第11話 彼女の骸
彼女の骸は村人たちの手によって墓所に葬られた。
肢体は死の誘惑に負ける。
身体の奥から水になる。
底の奥まで沈みきる。
石長比売もこうやって最期を迎えたんだろうか。
いっそ、消えてしまえばいいのか、否か。
淵の底まで潜ってしまうと息が我慢できなくて地上へと舞い戻った。
ひりひりと咽喉の痛みが鳴っている。無理しすぎたんだよ、と誰もいない水面に触れながら言い切った。
なぜ、急に服のまま水の中にでも入ろうとしたんだろう。
水を浴びたところで清らかになれると思えない。
もう、いいんだ。川岸から上がると家へ帰ってすぐさまばれないように濡れた服を洗濯し、着替えた後にやり残した数学と英語の課題を終わらせた。
砂時計の砂が落ちるようにあっという間に宵闇は訪れる。
蜩が鳴き、徐々に風が吹き出すと川の音は勢いを増して流れ込んでくる。
山々の色は混じりけのない闇へと支配された。
アスファルトの熱気を帯びた小夜風を浴びながら自転車を漕ぐ音が一際大きく響いている。
車は一台も通らない。
アンニュイなんて荒らされた古代遺跡のようなものだ。
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