第2話 朝ごはん
逃げるように入ったトイレで、サイズダウンしたマイサンにショックを受けながらスッキリして私室に戻ると、ミーネが待っていた。
「カッツォ坊ちゃま、朝ごはんに参りましょう。」
「うん、お腹空いちゃった!行こう!」
ミーネの先導について食堂に向うのだが、この家、やたらとデカい。前世?の家も平屋で大きめだったけど、比じゃないくらいにデカい。ひとフロアにざっと20部屋くらいあるし、3階建てだし。『はぁぁぁ、すげえなぁ』なんて他人事のように考えていた僕に、ひとつの不安が湧き上がる。
『このお家ならご飯も洋食なんじゃね?え?テーブルマナーなんて知らないよ、僕!』
ヤバいヤバいと内心あたふたしているうちに、1階の食堂にたどり着いた。そこにはいつも(前世)のちゃぶ台ではなく、20メートルくらいありそうな真っ白なクロスのかかった長テーブルがあった。
「遅いわよ、カッツォ。このサズエ姉様を待たせるなんて、いい度胸してるわね。」
テーブルの向こうに既に座っていた高校生くらいの美人女性にいきなり恫喝された。
「ごめんよ、姉さん。」
ミーネが引いてくれたイスに座りながら女性に謝罪する。恫喝内容を鵜呑みにすれば、この特徴的な髪型の女性は僕の姉らしい。前世で実写化する際に困難を極めた髪型も、金髪巻き髪ロールだとゴージャスな感じでまとまっている。前世の姉さんと同様の性格だと仮定すれば、この人には逆らわないほうがいい。スレンダー体型だけど、中身はゴリラだし。
「あら、ずいぶん聞き分けがいいわね。姉さんが抱っこしてあげましょうか?」
「いや、いいよ。固そうだし。」
「おぅ、カッツォ。てめぇ、なんつった?」
ガルガルした姉さんがテーブルをひとっ飛びに飛び越えようとしたところで白髭の執事っぽい人が言った。
「旦那様が入られます。」
「サズエ、カッツォ、おはよう。今日も仲良さそうでなによりだ。」
僕は驚愕した。父さんの頭頂部に髪が豊富にあることに。フッサフサである。前世でただ1本生き残っていた髪の位置にアホ毛がある。金髪であることなど些細なことで、1が100になる衝撃を受けた。続いて顔の作りは前世と同じだけど、若干若返っている。
「お父さん、そこは叱っていただかないと…」
ギリギリ赤ちゃんといえそうな幼児を抱っこしてきた美人さんが言う。
「フーネ、そうはいっても家族仲が良いにこしたことはないぞ。」
「あいっ!」
「ほら、ワーメもそう言っとる。」
「まったく、もう。」
「さぁ、メシにしよう。爺や、頼む。」
「かしこまりました。」
お誕生日席に父さん、僕の隣に母さん、僕と母さんの間にワーメが座り、ワーメの可愛さに目を奪われていると配膳が終わっていた。
「本日の朝餉は、ジャポネ食です。白飯、鮭の塩焼き、卵焼き、漬物、味噌汁となっております。フクオカのヤメ茶が手に入りましたので、食後にどうぞ。」
あ、和食だ!助かった。テーブルマナーは要らないや(ホッ)。
「では、いただきます!」
「「「いただきます!」」」
父さんの号令で食べ始める。このあたりも前世と変わらんな。あ、この鮭の塩焼き、塩加減といい、焼き加減といい絶妙。まいうー。前世で姉さんが嫁入り前に練習した塩焼きは、ほぼ炭だったからね。
「カッツォ、あんたなんか失礼なこと考えたでしょ?」
「いいえ、別に?(冷や汗)」
「なぁんか違和感あるのよねぇ。」
姉さんに疑われながらも美味しい朝ごはんをいただいたのだった。ヤメ茶も甘くて美味しかったです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます