TARGET6 転校生は名探偵!?
第36話 新しい転校生
丑三つ時の空に、天の川が瞬く。
男は、それをぼんやりと眺めていた。
不意に、バイブ音が鳴る。ズボンのポケットからスマホを取りだした男は耳に当てた。
「……わかった。すぐ戻る」
短く返事した男は、踵を返して去っていった。
桜が舞い散る四月。相賀達はニ年生になった。
とはいっても、相賀達の学年は十六人しかいないため、クラス替えなどはない。
「マジでメンツ変わんねえよな」
窓に寄りかかった黒野慧悟が呆れたような声で言う。
「ま、人数がねえからな」
相楽竜一が苦笑しながら返した。
「それで、今年の担任って誰なんだろ?」
辻香澄が全員に向けて聞いた。
「さぁ……。また三浦先生だといいんだけどね」
安藤翼が窓から見える桜を見上げながら言う。
「私は飯田先生でもいいなぁ」
長谷明歩が言った。
「あー、理科の?」
「明歩ちゃん、理科好きだもんね」
坂巻愛と菅田柚葉が言った。
「俺も飯田先生か三浦先生だな」
阿部光弥も明歩に同意した。
「あー、光弥も理科好きだったね」
明歩は頷いた。
「オレは雄飛先生がええけどな」
「それは野球部顧問ね」
林拓真の言葉に渡部海音がツッコミを入れる。
「別に嫌いな先生はいないからぶっちゃけ誰でもいいんだよね」
「同感ね」
石橋瑠奈と佐東実鈴がぼんやりといった。
「だって瑠奈と実鈴ちゃん、苦手教科がないじゃん」
中江詩乃が言い、朝井雪美もクスクスと笑った。
それを見ていた木戸相賀は、席について本を読んでいる高山翔太に目を向けた。
「そういえば、このクラスにまた転校生が入るらしいぞ」
相賀が言うと、一同は相賀を振り返った。
「え、マジか!」
「翔太以来だな!」
竜一と慧悟が盛り上がる。
翔太はオッドアイをゆっくりと瞬かせた。
「……僕みたいに、曰く付きじゃないといいけどね」
「おい……」
翔太の言葉に、相賀が顔をしかめながらツッコむ。
「席座れー」
そう言いながら男性が教室に入ってきた。
「うおーっ!」
「やったー!」
その姿を見て、一同が歓声をあげる。教室に入ってきたのは三浦永佑だった。
「二年連続でお前らか……」
永佑は苦笑いしているが、どこか嬉しさも漂っていた。
「気づいてる人もいると思うが、今日から転校生が来た」
永佑はそう言って開いていたドアに向かって手招きした。
入ってきたのは男だった。
「え……?」
相賀が何故か目を見張る。
永佑は黒板にチョークで名前を書き始めた。
「自己紹介してくれ」
「オレは
「はぁ?」
実鈴が思わず呆れた声を出す。
何しろ、登校初日だというのに自信満々でそんな自己紹介をしているのだ。呆れるのも分からなくは無い。
「実鈴に次ぐ探偵ってことはよー……もちろん事件を解いたりしてるんだよな?」
慧悟が意地悪そうに言う。
「もちろん。例えば、この間隣町で起きた宝石強盗。あれはオレが犯人を捕まえたんだ」
「……それは私が保証するわ」
口を開いたのは、意外にも実鈴だった。
「警部が私に頼んできて捜査しようとしたら、もう解決したって連絡が来たのよ。解決したの、貴方だったのね」
「その通りだ。まああんな事件、オレの力に頼らなくても解けたと思うけどな」
自信満々で上から目線な態度の伊月にさすがの永佑もイラッときたのか、
「……じゃあ、そろそろ
「はい」
伊月は胸を張って歩いていき、ドサッと席に座った。
前の席の翔太が顔をしかめる。
「これからすぐに体育館に移動して、始業式だ。その他諸々は終わってから話す。すぐ移動しろ」
永佑が言うと、一同はガタガタと立ち上がり、移動し始めた。
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