第二十五話 光合成スイマーの金メダル
昨日の大雨では線状降水帯が発生してこの辺一帯は大変な雨量に
川のほとりで一人たたずんでいた
青柱はあの日に受けた
「あの
あれ以来、青柱にふりかかった出来事といえば最悪なことばかりであった。その間に出会った人々の様々な顔が思い出される。その中には私と光成の顔も
「あのクソガキどもめ。アイツらさえいなければ、
「あの野郎、あれほどくされ果てた
ここ最近で
「あいつだけは絶対許さねえ! あいつこそ
ちょうどその時だ。川の下流から何者かが水しぶきをあげながら
「おい、ちょっと待てよ。あれはなんだ?」
この様子には
「おいおい、どんなバカだよ! こんな増水した川でバタフライなんかやってるヤツは!」
青柱は水の引いた
「見つけたぞあの
ヤツはケツを出しながらアグレッシブなフォームでもくもくと泳ぎ続けていた。
「おい! そこのネバーウェア! お前だよ!
ヤツはバタフライをしながら横を向いて
「テメェ、今なんつった? ああ?」
光合成スイマーは
「ネバーウェアつったに決まってんだろ! 耳聞こえねえのか! このクソ
「なにい? はっきりいってくれるじゃねえか! おもしれえ! ぜってえ許さねえぞ! ああ?」
「
「なんだあ? そういわれてみれば確かにオメェの顔は見たことがあんなあ! ああ? そうだ! 思い出したぜ! うぁっははははは! テメェは泳げねえくせに
こういわれて青柱は、あらためて自分が
「テメェ! ぜってえぶっ殺す! テメェだけはぜってえぶっ殺す!」
「なんだテメェ? 今日はピーターパンみてえなコスプレはしてねえのかよ? ああ?」
こういわれるにおよんで激しい
「死ね! この
青柱は
「ぐあああああ!」
「なんだあ? テメェ? めちゃくちゃ弱えじゃねえか! うぁっははははは! 弱くて草w! 草すぎんぜwww!」
「くそ! しまった! 服なんか着てたら敵わねえ!」
青柱はいそいそと服を
「うぁっははははは! 今さら何やってんだ! ふざけてんじゃねえ! ぶっ殺すぞ! ああ?」
「ぐふぅっ! クソ! テメェ!
しかし、スイマーは一切
「ぐふっ! ぐほぅ!」
最高に光合成したスイマーの
「ヤベえ! マジでヤベえ! このままじゃやられちまう!」
「弱え! 弱えんだよテメェ! 弱えくせに何イキってネバーウェア呼ばわりしてくれたんだよ!
スイマーの
青柱は命の危機を感じた。
青柱はあまりのダメージで立っていられなくなり、ヒザからくずれて地面に手をついた。激しい
「うぁっははははは! 弱え! 弱すぎる! 思い知ったか! 人様をネバーウェア呼ばわりしたことがどんだけ
スイマーが勝ちほこって攻撃を止めたところを青柱は
ドスン!
「ぐほぅ!」
光合成スイマーは
「テメェ、よくもやってくれたなあ……。死ぬかと思ったぜ……」
青柱にも凄まじい重力がかかる。全身に血管を
「
スイマーはまるでプレス機に
「俺はなあ! テメェなんかよりも優れた存在なんだよ! テメェと
青柱は何度も
スイマーの目の前が真っ暗になった。
雲一つない真っ青な晴天。まぶしい水色のプールに水面が
この男は、高校生時代に一度、金メダルを取ったことがあったのだ。
その大会で
ぶっちぎりの一位だった。断トツの一位でゴールした彼は、盛大な
「ねえ、ちょっと見た?」
「速すぎじゃね?」
「ひょっとして、あいつ光合成人間なんじゃねえの?」
「初めて見んだけど」
「おう! みんな!」
「お、おう」
「あれ? みんなどうしたの? なんかあったの?」
「なんかあったって、やっぱ、お前速いな……」
「おう、見ててくれた? 一位取ったよ!」
「お、おう。すげえな……」
なんだかみんなが白々しい。コーチの姿も見えない。コーチがいないことを不思議に思って、みんなに聞いてみた。
「コーチは? コーチはどこにいんの?」
「なんか、大会委員会に呼ばれたって……」
「へ? なんで?」
「し、知らねえよ……」
そうしてしばらくすると
後日、この金メダルは
しかし、表だった理由はそうだったとしても、彼が光合成人間だったからという理由で金メダルが剥奪されたことは明白だった。実際問題、彼は委員会から聞き取り調査を受け、自分が光合成人間であることを自白していたのだから。
みんな!
いつの日も
私は彼にいってあげたい。その大会でもっとも速かったのは君だったのだと。君が
しかし、金メダルを映しだす走馬灯の灯火が力なく消え去ると、すべてが
「思い知ったかこの
「俺はなあ!
しかし、光合成スイマーからの返事はない。それどころかピクリとも動かなかった。
「テメェ! 何だあ? 死んだフリかあ? 死んだフリなんか他でやってろよ! このクソ
青柱は
「おい? ちょっと待てよ? テメェまさかもうグロッキーになってんのか? 待てよ……? そうか! そうやって俺が重力を弱めんのを待ってんだろう!
そういって青柱はスイマーの
「今のは効いただろう! なあ! 効いただろっつってんだよ!」
「何だあ? オメェホントにグロッキーなのか? なあ? どうなんだよ?」
青柱は
「おい、マジか? しっかりしろよ? なあ?」
青柱はあせって重力を強めるのをやめた。
「おい! 返事しろよ! 何やってんだ! 返事しろっつってんだろ!」
青柱はスイマーをゆすってみたが、何の反応もない。ただ、目をあらぬ方に向けたまま、ゆすられるがままなのである。
「ま、マジかよ? ウソだろ? まさか、死んじまったのか? なに勝手に死んでんだよ?
「クソ! 見られちまった! ヤベえ!
青柱は川の対岸を見た。対岸には人が集まっていない。川を泳ぎ切ることができれば、あるいはこの場を逃げられるだろうか? しかし、青柱は泳げないのだった。
「いいや、よく考えてみろ!
やぶれかぶれになった青柱が川に飛びこむやいなや、その水流たるや
「うわ! うぷ! うわぁっぷ!」
青柱は
「ヤベえ!
「ヤベえ! 助けてえ!
あの時と同じように、我を忘れた青柱は太門へ助けを求めた。しかし、太門がこの場にいるはずもない。その声むなしく、青柱はみるみる
ちょうどその
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