第13話 いじめ問題⑤
報告を聞いた内閣総理大臣および政府与党は、総理大臣と同じタイミングで発症した関係者を集めて、インターネット上の推論と件の女子中学生回復の経緯を説明した。
そして皆半信半疑ではあったが正すべきは正そうという事で一致した。
会議の結果としては政府からは正式に調査資料に対して対価を支払う事、嫌がらせの通告に対して謝罪を行いたい旨を調査会社に連絡した。
次の日、朝から調査会社に総理大臣を含む関係者全員で極秘に訪れた。
調査資料の発注契約を締結し社長および役員の方々にも謝罪する。
土下座などはしなかったが症状の事もあり皆は誠心誠意謝罪し、再発はさせないなどの約束も行った。
社長を始めとする調査会社の方々も満足して謝罪を受け入れた。
その直後、内閣総理大臣の口が開くようになった。
確認するとここに来た関係者は全員症状から回復したようだった。
一部には明らかに不満そうに謝罪する者もいたはずなのに、全員揃って回復したとなると〈いじめ被害者からの許し〉が必要なのではないか?と政府関係者は推測した。
その日の夜、内閣総理大臣から国民全員に向けて緊急会見があった。
そこで自らの発症原因、回復した経緯を説明した。
特に原因はハッキリと〈いじめ〉である事が明言された。
発症者は直ちにいじめ被害者に謝罪する事、許しを得る事が重要である旨を総理大臣は説明した。
次の日以降、発症者はいじめ被害者への謝罪をする事となった。
早い者は昨夜から実行に移し既に回復した者もいた。
過去の自分の行いを顧みて心当たりがあった大方の者は被害者に謝罪した。
被害者が既に亡くなっている場合は被害者遺族と墓前に謝罪した。
被害者や遺族が凄く怒っている場合はなかなか許されない場合もあった。
結果として許されない場合もあった。
そして総理大臣の会見から3日後には70%程度の発症者が回復に至った。
残った発症者は謝罪していないか謝罪中か謝罪しても許されない者達となる。
後は許していただける様に粘り強く謝罪してゆくしかない。
若しくはそれを罰として症状を受けれて生きてゆくしかない。
日本中の人々はもういじめなどする気になれなかった。
〈突発性ひと開口不全症候群〉が発症するとすぐに誰かをいじめていると分かってしまう。
子供が発症した場合は親がすぐに聞き取り被害者へ謝罪するようになった。
日本からいじめが一掃された。
厳密にはなくなった訳では無いが、発生後すぐに解決される様になった。
少なくとも以前のように継続した酷いいじめは発生しない。
誰しも自分がかわいいのだから。
男は自分の子供にいじめられていないかを聞く必要が無くなった。
少しだけ住みやすくなったなと考える男であった。
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