第19話 ケイと残業とこわい人

 忙しい。


 忙しい忙しい忙しい忙しいいそがしいいそがしいいいいいいいいいいい!


 ケイちゃんと遊べないじゃないかぁあああああ!


 引っ越し多すぎ!


 管理のお仕事も多すぎぃ!


 さらに……織羽部長から、デューデリまで指示されて……ワンルームマンション投資で失敗したって人が部長を頼ってきて、売り逃げしたいから査定してくれって……なんでそんな儲かるわけがないものを買っておいて、忙しいこの時期に泣きついてくるんだよぉおおおお!


 毎日、残業……救いなのは、ケイちゃんが隣で見守ってくれ……あ……ケイちゃんのお手てが、キーボードの上にバンって……


「キューン」


 遊んでほしいの?


 でもね、エクセルが固まっちゃったよ……バックアップのところから再開……よかった。被害は最小だ。


「ケイちゃん、もう少し待ってね。20時には帰ろうね」

「キュン」

「おい、山田」


 織羽ぇ……お前のせいで俺は残業を……


「なんでしょう?」

「この土地と建物の査定も頼むわ」

「……」


 地方のマンション……出張……。


 仕事を放り投げて、ケイと帰る。


「ケイちゃん、お散歩して帰ろうね」

「わん!」


 ニコニコだよぉ。


 ケイがいてくれるから、忙しくてもストレスが緩和される。


 この子のおかげで、俺はとっても助かっている!


 ん?


 俺ん家が明るい?


 電気を消し忘れてたかな?


 ……


 鍵、開いて? ……?


「おお、おかえり」

「……佐田さん?」


 どうして、佐田さんがいる?


 鍵は!?


 家の鍵は!?


 どうやって入ったの!?


 ああ! ケイが怯えて俺の後ろに隠れた……。


 うん、俺もこの人、なんか怖い。


 こわいぬぅうううう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る