第26話 星神楽、北辰信仰
神楽伝承館がある、出店が多く並んだ丘の上では無数の注連縄と菊の紋章、銀鏡神社の文字をあしらった幟旗が道沿いに飾られていた。
神への舞を捧げられる外神屋では藁茣蓙(わらござ)が引かれ、銀鏡川のある南に向かって森羅万象を表した天には四方に向かって大小の赤、黄、白、黒の五色幣を垂らした衣笠’(きぬがさ)、左側の先地と右側の後地と舞う場所を定められた外神屋(そとこうや)の準備が着々と進められている。
𨕫(しめ)には通称、御煮と呼ばれる十頭の猪の頭が山の恵みに感謝するべく捧げられ、二体の龍が阿吽の呼吸に合わせ、鎮座している。
その御煮も血気盛んな生き得しものだった山の神の化身がこちらに睨みを利かしているかのようだった。
紅白の鳥居を象った𨕫の中央部には天照大神、と刻印されている。
夕闇迫る村々では法螺貝の、鹿の鳴き声のような甲高く響く音ともにいよいよ神楽への切符が切られた。
式一番星神楽が始まり、夜の八時半からその後式二番清山の(きよやま)、式三番の花の舞、式四番の地割(じわり)……と続き、銀鏡神楽で最も重要な舞である、式八番の西宮大明神が舞われる深夜になると神楽は活気を迎えた。
計三十三番の式目が舞われ、神送りまで徹夜続きで行われる。
西宮大明神は銀鏡神社の歴代の宮司によって舞われる。
室町時代から伝わる秘伝の赤褐色の鬼神の能面に、大ぶりの金色の冠をかぶると金糸が施された深紅の狩衣に大きな扇を持ち、大地を轟かす神楽鈴を振り、その鈴の音は永久の闇の彼方へと響かせるのだ。
いつか舞える日が来るかもしれない。
いつか銀鏡の地で終生を過ごすまで神楽へ生涯を捧げ、悔いなく終える日が来るかもしれない。
まだまだ未熟者の僕が偉そうに言うのはご法度かもしれない。
それでも、君のために舞いたいんだ、と思う。
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