第6章

第41話 友人の近況報告

「え! ほんとー?」

「まじよ」

 美緒から突然電話がかかってきたので何事かと思ったら、子供ができたそうだ。

 ベッドで寝ながら話していたのにあまりに驚いて飛び起きてしまった。

「おめでとー」

 テレビ前の座椅子に座る。昨年の六月に結婚式を挙げて、十二月には新婚旅行に行って、そして三月にはおめでただとは。

「トントン拍子じゃん」

「へへっー。まあね」

「予定はいつなの?」

「んー。九月ごろかなー」

「すぐじゃん! 仕事はどうするの?」

「もう少ししたらしばらく休む予定」

「大変になるもんね」

「そーなの。家も買うことにしたんだ」

「え、なにどういうこと?」

 今住んでいる家では何かと子育てするには不便らしく、なら一層、家を買ってしまおうという話になったらしい。

「かー。人生設計しっかりしてるねー」

 美緒は昔から自由な印象があったので、家庭を持ち将来の計画を立てているのが新鮮だった。

「うちよりも旦那がそういうとこ細かいからね」

「でた! 惚気だよー」

 ふふふん、と美緒は笑う。

「しずくこそ田鎖さんといい感じなんでしょ? 何度かご飯行ってるんでしょ?」

「まあ、それは仕事関係の話で……」

「いやいやいやー。仕事関係でわざわざ休日に二人でご飯行かないでしょ!」

 実は年が明けてから月一回程度ふたりで食事に行っている。仕事の話が多いけれど、お互いプライベートの話もするようになってきた。この前は趣味のバイクの話をしてくれた。

 大型のバイクに乗っているらしく、休みの日には隣県までバイクを走らせ景色を楽しむのだそうだ。

 私は車を持っているにも関わらず、家と職場の往復に使うか、久慈にある母の家行くのに使うか、もしくは盛岡市内に買い物に行くのに使うぐらいだった。話を聞いて今度、仙台辺りまで買い物に行ってみようかな、と思っている。

 私は私で、昨年末に母からもらったお気に入りのキーケースと大好きな卵サンドの話をした。

 そうやって職場ではあまりしない話をするのも聞くのも、お互い今まで知らなかった部分を共有することができて、とても楽しい。

「しずく、それ、惚気話だよ」

 美緒はクツクツと笑う。

「え、そんなことないよ」

「そんなことあるって。そのうち告白されるんじゃないの?」



 雪が降りそうな灰色の雲が空を覆っていた。せっかくの卒業式なのに残念な天気だ。

 それでも生徒たちはいつもと違ってどこか晴れやかだった。

 朝早い時間に佐々木くんが私のところにやってきた。

「先生、今日の卒業式が終わったらちょっとお時間もらえませんか?」

「今でも大丈夫だけど?」

「いえ、卒業式の後にします」

 それだけ言って佐々木くんは去って行った。

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