第五話 ATP能力 その二
音楽というものは、生活に
私はちょっとした用事があってバスに乗っていた。ほとんど乗客のいないバス。都会の
私はノイズキャンセリング機能
ノイズキャンセリングとは周囲の
音というものが空気の
周波数という音の数値化によって、音の高低の変化を曲線のグラフとして表すことができる。この曲線グラフを上下反転させると、元の音に対して「反対の音」が出来上がるのだが、この「反対の音」は元の音と同時に再生すると、反対の音がゆえに元の音が中和されてなくなったように聞こえるのだ。これがノイズキャンセリングという音を「消す」技術の大まかな
ノイズキャンセリング機能を
この技術によって私はバスに乗りながら外界から
ドラムがきざむビート。
オーイェー! ベースもだ!
様々な意欲が
テルミーザトゥルース! ユーセイ!
それは
カモン! レッツゴー!
さあ、それでは続けるとしようか!
「くっそヤベえことが起きてるかも。光成、聞こえるか?」
「なんだ?」
「
「なんだって? いつからだ?」
「わからんが、場所的にはさっきの音が聞こえなくなったあたりだ」
「まじかよ! なんかあったか!」
「そうらしい。どうする?」
「様子見にいくか」
「ゆうて、けっこう危ねえぜ? ネバーウェアが三人もいるかもしれねえんだ。
「そうだな……」
「もし俺だったら行かない。
「確かに、今回はかなりヤバそうだしな……」
「それな。
「よし、わかった。様子を見に行こう」
「ファ?」
「
「そうかよw、草! オッケー、くっそわかったぜw サポートはまかせとけ!」
「
道を引き返した光成であったが、あらかじめ仮面を
しばらく進むと道路に人が
「先生、主月先生、どうしたんですか? 聞こえますか?」
先生の反応はなかった。光成はしゃがんで先生をゆすりながら声をかけた。
「先生! 先生!」
そして、その時である。あたりのセミが
「来たか……」
「
「なに? ちょっと
さっきは一方向の音だけが聞こえなかったが、今度はすべての方向で音がしない。能力者との
するとその時である。立ち上がったせいか、光成は急に立ちくらみにおそわれた。あたりを警戒しながら回復を待ったが、立ちくらみは回復するどころかますますひどくなっていき、ついには立っていられないほどになった。
「光成、待たせたな。お前が見えるところについたぜ! って、お前、何やってんだ! 後ろにネバーウェアがいるぞ!」
「なんだって? ちょうど立ちくらみがして気づかなかった!」
「
「当たり前だ! お前が振り向くのと同時にヤツもお前の後ろに回ってんだ!
「どういうことだ?
光成はちらと
「テイクオフ!」
光成は
「いた!」
光成はネバーウェアの姿をとらえ、すばやく
「いいね! その仮面! そんなのは初めて見るよ! なかなかクールじゃないか!」
ウィッキュキュッスピンパイ〜ン!
「な、なんだ? この音は?」
「ボイパか! くっそウメえ!」
ボイパとはボイスパーカッションの略で、口を使ってドラムやベースなど楽器のような音を出すパフォーマンスのことをいう。
ズグズグボンボウン!
「OH! YEAH! 君も光合成人間だったのか! グレイトだよ! ベイビー! 速いね! いいよ! すごくいいよ! けど、
再びセミの鳴き声がやむ! するとボイパ男の姿も消えた!
「速い!」
「おい!
「マズい!」
光成はふらつきながらも、テイクオフした最高の速さでなんとかヤツを
「音がしないのが意外と
「お前の耳元に顔を近づけてるw。マジでキメえヤツだぜw。だが、めまいがするってのはどういうことだ? お前の感覚データを
「マジかよ!」
またボイパ男が素早く動いて姿を見失ってしまった! まったく気配がない。光成は背後に行ったと予想したものの、
「まためまいがきた! 最悪に気持ち悪いぜ……」
めまいはどんどんひどくなって立っていられなくなってきた。
「おい、
「オッケー、大体わかってきたw。どうも
「三半規管? 何だそれは?」
「両耳の
めまいはますますひどくなっていき、ついに光成はひざをついてしまった。
「もう限界だ! これ以上はマズい!」
光成は全力をふりしぼって移動した。しかし、体がよろめいてしまう。
「おい!
「スマン、スマンw。さっきもいったが、お前の感覚データはとっくに
「なんだって? もっと早くいってくれよ!」
「スマンw。でも見つかったわw。どうも耳の穴から風を
「なに?」
「めまいの検査でそういのがあるみたいだったw」
「そういうのって、どういうのだよ?」
「なんか、耳の穴からずっと空気を
「マジかよ? てことは、ヤツは
「そうだよw! くっそキメえんだけどw! ウケるw!」
「うわあ! マジかよ!」
「だが、安心しろw! こいつはATP能力じゃねえ! 熱いラーメンをふうふうやんだろ? やってることはあれと同じだ!」
「ヤバい! 来る! 今度は絶対に背後取られないぞ!」
今度はわざとめまい
「グレイト! 素晴らしい!」
シャキウィキパウン!
「君イイよ! なかなか速いね!」
ボイパ男は、また感心したように大げさなポーズをとった。
「ボイパうま過ぎてツボるw」
「
「確かにw」
「多分だが、ヤツは
ドンツッ、トトンツ、ピララリンドウィ〜ン!
「やるじゃないか!
またセミの鳴き声が止んだ! それと同時にヤツも動き出す! すると今度のヤツは、背後から息を
「アウチ!」
しかし、ダメージを受けたのはボイパ男の方だった! 光成は光合成シールドを張っていたのだ! またセミの
「痛え!
ドンスパッポッピ〜ン!
「OH! YEAH!
光合成シールド。それは光合成によって肉体を鉄のように
「アイノウ!
そして、再びセミたちが鳴き止む! 二人は目に見えぬほどの
「
確かにヤツは素早く動きながら
「音がしないのと何か関係ないか?
「ホントだw。独り言いってんのか? ウケるw。」
「
「やってるw。言葉を
光成は
「光成、仮説ができた。一つ試したいんだが、そうだな、その辺の土とかでいい……」
光成がめまい
「光成!
「くそ! 音がしないのがやっかいだ! 気配がしない! だが、お前の作戦はわかった! やってみる!」
光成はめまい
「オーノー! なんだそれは? それで目つぶしをするつもりなのか?」
キュッキュキュウィキ!
「そんな
セミが鳴き止む! ボイパ男が口パクしながら接近するのをかわし、光成は土を投げつけるフォームに入った。すると、ヤツは
「あぁっははははは! 外れちまったなあ!」
ボイパ男は
スポポボゥン、ドフウゥン!
「OH YEAH!
ズイキュキュ、キュル?
「な、なんだ? オーシット! テメェ何しやがった! 耳になんか入っちまったじゃねえか!」
ヤツは耳の穴に指をつっこみはじめた。
「耳ん中がガサガサうるせえぞ! くっそぉ、細けえ砂利みてえなのが入っちまって取れねえ!」
「光成! 今だ!」
「わかった!」
セミは鳴きやまない!
「ちくしょう! なんてことしやがんだ! これじゃ音が消せねえ! ハッ? そうか! テメェ、さっきのは目つぶしをねらってたんじゃなかったなあ? はじめから耳をねらってたのか! くっそぉ!
「
「ヤツの音を消す能力、それはイヤホンなんかに使われてるノイズキャンセリングという技術だ!」
「ノイズキャンセリング? なんだそれは?」
「音ってのは空気の
「ああ、テレビかなんかで聞いたことある気がする」
「小刻みに振動すると高い音で、逆にゆっくりだと低い音だ」
「そうなのか」
「そうらしい。そんで、高い音、低い音を反転した音をだせば、音が打ち消されて消えるらしい。しらんけどw」
「なんだって? そんなんで消えるのか? で、ヤツはどうやってるんだ?」
「今セミが鳴いてんだろ? それと反対の音をヤツはボイパで出してんだ」
「マジか! セミの反対の音ってどんな音だよ!」
「しらねえw、聞こえねえからなw」
「確かに。
「ノイズキャンセリングのイヤホンでは周囲の
「そうか! 耳にゴミが入ればガサガサうるさくて周囲の音が聞けなくなるってわけだな!」
「そうだ! これでヤツは音を消せない!
ボイパ男は耳をほじりながら
「くっそぉ、取れねえ! テメェ、よく気づいたなぁ!
ブンツクブンツク、ブウィ、ウィウィ、ボウン!
「そうだ! 簡単だ! YOU SAY! 簡単なんだよ!
ボイパ男は
「ヤツもぴえんだなw! これで
「ああ、お前のフォローのおかげだ!」
「それで、どうだ? ヤツの口の動き、しっかり見ただろう? 『ラーニング』できたか?」
「どうだろう? ヤツが
「
「わかった! 助かる!」
ボイパ男は何度も変化をつけて
「ちっくしょう! この
ボイパ男がここまで
「お、
「はっ、マズい!」
「おぉっ、かっ、ぐふぅぅう!」
ヤツはモロにくらって息ができず動けない!
「ぐおぉぉ……、くっ、くっそぉ……、ど、どういうことだ……? 音が……、音が消えたぞ?」
ボイパ男はよろめいてひざをついた。
「ハッ? テメェ、その口の動き、そ、そうか……、オメェ、ひょっとしてまさか、
スッチャカ、スクチャカ、スクシュクドビ〜ン!
光成は光合成を行うことによって物事を「見る」能力が極めて高くなる。
光成が初めてラーニングした能力は、植物の仮面を
光成が初めてラーニングした能力の持ち主、植物の仮面を被ったその光合成人間は女だった。黒い
つまり、光成が持つ元々のATP能力は「見る」能力だけであり、仮面を
ここで一つATP能力について説明をしておきたい。ATP能力というものは光合成人間であれば
明智光成の「見る」という能力。その能力は
ヒメジョオンの花束から伸びる一筋の光る剣。それはまさに光合成ブレードだった!
しかし、その剣は出力するエネルギーが安定していないのか、サクラ隊員の真っ直ぐに伸びるブレードとは
「ハッ? オメェ、そいつは光合成ブレードじゃないか……。オメェの能力は光合成シールドだけじゃなかったのか! なんてこった! こんなヤツ初めて見たぞ! そのうえ
光合成シールドで守りをかため、光合成ブレードで
ボイパ男には完全に勝った! しかし、忘れないでほしい! この桜並木には、スマホを持っているヤツと持っていないヤツを
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