第5話:ハチグモ
みなさま、こんにちは。
今日もこちらで思う存分ホラを吹かせていただきたいと思います。ホラ吹き屋でございます。
さて、日々忙しいみなさまにおかれましては、いちいち木の肌を見るという行為をされることはないかと思います。ですが、時たま見てみますと、アリが樹皮を徘徊しているということがございます。
さらによく見てみると、このアリがアリでないということもあるのです。アリでないとしたら、それはきっとアリグモでございますです。
アリグモは姿形だけでなく、歩き方や行動もアリによく似ていますが、よーく目を凝らしてみると触角が脚であったり、顔がクモであったりするのでございます。
みなさまも、たまには木を見てみて、アリがいるなと思いましたら目を凝らしてみてくださいませ。それはクモかもしれません。
さてさて、そんな話でありますが、実はクモというのは擬態の達人でありまして、さまざまなモノに化ける種類がいるのでございます。
古文書を紐解きますと、昔は「ハチグモ」というクモがいたそうでございます。これは百年前のクモ学者が記述した本の『奇妙なクモ』という項目に書かれております。
アリもハチの仲間でありますから、アリに似ているクモがいるならハチに似ているクモがいても不思議ではないように思えます。しかし、ハチとクモでは大きな違いがあると思います。それは翅でございます。
流石にどんなに頑張ってもクモが翅を生やすことはございません。ですので、どうやっても真似できそうもないのですが、このクモは翅がなくなったハチに擬態しているのであります。
記述に残っているだけでありますが、黒と黄のシマシマでまさにハチ模様。そして顔もアシナガバチやスズメバチの威圧的な顔を模していたのでそうでございますです。
全く自然の力というものは凄まじいものでして、私の想像など寄せ付けないのでありますな。
時をさらに1900年ほど遡ります。
とある山岳地帯に発生した国の巫女の日記に、飛ぶクモを表すような「飛蜘蛛」とでも読むべき表現が頻発します。この巫女様、ムシ、特にクモがお好きなようでして、密林に赴いてはさまざまなクモを採取して喜んでいたようであります。
クモの中には跳躍するものもおりますので、訳を間違えたか、対応する言葉がなかったのかと思っていたのですが、日記を読み込むと跳躍するクモを表する「跳蜘蛛」という言葉も出てくるのでございます。
私、非常に興味を惹かれましたので、「飛蜘蛛」の記述をまとめてゆきました。そのクモはハチと見紛うほどの見た目をしており、クモなのに空を飛んでいるとのことなのでございます。
みなさま、森の奥でハチを見た時、少しだけ目を凝らしてみてくださいませ、それがクモだったとしたら大発見でございます。
みなさまの目が少しでも自然に向けられたのでありましたら、私ホラ吹き屋の冥利に尽きるというものでございます。
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