第136話 八方塞がり

「電波妨害されてる!」


「え!?」


 Kは猛然とキーボードを叩き始めた。


「罠だったんだ!」


 Kの頬に一筋の汗が流れる。


「もっと早く気づいていれば……防犯カメラも全部切られてる。デネブの仕業だ……」


「……とすると、もしかして死角になっていた場所にもカメラはあるんじゃない?」


「え?」


 Kが素っ頓狂な声を上げてYを見る。


「これが罠ならデネブは様子を見ておく必要があるから、デネブだけが見られるカメラがあるんじゃない?」


「……確かに」


 腑に落ちたKはYを見た。


「その調査、頼める?」


「うん。やってみる」


 頷いたYはパソコンに向き直った。画面の薄明かりに照らされた横顔がいつになく頼もしく見えて、Kはそっと頬を染めた。



「気づかれた」


 一人でパソコンに向かっていたデネブはボソリと呟いた。


「けど、問題ない」


 通信を復活させなければいいだけだから。


 デネブはすごい勢いでキーボードを叩き始めた。



「……っ、ハァ、ハァ、ハァ……」


 数歩下がって壁にぶつかったXは肩を上下させた。左肩を押さえ、眼の前に立っているアルタイルを睨みつける。


 そんなXとは対象的に、アルタイルは息一つ乱さずに仁王立ちしていた。


「やっぱりバケモンだな……」


 苦笑したXは口元を拭った。


(RやAじゃなく僕のところに来たってことは……本気だな)


 クッと奥歯を噛み締め、構える。


(催眠弾も閃光弾ももうない。通信も復活していない。普通に考えれば負けるところだけど……)


 けれど。それでも。


「……皆と、約束したからね」


 フッと頬を緩めたXは再びアルタイルに立ち向かっていった。



「ダメだ……穴を開けてもすぐに塞がれる。一体どうすれば……」


 Kは焦ったようにキーボードを叩いていた。


「Y、そっちは?」


「見つからない……私もそっちに回ったほうがいいかもしれない」


「そうだね……お願いするよ」


「うん」


 頷いたYはウインドウを切り替え、キーボードを操作する。


(皆の状況が分からない……お願いだから無事でいて……!)



「っ!」


 ベテルギウスと交戦していたRは飛んできたナイフをギリギリで避けた。


 ベテルギウスはアルタイルやベガとは違った戦法だった。武闘を基本としながらも、ナイフや針などの暗器を時折混ぜて攻撃してくる。暗器が飛んでくるのがいつか読めないため、アルタイルやベガとは違った意味で厄介だった。


(どうしよう……不用意に突っ込んだらやられるかもしれない。けど、このままじゃ……)


 基本武闘を使っているため、距離は近い。が、暗器を警戒すると不用意に懐に潜るのは危険だ。


(やるしかないのかな)


 ギュッと拳を握りしめる。強引に突っ込んでも、致命傷は与えられないだろう。危険だが、賭けるしかない。


「はああああっ!」


 Rは思い切ってベテルギウスに飛びかかった。

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