配信者と第1号のリスナーさんがばったり会うお話

神田藍月

第1話


『……わっ!!!!』

──とても聞きなれた声だった。


正しく言えば、パソコンやスマホを通して聞きなれた声だった。


「めーくんさん……?」

「おっ、せいかーい!」


その声を聞いた瞬間、わたしは座り込んだ。

「……ドウシテ?ナンデナンデ?……えっ?」

と、限界オタクのわたしをにこやかに座り、目の前に居るめーくん。


「……ちなみに声をかけた理由はね、面白そうだから!

しかも、それ。その缶バッチが古参の子しか持ってないやつだから、嬉しくなっちゃって」

私の鞄にある缶バッジを指さしてそう言った。


めーくん。

私が中学1年生の時から活動していて、その時から応援している配信者であり、活動してもう10年近くになる人だ。

最近では、同時視聴者数が4000人になり、フォロワーも15万人とやっと世間が追いついたように思う。


そして、私の鞄にある缶バッジは2周年記念のグッズであった。

「いや〜、まさか古参の方に会っちゃうなんてねぇ〜。今日はいい一日になりそうだな〜 」

さらに蹲りながら、限界化したオタク。

「コチラコソウレシイデス。カミサマアリガトウ……モウワタシシンジャウ、ノカ……ナ?」

「へへっ、めちゃくちゃツイてる〜……ってしんじゃわないよ!!

はい!!深呼吸して!!」


言われた通りに一旦深呼吸する。

「……はい、すいません。落ち着きました。

……めーくんさんですよね?」

「うん、そうだよ。めーくんだよ!!落ち着いたなら良かったよ。……じゃあ、これもいい機会だしサイン書くよ。

……何かしらペンとかないかな?」

「えっ?いいんですか!?

って言いたいところなんですけど、ペンがないです……。即買ってきます。

……あそこのカフェで待ってて貰えないですか?」

近くを見渡し、はっと雰囲気の良さそうなカフェを指差し、待って貰えるように頼む。


「おっけー、待つよ」

「ありがとうございます……!!5分で帰ってきますね」

と言い残し、走って近くの文房具屋さんに寄り、細いペンを買う。店員さんの『ありがとうございました〜』という声を聴きながらドアを出る。


運動はあまりしてないからか、息切れしながらカフェのドアを開ける。

「おまたせしました……」

「おかえり〜。疲れているね」

苦笑いしながら、わたしを見るめーくん。

「えへへ、体力がないものでして……」

「そっか、体力ないときついもんね。……じゃあ、ペンと缶バッジ貸して〜」

鞄から缶バッジを外し、ペンと共に渡す。

「えっと、名前は?」

話題を変えるように、めーくんがわたしの名前を聞いてくる。

「かなでです」

「君がかなでちゃんか……!!ぼくの第1号のリスナーさんがずっと見てくれてるのめちゃくちゃ嬉しいよ!」

「……!!覚えてくれてるんですか……!?」

認知されているなんて……と感動していた。

めーくんは『えへへ〜、記憶力はいいものでして』と、ドヤ顔をしていた。

「はい!かなでちゃん、書いたよ!」

と、ペンのフタをしめて、ペンとサイン書いた缶バッジを私に渡した。

「ありがとうございます!!」


会計を済ましてから、一言感謝の言葉を述べて立ち去った。






───その日のめーくんの配信で。

『あ、そうだ!!聞いて!!聞いて!!』


<コメント>

・どうしたの?

・どうしたん?

・めーくん、ご機嫌だね。

・めちゃくちゃ嬉しそう


『今日ね〜、リスナーさんとばったり会っちゃった』


<コメント>

・え?

・いいなぁ

・めーくんのリスナーだから、限界オタクになってそうw

・うんうん


『限界オタク……なっちゃってたね。

でもね、そのリスナーさんがぼくの2周年記念の缶バッジ持ってたの!!』


<コメント>

・古参の方だった!!

・古参じゃん!!

・えぐいって!?

・8年前か……知らんなぁ……

・もうそれぐらい経つのか……。


『ちなみに、会ったリスナーさんね、ぼくのリスナーさん第1号だよ?』


<コメント>

・めーくんの最古参だったの!?えぐっ

・やばっ!?

・リスナー第1号になりたかった人生だった

・運命の出会い

・あれ?めーくんって活動歴どれぐらいだっけ?


『……活動歴?今年の10月ぐらいに10年だよ?』


<コメント>

・ながっw!!

・めーくんもそのリスナーさんも凄いね

・かなで。¥50,000︎

 古参で、リスナー第1号の人です。今日はありがとうございました!!



『あっ!!こちらこそいい機会になったよ!スパチャもありがとう〜!』


<コメント>

・赤スパ!?

・満額スパチャは草ww

・もう知らない……

・リスナーさんもえぐいって……

・kanade¥50,000


『無言満額スパチャ!?……しかもサブ垢!?』


<コメント>

・やりすぎww

・え…?

・めーくんも驚いてるってwww

・……石油王!?

・上限越したからサブ垢で来たってことは……

・今日はそのリスナーさんにとって凄い日だったんだろうね。


─本当に今日は嬉しい日となった事は確かだ。


『……石油王!?お金持ちだよね。

でも普通に、ぼくより5歳若いように見えたから、出世してるんだろうね。


──さて、雑談終わったことだし、一昨日のゲームの続きといきましょうか!!』

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配信者と第1号のリスナーさんがばったり会うお話 神田藍月 @aiduki

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