第30話 星への祈りは神への祈り
母さん、と僕は舞いながら心の中で呟いた。
ここでその連鎖に区切りをつけないといけない。
もう、いいんだよ。
星だってこんなにも果てしない迷宮の空から一抹の光を発見した。
少女はその色を抱き、最後には小さく微笑んだ。
僕は最後まで名前も知らない父と闘った。
消せない過去とこれからの歳月に星を降らせて。
さらに己を奮い立たせながら後ろから四方へと各二回転をした。
それも小刀で怪我をしないように。
どよめきにも近い歓声が大きく外神屋(そとこうや)に響き渡った。
終盤になると疾走した息遣いを落ち着かせるように星を抱く天の下、篠笛の激しい旋律がやむまで舞い続けた。
それを見た。
それを見るしかなかった。
篠笛の音色が緩やかになると僕は跳ね上がり、闇を切り裂いた。
観衆の声が鼓膜の奥に木霊する。
背骨の奥まで汗が染みついているなんてまるで気にも留めなかった。
伯父さんたちからねぎらいをもらい、そこで初めて自分が成功したと思えた。
星はいつもにも増して水晶の屑のように散らばっていた。
もう、世界には夜しか存在しなくなったかのように星は僕らを抱いている。
僕は途中で夜食を取り、裏方に精を出しながらその合間に星を見入った。
星に祈りを捧げる神楽は今年も新たな歴史を刻んだ。
その礎になれて本望だとさえ思う。
束の間の休憩を終えた僕は人込みをかきわけた。
周りを隈なく探しても闇に紛れて人の顔さえもおぼつかない。
神楽は次から次へと終えていく。
まさに夢へと集う神への宴、星々のための宴だった。
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