第148話 今後
「っ!!」
ギュッと目を瞑る――が、いつまでも弾は当たらない。
「――?」
不思議に思って顔を上げると、銃口が震えていた。銃がフォーマルハウトの手から滑り落ちる。
「……っつぅ……」
「……そこを動くな」
声のした方を振り返ると――ベクルックスが煙の立つ拳銃を握っていた。
「大田君……」
「このガキ……!」
撃ち抜かれた右腕を押さえたフォーマルハウトがベクルックスを睨みつける。
「お姉ちゃん!!」
「実鈴!! 返事しろっ!!」
「佐東君! 大丈夫か!?」
銃声を聞きつけた三人の声が大きくなる。
「私は大丈夫だから!」
叫び返した実鈴はベクルックスを見据えた。
「……どういうつもり?」
「貴様をここで殺す気はない。それだけの話だ」
「ふざけるなよベクルックス!!」
フォーマルハウトが怒鳴った。
「それは貴様の方だろう。X以外には手を出すなとあれだけ言ってあるのに」
拳銃をおろしたベクルックスが冷たく言った。
「よく覚えておけ。貴様の今後を決めるのはオレじゃない。ボスだ。一週間後に貴様が生きているかどうか、楽しみだな」
「チッ……」
舌打ちしたフォーマルハウトは床に落ちた拳銃を拾い、撃ち抜かれた右腕を押さえながら去っていった。
ベクルックスは即座にジャケットの内ポケットからスマホを取り出し、耳に当てた。
「はあっ!」
シリウスはRの蹴りを避け、さらに背後から来たTの拳をいなした。そしてTの横をすり抜け、蹴りを食らわせる。
「くっ!」
バランスを崩したTが倒れ込んだその時、シリウスが耳につけていた通信機から着信音がした。
「なんですか?」
通信機のボタンを押したシリウスは応答しながらTの飛び蹴りを避けた。
『撤退する。すぐにビルから出ろ』
「え!? し、しかし……」
驚いたシリウスの動きが一瞬止まる。Rはそれを見逃さなかった。
「はっ!」
「っ……!」
腹に拳を打ち込まれ、ふらついたシリウスは咳き込んだ。
「……わかりました」
息をついたシリウスはポケットから何かを取り出し、投げた。
「――! R避けろ!」
「っ!」
Rが飛び退った瞬間――物体が爆発した。
「きゃっ!」
「詩!」
床を転がったRがすぐに顔を上げるが――シリウスは消えていた。
「大丈夫!?」
Rが振り返ると、TはUを抱えて倒れていた。
「いたた……」
Tが頭を押さえながら体を起こす。
「はぁ……またあの手口か……」
爆弾で視界を遮る。自分達の閃光弾より効果がある。
「皆、大丈夫かな……」
Rはぼそっと呟いた。
「何……やってるんだよ……」
パソコンを見ていたデネブは呆然と呟いた。その側にはベガもいる。
「ベクルックス、もう現場には出さないほうがいいわね。支障が出る」
ベガが冷たく言った。
「行くわよ。これ以上はごめんだわ」
デスクに置いていたライフルバッグを担いだベガはさっさと部屋を出ていった。
画面を見つめていたデネブも、やがて機材をまとめ始めた。
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