第20話 ケイと佐田さん
「数千年ぶりに来たし、ブラブラしとったらの、すごいものに出会ったのだ」
「いや、どうやって入ったんです?」
「これだ。器にな、汁が満たされておってな!」
「佐田さん、聞いてます?」
「聞いておるわ。でな、汁の中にこのように麺がつかっておってな」
「どうやって入ったんですか?」
「上の具もな、店によっていろいろとあるんだ。うまいんだ! 人間はだいたいが愚かだが、このような奇跡をたまにおこすから侮れん。
「佐田さん……だからどうやって入ったのか教えてください」
「飯と一緒に食うともう地獄のような美味さだ!」
話が通じん!
てか、佐田さん、人気ラーメン一〇〇選二十三区版という雑誌をペラペラとめくっては楽しそうだ。
「どうやって入ったんです? ここに何をしに来たんです?」
「お? さっきからお前はごちゃごちゃと……何をそんなに気にしている?」
ようやく……ようやく本題に入ることができる。
ケイが、俺の後ろに隠れて、ビクビクと佐田さんを見ている……虐待されていたのか!?
だとしたら、説教してやろう!
「俺ん
「さすがに一ヶ月も外をうろうろしたら疲れた」
「……どうやって入ったんです?」
「どうやって? 玄関からちゃんと入ったわ。我とてこの世界の常識は存じておるぞ」
「鍵! 鍵はどうやって開けたんですか?」
「お前らの鍵など、我にとっては鍵ではないのだ」
……ピッキングの達人なのか?
そうか!
ケイを
しかし、大泥棒だったのか……。
となると、やはり危ない人なんだろう……。
出ていってほしい。
「佐田さん、ホテルを使ってください。ここは俺ん
「この世界でお前だけが我の下僕だ。部屋を使わせろ」
「な! いつ俺が下僕になったんですか!?」
「いいではないか、いちいちうるさい人間だ」
「山田です」
「いちいちうるさいヤマダだ。番犬を譲ってやった見返りに泊まらせろ」
「……」
あの時、よいよい! とか言ってたくせに!
理不尽だよぉ……
うなだれてガックリした俺……。
ここでケイが、いきなり俺の前に出て佐田さんを睨んだ!?
「ガルゥウウウウゥ」
唸った!?
「ケイちゃん?」
「番犬……いい度胸だな」
「キュン……」
ケイ、しっぽをまるめて俺の後ろにとって返した……。
よわいぬぅ! だけど、かわいぬぅ!
いいよ! ケイ、勝てなくていいよ! だっておかしいもの! 争っては駄目な匂いがするもの!
こうして、リビングのソファで寝始めた佐田さんに怯えて、俺とケイはベッドで抱き合って震えながら寝たのである……。
ポカポカ……ケイのぬくもり最高。
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