第二十五話 光合成スイマーの金メダル

 昨日の大雨では線状降水帯が発生してこの辺一帯は大変な雨量に見舞みまわれた。川の氾濫はんらんはギリギリでまぬがれたものの、それでも河川敷かせんじきが一時濁流だくりゅうに飲みこまれるほどであった。それが、この日は昨日までの大雨がウソのように晴天になったのである。

 川のほとりで一人たたずんでいた青柱正磨せいちゅうせいまは、川の流れを見つめながら自分がUOKうまるこw隊員として初めて実戦に配備された日のことを思い出していた。あの日も台風の影響えいきょうで川が増水した日だった。増水した川で泳いでいた馬鹿ばかがいて、そいつが大暴れして通報があったのだ。確か、カップルにネバーウェアといわれたのに腹を立てたのがきっかけだったか。今となって考えてみれば、青柱にもこのネバーウェアの気持ちがよくわかる。今のかれもカップルのようなリアじゅう気取りからネバーウェア呼ばわりされようものなら、そいつらをブチのめすことに躊躇ちゅうちょしなかったであろう。

 青柱はあの日に受けた屈辱くつじょくも忘れていなかった。あのようなATP能力も持たぬ見下すべきネバーウェア相手に、目覚ましい成果を上げることもできず、あろうことか自身の醜態しゅうたいまでさらしてしまうことになったことを。

「あの野郎やろう、今度見つけたら絶対にただじゃおかねえぞ」

 あれ以来、青柱にふりかかった出来事といえば最悪なことばかりであった。その間に出会った人々の様々な顔が思い出される。その中には私と光成の顔もふくまれていた。

「あのクソガキどもめ。アイツらさえいなければ、おれがここまで身を落とすこともなかったんだ。くっそムカつくなあ! 絶対許さねえ! 次に見つけたらマジでぶち殺してやる」

 若流わかるの顔も思い出された。人を上から見下して冷笑するあのイケメンだ。

「あの野郎、あれほどくされ果てた自惚うぬぼ野郎やろうはいねえ。上から目線でマウント取りやがってよ。何様のつもりだ? その上二重スパイまでやってんだぜ? あれで器用なつもりかよ? はっ、マジで人間のクズだ。あれでヘラヘラできんのが信じられねえぜ。アイツが生きてるってだけでムカつく。絶対許せねえ。マジでぶっ殺す」

 ここ最近で青柱せいちゅうにふりかかった災難やいやなことが、まるで沸騰ふっとうしたあぶくのように次々と思い返され、それらがさいなむように青柱の癇癪かんしゃくかせるのだ。そして、その中から太門だもんの顔がかんでくるにおよぶと、その憤怒ふんぬが絶頂をむかえたのだった。

「あいつだけは絶対許さねえ! あいつこそおれの出世をふみにじった張本人じゃねえか! 鋼鉄のような優しさだあ? サクラ! オメェなにボケたこといってんだよ! あんな偽善者ぎぜんしゃが善人なわけねえだろが! あんな老害がいるから世の中が悪くなってくんだよ! 世の中のためにはなあ、ああいう老害にはさっさと引導をわたしてやった方がいいんだよ!」

 青柱せいちゅう太門だもんのことを思い出すと、病的なほどのいかりで我を忘れてしまうのだった。


 ちょうどその時だ。川の下流から何者かが水しぶきをあげながら遡上そじょうしてくるのが見えたのは。

「おい、ちょっと待てよ。あれはなんだ?」

 この様子には既視感きしかんがある。あれは間違まちがいない。バタフライだ! バタフライで泳いでいるヤツがいるのだ!

「おいおい、どんなバカだよ! こんな増水した川でバタフライなんかやってるヤツは!」

 青柱は水の引いた河川敷かせんじきけ下りていった。草むらはドロでなぎたおされ、まだぬかるんでいたもののそんなことにはお構いなしだった。

「見つけたぞあの野郎やろう! あん時も川が増水してたなあ! どんな馬鹿ばかだよ! 川が増水したらいても立ってもいらんなくなって泳いじまうのか? ふざけた変態野郎へんたいやろうだぜ! ぶっ殺してやる! おい! 待て! そこのクソ野郎!」

 ヤツはケツを出しながらアグレッシブなフォームでもくもくと泳ぎ続けていた。

「おい! そこのネバーウェア! お前だよ! ぱだかのネバーウェアつってんだろ!」

 ヤツはバタフライをしながら横を向いて青柱せいちゅうの方を見た。すると、ザブンと水にもぐって潜水せんすいしたかと思うと、向きを変えて今度は自由形で泳いできたのだ。個人メドレーではなかったのか? ヤツはそのまま激しく土手にぶち当たると、大きな水しぶきを上げて岸にはい上がってきた!

「テメェ、今なんつった? ああ?」

 光合成スイマーはいかりでふるえていた。しかし、それは青柱とて同じだった。

「ネバーウェアつったに決まってんだろ! 耳聞こえねえのか! このクソ馬鹿ばかネバーウェアが!」

「なにい? はっきりいってくれるじゃねえか! おもしれえ! ぜってえ許さねえぞ! ああ?」

おれだってなあ! オメェのことを忘れちゃいねえぜ! オメェのことはなあ! ぜってえ許さねえからな! この場でぶっ殺してやるよ!」

「なんだあ? そういわれてみれば確かにオメェの顔は見たことがあんなあ! ああ? そうだ! 思い出したぜ! うぁっははははは! テメェは泳げねえくせにおぼれて『助けて! 助けて!』とかほざいてたクソう○こうまるこwじゃねえか! ああ?」

 こういわれて青柱は、あらためて自分がUOKうまるこwだったことを思い出してしまった。そして、今はそうでないことも。これは思い出したくないことだった。せっかく念願のUOKうまるこwになれたというのに、むざむざその身分を失って身をほろぼしてしまった青柱せいちゅうにとって、これはれてほしくないことだった! それがこんなネバーウェアに指摘してきされるとなるとなおさらのことだ!

「テメェ! ぜってえぶっ殺す! テメェだけはぜってえぶっ殺す!」

「なんだテメェ? 今日はピーターパンみてえなコスプレはしてねえのかよ? ああ?」

 こういわれるにおよんで激しい憤怒ふんぬ爆発ばくはつし、青柱は我を忘れた。

「死ね! この野郎やろう!」

 青柱は渾身こんしんの力をこめてなぐりかかったが、相手は全裸ぜんらのネバーウェアである! パワーが全開なだけでなくそのおそるべきスピードでもって、逆に返り討ちにあってしまった!

「ぐあああああ!」

「なんだあ? テメェ? めちゃくちゃ弱えじゃねえか! うぁっははははは! 弱くて草w! 草すぎんぜwww!」

「くそ! しまった! 服なんか着てたら敵わねえ!」

 青柱はいそいそと服をぎ始めたが、光成のように一瞬いっしゅんでテイクオフすることなどできない! もたつく青柱をよそに、スイマーは容赦ようしゃなくおそいかかった!

「うぁっははははは! 今さら何やってんだ! ふざけてんじゃねえ! ぶっ殺すぞ! ああ?」

「ぐふぅっ! クソ! テメェ! 卑怯ひきょうだぞ!」

 しかし、スイマーは一切攻撃こうげきの手をゆるめない!

「ぐふっ! ぐほぅ!」

 最高に光合成したスイマーの打撃だげき威力いりょくたるやすさまじく、服を着たままの青柱せいちゅうにとってその戦闘力せんとうりょくの差は圧倒的あっとうてき無慈悲むじひなほどであった! 青柱が反撃はんげきをしても到底とうていおよばず、みるみる全身にアザが増え、出血もして血まみれになった! もはや立っているのも難しい! しかし、それでもスイマーの攻撃こうげき容赦ようしゃなく続いた!

「ヤベえ! マジでヤベえ! このままじゃやられちまう!」

「弱え! 弱えんだよテメェ! 弱えくせに何イキってネバーウェア呼ばわりしてくれたんだよ! おれたちはなあ! もう失うものなんかねえんだよ! 俺の人生なんかとっくの昔に終わっちまってんだ! ああ? 思い知ったか! このクソ馬鹿野郎ばかやろう!」

 スイマーの攻撃こうげき苛烈かれつを極めた。まずい、なんだコイツ……、俺を殺す気か?

 青柱は命の危機を感じた。

 青柱はあまりのダメージで立っていられなくなり、ヒザからくずれて地面に手をついた。激しい攻撃こうげきを受けた青柱せいちゅうの服はボロボロに乱れ、シャツはほとんど脱げかけている。スイマーは思いつく限りの罵声ばせいと打撃を浴びせかけたが、青柱のこの様を見て攻撃の手をゆるめた。

「うぁっははははは! 弱え! 弱すぎる! 思い知ったか! 人様をネバーウェア呼ばわりしたことがどんだけ馬鹿ばかな行いだったかをよ! 泣いてあらためてろよ! この糞馬鹿くそばかう○こw野郎やろうが!」

 スイマーが勝ちほこって攻撃を止めたところを青柱は見逃みのがさなかった。シャツを引きいてぎ捨てると、渾身こんしんの力をしぼってATP能力を発動させた!

 ドスン!

「ぐほぅ!」

 光合成スイマーはすさまじい重力で地面にたたきつけられるようにしつぶされた!

「テメェ、よくもやってくれたなあ……。死ぬかと思ったぜ……」

 青柱にも凄まじい重力がかかる。全身に血管をき上がらせて全力で立ち上がると、ふるえる手でズボンをぎ始め、ゆっくりとパンツも脱ぎ、そうしてとうとう一糸まとわぬ全裸ぜんらになってしまった! そして、容赦ようしゃなく重力を強めるのだった!

あらためる必要があんのはどっちだよ? テメェこそ地面にはいつくばって無様だなあ! どうしたあ? 立ち上がれねえのかあ? 弱えのはテメェのほうじゃねえか! おれはこうやって立ち上がってんぞ!」

 スイマーはまるでプレス機にしつぶされるような圧力を受けていた! 骨がきしみ、バラバラにくだけそうだ! その重力のまま、青柱せいちゅう渾身こんしんの力と体重をのせてこぶしり下ろす! それも何度も何度もだ! いかりで我を忘れ、手加減も、情け容赦ようしゃもない!

「俺はなあ! テメェなんかよりも優れた存在なんだよ! テメェとちがって向上心があんだ! だれよりもなあ! 誰よりもトレーニングしてきたえてんだよ! 今の俺はこの前の俺とはまったく違うんだ! どこまでもどこまでも上りつめてんだ! 無様なテメエとちがってなあ! わかったか! この野郎やろう! 死ね! 死にやがれ!」

 青柱は何度もこぶしり下ろし、足でみつぶした! それらの打撃だげきのうち、頭部へ放たれた一撃いちげきがスイマーにとって致命的ちめいてきであった!


 スイマーの目の前が真っ暗になった。


 かれの脳裏には走馬灯のように高校生のころが思い出された。

 雲一つない真っ青な晴天。まぶしい水色のプールに水面がらぎ太陽の光を照り返している。プールサイドには大勢の若々しい男女の声援せいえん。まぶしいほどの光景。目がくらむほど光輝ひかりかがやいた光景だった。

 この男は、高校生時代に一度、金メダルを取ったことがあったのだ。


 その大会でかれ突出とっしゅつした記録を打ち出した。

 ぶっちぎりの一位だった。断トツの一位でゴールした彼は、盛大な歓声かんせいを期待して意気揚々いきようようと水面から顔を出した。しかし、どうも様子がおかしい。だれも歓声など上げていないのだ。むしろザワついていたといった方が正しいか。プールサイドへはい上がってみると、みな奇異きいの目で自分を見ていることに気がついた。皆が戸惑とまどった様子で、それぞれがヒソヒソ話をしていたのだ。

「ねえ、ちょっと見た?」

「速すぎじゃね?」

「ひょっとして、あいつ光合成人間なんじゃねえの?」

「初めて見んだけど」

 かれは他校生徒からの白い視線が集まる中を通りけ、同じ学校の部員の元へ向かった。彼らもいつもとちがって明らかに動揺している様子である。彼は戸惑いをかくしつつも、意気揚々とみんなに声をかけた。

「おう! みんな!」

「お、おう」

「あれ? みんなどうしたの? なんかあったの?」

「なんかあったって、やっぱ、お前速いな……」

「おう、見ててくれた? 一位取ったよ!」

「お、おう。すげえな……」

 なんだかみんなが白々しい。コーチの姿も見えない。コーチがいないことを不思議に思って、みんなに聞いてみた。

「コーチは? コーチはどこにいんの?」

「なんか、大会委員会に呼ばれたって……」

「へ? なんで?」

「し、知らねえよ……」

 そうしてしばらくすると表彰式ひょうしょうしきが始まり、かれは表彰台に立って金メダルが授与じゅよされた。静かな拍手はくしゅがあったものの、彼が祝福されていないことは明白だった。


 後日、この金メダルは剥奪はくだつされる。理由としては彼の泳ぎがあまりにも速く、彼を先頭にして水面に大きなうねりが発生したため、それが波となって他の選手の妨害ぼうがいをしたからという理由だった。

 しかし、表だった理由はそうだったとしても、彼が光合成人間だったからという理由で金メダルが剥奪されたことは明白だった。実際問題、彼は委員会から聞き取り調査を受け、自分が光合成人間であることを自白していたのだから。

 かれの失望やいきどおりたるや筆舌につくしがたいものであった。光合成人間であることが金メダルを授与じゅよされない理由なのでは、自分はどうやったって金メダルを取れないではないかと。こんなの不公平じゃないか! 自分は生まれながらに金メダルを取れないのではないのか! と。


 みんな! おれは金メダルを取ったよ! 金メダルを取ったのは俺だよ! ほら! 見てよ! 俺が取った金メダルを、みんな見てよ! みんな! ねえ! みんな!


 いつの日も一緒いっしょに練習してきたみんなの顔が思い出された。コーチや同級生、部活外でも一緒に遊んだ友だち。ずっとずっと好きだった同じ水泳部の桐島きりしまさん。みんな、みんな。一人、また一人とみんなの顔がやみに消えていって、最後に桐島さんの笑顔が消えたかと思うと、あたりは真っ暗闇になって、金メダルの弱々しいかがやきだけが残った。

 私は彼にいってあげたい。その大会でもっとも速かったのは君だったのだと。君が圧倒的あっとうてきに速かったのは事実ではないか。君が金メダルだったのだと。

 しかし、金メダルを映しだす走馬灯の灯火が力なく消え去ると、すべてがやみに包まれ、光合成スイマーはピクリとも動かなくなった。かれは絶命したのだ。


「思い知ったかこの野郎やろう! テメェなんかよりおれの方がずっとずっと強ぇんだ!」

 青柱せいちゅうは重力とそのいかりにまかせてボッコボコになぐり、り飛ばしていた!

「俺はなあ! だれよりも優れてんだ! 誰よりも鍛錬たんれんしてんだよ! どこまでもどこまでも成長してんだ! テメェみてえなごみクズが何イキってやがんだ! 思い知ったかこのクソが! おう? 聞いてんのかあ! 聞いてんのかっつってんだよ!」

 しかし、光合成スイマーからの返事はない。それどころかピクリとも動かなかった。

「テメェ! 何だあ? 死んだフリかあ? 死んだフリなんか他でやってろよ! このクソ馬鹿ばかが!」

 青柱は渾身こんしんの力をこめてこぶしり下ろした。しかし、何の反応もない。

「おい? ちょっと待てよ? テメェまさかもうグロッキーになってんのか? 待てよ……? そうか! そうやって俺が重力を弱めんのを待ってんだろう! だまされっかよ!」

 そういって青柱はスイマーの脇腹わきばら強烈きょうれつりをくらわせた。

「今のは効いただろう! なあ! 効いただろっつってんだよ!」

 青柱せいちゅうはもう一度蹴った。

「何だあ? オメェホントにグロッキーなのか? なあ? どうなんだよ?」

 青柱は反撃はんげきされぬよう念のため重力を強めながら、スイマーの顔を確認した。

 かれは目を見開いたまま、口と鼻から血を流している。まばたきなど一切ない。何かを見つめているというよりは、ただ、目が開いたままという状態だった。注意深く観察してみると息をしている様子もない。

「おい、マジか? しっかりしろよ? なあ?」

 青柱はあせって重力を強めるのをやめた。

「おい! 返事しろよ! 何やってんだ! 返事しろっつってんだろ!」

 青柱はスイマーをゆすってみたが、何の反応もない。ただ、目をあらぬ方に向けたまま、ゆすられるがままなのである。

「ま、マジかよ? ウソだろ? まさか、死んじまったのか? なに勝手に死んでんだよ? おれが死ぬようなことなんかしたかあ? してないよなあ? 俺は何もやってねえ! 俺が悪いんじゃねえからな! オメェが悪いんだ! テメェが弱ぇくせにイキってたのが悪いんだよ! そもそもテメェが川で泳いでなきゃこんなことにならなかったんだ! ちくしょう! なんでこんな時に川でなんか泳いでんだよ! 普通ふつうは泳がねえだろ! 俺はぜんぜん悪くねえってオメェも思うよなあ? なに勝手に死んでんだよ? 弱すぎじゃねえか! テメェが弱すぎなんだよ!」

 青柱せいちゅうはふと我に返ってあたりを見わたした。すると何人かが集まってこちらを見ているではないか! それもそのはずである。白昼堂々と全裸ぜんらの男がなぐり合っていたのだから!

「クソ! 見られちまった! ヤベえ! げねえと! どうする? どうやって逃げる?」

 青柱は川の対岸を見た。対岸には人が集まっていない。川を泳ぎ切ることができれば、あるいはこの場を逃げられるだろうか? しかし、青柱は泳げないのだった。

「いいや、よく考えてみろ! おれが泳げなかったのは、重力の能力が発動していたからだ! この能力を完全にコントロールできている今の俺だったら、これくらいの川、泳げるんじゃないのか? そうだ! 俺は完全にコントロールできてる! この状況じょうきょうをコントロールして逃げ切ってみせる!」

 やぶれかぶれになった青柱が川に飛びこむやいなや、その水流たるやすさまじく、線状降水帯によって増水した濁流だくりゅうの非人間的な威力いりょくを、身をもって思い知らされることになった。おそろしいほどの流れの強さである。

「うわ! うぷ! うわぁっぷ!」

 青柱は一瞬いっしゅん恐怖きょうふに支配されてしまった。とてもではないが泳げるなどという話ではない。

「ヤベえ! おぼれる! うわぷ!」

 青柱せいちゅう恐怖きょうふのあまり、無意識のうちにATP能力を発動させていた。そのせいで、水が固く重くなって余計に手足を動かすことができない。

「ヤベえ! 助けてえ! だれか助けて! 太門だもんさん! 太門さん! 助けてえ!」

 あの時と同じように、我を忘れた青柱は太門へ助けを求めた。しかし、太門がこの場にいるはずもない。その声むなしく、青柱はみるみる濁流だくりゅうに流されて行ってしまった。


 ちょうどそのころ、あれだけ青柱からうらまれていた若流わかるの方にも人生を左右する出来事が起こっていた。宮内先生死亡の件について他殺の方向で捜査そうさを進めていたUOKうまるこwが、若流を二重スパイの疑いで逮捕たいほしたのである。(続く)

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