第十一話 ドキドキ☆ゲリラプールinサマー
子どもの
それに対して、友だちと行った夏祭りや花火大会など、身近な場所やイベントではあったものの、これらの思い出はなんと生き生きとしたものだったことか。幼少期の価値観というものは、大人の価値観とはまるで
今回のエピソードの
「お前、チンコなんか出してないでさっさと
すでに水着へ着替えていた明智光成がいった。私と光成は補習の後に市民プールへ遊びに来ていたところだった。
「ひやぁ〜、気持ちいい!」
私はもたもたといつまでも着替えずに、フルチンで
本当にこんなことをしていたのだろうか。さすがにここまでバカなことをしていた
「おい、光成。ちょっとアレ見てみろよ。なんかヤバいヤツがいるw」
その時、
「くっそウケるw!」
「ほんとだな。こんな晴れた日にプールで何してんだろ」
私たちは目の前にある流れるプールに今すぐ入りたかったため、そんな男にはかかわらず、
水に入った私と光成は感極まって
地域の市民プールであったから顔見知りも多かった。水の流れに乗りながら、時には声をかけたり、水をかけあったりするなどして、夢中になって泳ぎ遊んだ。
この時、ふざけた同級生が私めがけてビーチボールを投げる一幕があった。ビーチボールはゆらゆらとあらぬ方向へ飛んでいったのだが、それが太り気味のおじさんの顔に当たった。太っているせいで水中メガネが顔に食い
流れるプールを一周してみると、次はウォータースライダーをやろうということになった。このウォータースライダーは子どもたちに人気で、いつも順番待ちの行列ができている。その列にはすでに何人かの顔見知りの姿もあった。
話を少し
比留守と太満の二人はイベントの視察で市民プールに来ていたのだ。そのイベントは「ドキドキ☆ゲリラプールinサマー」というSNS上の有志たちによって計画されたイベントで、市民プールが
さて、ウォータースライダーの列に並んでいた私と光成は、他の同級生にちょっかいを出したり出されたりを
スライダーの頂上から見下ろす景色は、友人たちと最高に楽しい
いよいよ私たちの番が回ってきた。気持ちが高ぶっていた私はクールな光成よりも先に立ち、
そのスライダーはチューブ状になっていて、いくつもの曲がりくねったコーナーがある。最高に楽しかったせいで、一人で
しかし、それは光成ではなかった。緑色のお面をつけた、
その男は
「ヒヤァッハアァァ〜!」
その緑色のお面には、何か植物のような、手書きのお
「キャァァァー!」
周囲にいた人々の悲鳴が上がった! これを聞いた
「うひょひょひょひょぉぉ!」
ヤツは何もかくさない。全裸のままだ!
「ちょ、待てよ! いきなりヤベえヤツが出てきた!」
私は
「光成、聞こえるか? お前が
「ああ、お前が行った後に
「いや、
「全裸? 割り込んできたヤツは水着はいてたぞ?」
「マジで?
「はあ? なんだそれ?」
「光合成仮面のマネなんじゃねw? くっそウケんだけどw」
「マジかよ!」
「よかったじゃんw。ネバーウェアにマネされてw。お前も有名になったもんだなw」
「いや、全然うれしくないって!」
私がATPリンクで通話しているところに、赤いTシャツを着た細マッチョの男がかけよってきた。この市民プールでは、
「君! 危ないから下がって!」
この監視員は大学の水泳部員で泳ぎは得意であるが、アルバイトで監視員をやっているだけでネバーウェアの対応などやったことがない。正直いってビビっていた。
「ウキョォォォー!」
しかし、ネバーウェアは監視員が来てもひるむ様子もない。
「ははん?
男は悪びれる様子もなく、
「おひょひょひょひょぉぉ!」
「キャァァァー!」
パニックのさなか、異変は他の場所でも起きていた。この段階では何が起きているのかわからない人たちも多く、流れるプールでは悲鳴がする方を見て立ち止まる人もいた。すると、何者かが水中で足にぶつかって、「痛え!」とか「キャア!」などの悲鳴が上がり、バランスをくずす者が次々とあらわれた。
なんと、この男も
「ポウゥ!」
その男は
「キャァァァー!」
これを見た一人の女性が
「キャッ! すみません!」
「おお? なんですか! 危ないですよ!」
「すみません!」
「どうしたんですか! そんなに
「すみません!
「裸ですって? そんなまさか!」
そういって競泳用の水着をはいた男が
「え? え?」
女が
「キャァァァー!」
女は悲鳴を上げて
「監視員さん! 大変です! 変質者がいるんです!」
「変質者? それは大変だ! どんなヤツですか!」
「
「全裸? えっと、一つ確認ですが、全裸に何か問題がありますか?」
「はい?」
予想外の言葉に女性ははげしく
すると、遠くにいた別の監視員がかけ寄ってきた。
「おい! お
これを聞いて、女性の前にいた
「バレたか!」
顔には緑色のお面がつけられていて、Tシャツを
「キャァァァー!」
「
ベンチにロダンの考える人のようなポーズで座る三人の男がいた。うつむいていて顔が見えず、そのポーズから
「芸能人でもいるのか?」
「芸能人だったらサインほしいぞ」
三人の男たちは
「
「全裸?」
「男たち? 一人ではないのですか!」
「『暴れてる』というのはいい過ぎなのでは? 証拠があっての発言なんでしょうな?」
三人の男たちは好き勝手なことをいい出し、またしても会話がかみ合わない。
「あなたはつまり、
「どっちなんですか!」
「ここは市民プールなんだから、裸なのは当たり前なのでは?」
最後の男は、アゴを乗せていた手をグーからパーにしていった。
「実際、私もはいてないのですよ」
そういって立ち上がると、顔には緑色のお面がついていて、なんとこの男も
「キャァァァー!」
「私もです」
「私もですぞ」
残りの男も順々に立ち上がると、やはり全裸で顔には緑色のお面がつけられていた!
そこら中で緑色のお面をつけたネバーウェアが
太満の背後では、また別の悲鳴が上がっていた。
「いよいよ始まったな」
太満がニコニコエクボ顔で比留守に話しかけた。
「ああ……、ゴホッ、ゴホン!」
「想定していたより多いね。こんなに大規模だとは思わなかった。こんだけいたらATP能力持ちの一人や二人くらいはいるかもね?」
「ああ……、グフッ、ゲホッ、ゴェッホン!」
「クックックッ、こいつは大漁かもな。楽しみだぜ」
太満はそういって笑うと、大混乱のプールの方へ
同時多発的に現れた緑色のお面をかぶったネバーウェアたちのせいで、プールは大変な混乱におちいっていた。ネバーウェアたちの
これがSNSで
昨今ではこういったネバーウェアによる
しかし、それにしてもネバーウェアは、なぜ公衆の面前で
犯罪心理に
「えーと、ネバーウェアってのはですね、
以上が動画チャンネルでの解説であるが、私が非常に
この考え方は意外と身近にもあって、例えばであるが、「ウチら」という言葉は
「ウチら」といういい方自体はよく耳にするいい方だし、別にそれほど罪のあるいい方ではないかもしれない。ただ、「あちら側」との
話をネバーウェアの話に
先に線引きをしたのはどちらなのか。
実際に光合成犯罪の問題を論じる時にこの議論はよくあって、ニワトリが先か卵が先かという議論になりがちではあるのだが、私が考えるには、やはり社会が光合成人間を受け入れなかったのが先ではないだろうか。
私はドキドキ☆ゲリラプールinサマーのような、悪ふざけの
どうか皆さんに覚えておいてほしいことがある。私が市民プールを最高に楽しい思い出として覚えているように、ネバーウェアにも子どものころがあったのだ。子どもの
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