たれた。

 射線上にいた前衛組は左右に分かれたが、

「きゃっ、あぁぁぁぁぁっ!!」

最後方の〝ムラクモ〟に直撃した。右腕部が根元から弾け飛び、機体が衝撃で真横の格納庫に激突した。

「っ!?」「マナミさん!?」

 その光景に銀河とコウイチは息を呑み、マナミの身を案じる。

だが、レオンだけは振り返らない。〝ロードナイト〟は〝ナイト〟3機を従えて〝ノートゥングZ〟へ肉薄する。

 薄情にも思える行動だが、そこはレオンらしい合理的判断だった。

(コイツでは楯になれない。ならば、敵の注意を引くことが最適解だ)

 〝ノートゥングZ〟がハルバードを横薙ぎに振る。斜め下に向けた、路面の表面を切り裂きながらの一閃だ。

 その一撃を、先頭のレオンは機体をギリギリ地面に倒す形でかわす。肩部装甲の先端が切り落とされた。だが、それだけだ。

 次のワンアクションで、相転移ソードが腹部装甲を裂いた。

それに続き、二振りの剣を構えるミーレス3機は高速ですれ違いざまに斬檄を加える。

脚、腕、胴と切り裂いていくが、装甲を貫くまでには至らない。傷を入れる程度だ。

(あの〝ハイドラ〟とかいう機体とは防御力が桁違いだな)

 速度を活かした攻撃ではさしもの構造相転移ソードでも有効打にはならないようだ。決めるには深く強い踏み込みによる一撃が必要だろう。

 ならば――ターボローラーを唸らせ、急旋回。すぐさまUターンで接近する。

 だが、それは同時に回避に回す意識リソースを攻撃に回すことを意味している。

 ウィストルは読んでいた。

 〝ノートゥングZ〟の背中を狙った相転移ソードの一閃は、分厚い光の壁に阻まれた。バチバチと火花を散らすが、装甲に届く前に防がれている。

 黒い頭部が後ろを向いた。目が合った――そう思い、レオンの背筋が寒くなる。

 遠心力を充分に活かしたハルバードの一撃が、振り向きざまに振るわれた。

「っくぅぅ――!!」

 二振りの剣をクロスさせて防御体勢を取るが、まるで野球のライナーボールのように〝ロードナイト〟が飛ばされた。

 ターボローラーを使って着地に成功し、勢いを逃がす。建物や地面への激突は避けられたが、機体ステータス画面には上半身を中心に黄色い警告色が点滅している。

 そこへ、〝ノートゥングZ〟は手を翳して追撃の魔法を放とうとするが、アンディたちが牽制することで注意を逸らし、その隙にレオンは体勢を立て直す。

 そのとき、その場の全員が戦慄した。

 傷だらけの〝ノートゥングZ〟、その装甲に走る無数の傷が、じわじわと塞がっていったのだ。

「なんだよ、あれは…」

「再生能力…」

「長引けばこちらが不利、ということか」

 銀河とコウイチ、レオンが改めて戦慄する。

「それが何よ」

 だが、ひとりだけは違っていた。

「要は、再生する前に撃ち込めばいいだけの話じゃない」

 マナミは半壊の機体の中で笑っていた。

「アタシが目一杯の砲撃を撃ち込む。その隙にみんなで一斉に切り込めばいい話でしょ」

「簡単に言うなよ、あいつは――」

「いちいち言い訳するな、ボクちゃん」

 反論した銀河に、マナミは言い放つ。

「二倍硬い敵には二倍撃ち込めばいい。三倍硬いなら三倍ね。できない理由を考えるより、できる方法を探すのに頭使いなさい」

 〝ムラクモ〟が生きている砲門を全て展開。全力での砲撃が再開された。

 ミサイルと砲弾の雨の中、各ガーディアンはマナミの意思に基づいて〝ノートゥングZ〟へと向かう。各ガーディアンにはマナミから送られた砲撃軌道データが送られており、を通過して〝ノートゥングZ〟に迫ることができた。

 〝ノートゥングZ〟は砲撃と接近するガーディアンを迎撃するために砲撃魔法を展開するが、ミサイルの迎撃に手一杯で、既に先頭の〝ロードナイト〟の接近を許していた。

「吹き飛べ!」

 ウィストルが〝ロードナイト〟を照準した瞬間、急旋回によりターゲットをロストした。

 代わりに先頭に立ったのは〝クロガネ〟だ。砲撃魔法の照準が猛進する〝クロガネ〟へと変更され、発射された。

 命中し、爆炎が上がる。

「まだまだぁぁぁ――――――――――――!!」

 爆炎の中から〝クロガネ〟が飛び出す。機体ステータスはイエローとレッドで埋め尽くされている。いつ機体が動かなくなってもおかしくない状態であるものの、メインスラスターはまだ死んでいない。

 バンカーを打ち込もうと、右腕を突き出す。

 だが、それはひらりとかわされた。

「銀河!」

 それも折り込み済みだ。

 〝クロスエンド〟はCALブレードを振り下ろしていた。〝クロガネ〟の真後ろに隠れながらの突撃。味方を楯にしながらの攻撃が、〝ノートゥングZ〟に襲い掛かる。

「でぇぇぇぇぇぇぇぇいっっっ!!」

 CALブレードが機体を二分する。

 そう確信させた軌道だったが、〝ノートゥングZ〟のハルバードがそれをどうにか阻止していた。火花を散らしながら、CALブレードとハルバードの直刀が交錯する。

 倍以上の体格差がある両機であったが、出力は〝ノートゥングZ〟の方が上だった。CALブレードが徐々に押し返されていく。

 その〝ノートゥングZ〟の後方から、疾風のごとく〝ロードナイト〟が跳んで来た。

 構造相転移ソードを前に突き出す形で突進する姿は、まさに閃光ライトニングと言えるだろう。〝ノートゥングZ〟の背中から、深々と剣が刺さり、反対側の腹側へと突き抜けた。

 〝クロスエンド〟と〝ロードナイト〟が跳び去る。それとタイミングを合わせるように、大口径砲弾が飛来し、〝ノートゥングZ〟の頭部に命中し、首から上を吹き飛ばした。

 黒のハルクキャスターが、膝を突く。

 そのコックピットでは、いくつもの警告画面が表示され、出力表示がどんどん下がっていくのがわかった。

「嘘だ…、こんな…」

 ウィストルは愕然としていた。即席の連携攻撃を受けた。ただそれだけのことで、動力源である魔力発電機マジックジェネレータを破壊され、センサー類が集まる頭部を消し飛ばされた。話を聞く限り、彼らは元々チームであったわけでもない。出自も立場も違う、ただ人型機のパイロットであるだけが共通点のはずの、ただの運命共同体としか言えない寄せ集めのはずの彼ら《リンケージ》。

「八天神具、第三位である、このノートゥングが……」

 一騎当千のはずの機体が、たかが7機によって、沈もうとしている。

「わたしが……負ける……死ぬ……?」

 そう思ったとき、脳裏には故郷の両親と妹の姿が浮かんだ。

 貧しい極寒地帯で肩を寄せ合って暮らしていた。その日食べるものにも苦労し、兵役か売春でしか生きていけない、そんな日常。それを変えた、自分の才能と運気により、家族は今首都で暖かい食事と家を与えられ、暮らしている。それも全て、自分の立場があってこそだ。もしここで自分が死ねば、家族が首都で暮らし続けることは適わない。

「ふざけるな……、そんな…こと……認められるか……」

 自分ひとりの問題ではない。死ねば悲しむとか、そういう気持ちの問題ではない。自分の死は、家族の生死に直結する。そんな状態で、

(こんなで……)

 ウィストルは奥歯を強く噛み締めた。

「死ねるかぁぁぁぁぁ―――――――――――っ!!」

 そのとき、〝ノートゥングZ〟がした。

 ディスプレイには『Sublimation』の文字が浮かび、照明が赤く明滅する。

 どろりとした気味の悪い物質が異形のハルバード〝ノートゥング〟から湧き出て、欠損した部分を補っていく。腹部と頭部は大まかな輪郭を蘇らせ、やがて機体の全身がぐにゃりと歪んだ。

 機体が一回り膨れ上がる。全高10.5メートルのハルクキャスターが、12メートルほどに巨大化していく。

 〝ノートゥング〟の柄に血管のような筋が浮かび、刀身にも広がる。斧部分の中心に一筋の切れ目が奔り、充血した眼がゆっくりと広がり、やがて開眼した。

 機体の破損箇所は完全に修復され、柄と同じように血管のような筋がいくつも浮かび上がっている。

 首から頭部には双眼のようなセンサーが紅く光る。そこからジグザグに紅いスリットが伸びていて、まるで血涙を流しているかのようだった。

「いいぞ…、さすがはウルズの八天神具だ」

 ウィストルはディスプレイに映る『昇華Sublimation』の文字を見て、表情を喜色に歪めた。

 ステータスは正常に戻っている。戻っているどころか、魔力発電機(マジックジェネレータ)の出力が上がっている。

「3800…4000…4200……出力だけじゃない。変換効率まで上がって――ごぶっ――」

 盛大な吐血だった。

 口に当てた手を放すと、赤一色になっていた。やや粘度のある血液が、掌から滴る。

 体が熱い。焼けるような暑さが胸の底から広がっていき、体の熱はやがて精神を蝕む。

『殺せ殺殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ―――』

 何かがウィストルに囁く。

『壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ―――』

 何かが耳元で囁く。

『奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え―――』

 何かが入り込んでくる。

『欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい―――』

 何かが心を蝕み始める。

『食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい―――』

 そして、何かと目が合った。

『お前も、いただきま~す』

「―――――――っ!?」

ウィストルの意識は黒く塗りつぶされた。




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