第3話 お勉強と野球との出会い
朝ごはんを終えて、ミーネと一緒に私室に戻ってきた。
「それでは、今日のお勉強を始めましょう。」
ミーネは教え方が上手だった。僕がわからない言葉は簡単な言葉に言い換えたり、細かいところの質問にも嫌な顔ひとつせず答えてくれた。
「なるほど。大体わかったよ。」
僕らの住むこの国は、ジャポネ皇国。天皇陛下のもと、各貴族が領地を治める封建制の国らしい。我が家もその貴族のひとつで、イスノ家といい伯爵位を賜っているそうだ。領地はフクヲカ、ヤメ茶は美味しい。
「坊ちゃま?どうなさったのですか?こんなに意欲的にお勉強なさるなんて…。昨日までは、『勉強なんてヤダ。野球がやりたい!』ってダダをこねてばっかりでしたのに…。」
あ、僕、いま3歳児だった。中身は小学5年生(60回繰り返し済)だけど。『身体は子供、頭脳も子供(?)』って、タダの子供やんけ。
「いやぁ、ね。僕もイスノ伯爵家の跡継ぎとしての自覚が芽生えたというか…。ん?野球?」
「はい。今日の予定していたお勉強は終わりましたので、ご褒美として坊ちゃまが大好きなフクヲカホウクスの動画を観ましょう。」
ミーネは50センチくらいの水晶玉を持ってきて部屋の灯りを消し、 「ホログラム」と唱えた。すると、立体的なホログラム映像?が視えるではないか。
「はえーーーっ。すっごいね!」
「?いつも観てらっしゃるのに。ほら、坊ちゃまの推しのギーラ選手ですよ。」
ホログラム映像内の試合は、9回裏、同点、ホウクスの攻撃、2アウトながら満塁である。相手のチヴァマリインズもクローザーではないものの、勝ちパターンのピッチャーを使って、この試合を取りに来ているようだ。
「『さぁ、ピッチャー、第1球を、投げました!外角高め、ストライク!』」
「えっっっ…。球が浮いた??」
「ライジングストレートですね。ボールに『軽量化』、『浮力』、『重力反転』などの魔法をかけているのでしょう。」
「なんでもアリじゃん…。」
「それが野球、マジックベースボールですからね。あ、続きを観ましょう。」
「『第2球、投げた!消えた!ボールが視えない!内角低め、ストライク!2球で追い込みました。』」
「これ無理ゲーじゃん!」
「今のは『ミラージュ』でしょうか。坊ちゃま、この世に不可能というモノは魔法が発見された300年前になくなったのです。ギーラ選手をよく観ておきましょう。」
「『ピッチャー、第3球を、投げた!消えた!のは一瞬、スローボールが外角低めに!ギーラ、溜めに溜めて、打った!!打球は左中間方向、伸びる!伸びる!入った!!!逆転満塁サヨナラホームラン!!』」
「えっっ、なんで?なにがどうなってるの?」
「ピッチャーは安易に3球で決めにいってしまいましたね。ギーラ選手は『アンチミラージュ』を準備した上で『スロウ』をかけたボールを打ち、『バースト』で飛距離を伸ばしたようですね。3つもの魔法を同時に扱うのは、非常に高度なモノです。あ、ギーラ選手のヒーローインタビューですよ。」
「『放送席、放送席。本日のヒーローは、劇的なサヨナラホームランを打ったギーラ選手です!『アンチミラージュ』、『スロウ』、『バースト』の3重詠唱、お見事でした!』」
「『『バースト』はかけてないっす。』」
「『はい?』」
「『飛距離は単純にパワーで持ってきました。パワーは正義っす。』」
ミーネが映像を観ながらポカーンとしている中、僕も野球がやりたい、ギーラ選手のようになりたいと思った。
「3番、ピッチャー、イスノくん」 まっく・えむ @makmuta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「3番、ピッチャー、イスノくん」の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます