第16話 落ち葉被害

男はビニール袋を片手に掃除をしていた。

誰も手伝ってくれない孤独な作業である。


大量の落ち葉が男の家のベランダや車庫、道路などに散乱していた。

隣接するマンションが植えている木の落ち葉である。


男の家はマンションよりも下に位置していた。

更に2階を囲む周囲がベランダとなっており落ち葉が溜まってしまうため、落ち葉の時期になるとゴミ出し用ビニール袋3つ分は軽く超える量を掃除しなければならない。


駐車場や玄関周りも同じ様に大量の落ち葉に見舞われる。

掃除しないで放置しておくと虫さん達が喜び大繁殖してしまう。


男はそれでも良いのだが家族は許してくれないだろう。

もう10年以上この状態だった。


男は考える。

これは本来隣のマンションや管理人が掃除するべきではないか?

それが嫌なら枝の伐採などをすべきだろう。


マンション住民は自分達は被害を受けないので、周囲に落ち葉が吹き荒れていようと素知らぬ顔だ。


男は憤る。なぜ俺が掃除しなければならない?

「ふざけんな!これからは全部マンション住民のベランダとか部屋に入れよ!」


誰もいない処で少しだけ発散した男は黙々と孤独な掃除を続けるのであった。


ーー


一ヶ月ぐらい後、マンション内で話し合いが行われた。

落ち葉が風に吹かれてベランダや部屋に大量に入って来ると言うのだ。

ベランダの吹き溜まりやエアコンの室外機の間、窓レール等に溜まると。


今まではそのまま下の家や道路に吹き荒れていたのにと一人の住人が言うと、皆気まずい顔になった。

自分達の敷地に植えた樹木であり周囲に落ち葉被害を与えているのに、自分達さえ被害が無ければ良いという状態になっていた事に気づいたのだ。


それが自分に帰ってきたというだけの事である。

取り急ぎ皆の採決で暫くは落ち葉を落とさないように管理費で枝を伐採する事になった。


ーー


前回の掃除から三ヶ月ほど後に男がベランダを見ると、不思議な事に綺麗なままであった。


ふとマンションを見上げるそこには枝を切られ裸のようになった木々が見える。

男は笑顔で当分は落ち葉掃除をしなくて済むと喜ぶのであった。





ーーーーー

ファンタジー小説も書いています。

https://kakuyomu.jp/works/16817139558358317347

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る