■15『混戦』
爆破状況から鑑みて明確な殺意があり、飛行機内部からの犯行であることからアメリカ・ロシア政府に対するテロ行為、または他国の介入の可能性が高い。そして、機内に持ち込むにしては有り得ない爆発威力から『能力者』による犯行と判断された。
そこで米国は
ロシア側も同様、より詳細な情報収集のため部隊を配備する。
現世界情勢・緊急性の高さから当作戦は秘密裏に行われ、両者はお互いの存在を知らず任務を実施している。
そのため米国・ロシア双方は政治的背景の可能性を考慮して部隊作戦内容を「敵の殲滅」と「情報の収集」の2つに搾り「敵」の判断を現場に一任していた。
その結果────────。
「きゃあッ!」
「シャーレ頭を低くして!」
事態は銃弾の雨あられ、少しでも立とうものなら天国への片道切符が強制執行。
位置関係として米兵とロシア兵の間にいた3人は伏せた状態から身動きが取れない。
しかし妙なのは米兵の能力。奴らはロシア兵と違い、「再生」ではなく、そもそも被弾した傷がまるで「無かった」ように消えている。
「やなり奴らも『能力者』だナ」
「ロシア兵は吸血鬼っぽいけどアッチは何?」
「分かりませんが、僕達は『不死身の兵』に囲まれサンドイッチされている
「その冗談笑えないから止めて」
膠着状態の中で手榴弾も飛び交い戦闘は激化、3人は這いずりながらなんとか避ける。
「不死身の兵士なんか相手にしてられん、この混戦に乗じて逃げル」
凛風は白い迷彩シートを3つ作り出し、それぞれに手渡す。体をシートで覆い隠しながら
戦闘のど真ん中から2〜3m離れた所まで移動に成功したが安全圏までは更に20m以上は必要。
「なんでこんなことに………?」
「おそらく飛行機爆破が原因でしょうね」
「心の在り方は世界を変えル。気を強く持テ」
「原因が人の言葉喋ってますね」
ゆっくりとだが、確実に離れていく距離。稼いだその長さが安全をより高いものにする。奴らは僕達が消えたことに気づいているが、目の前にいる兵士への対応で索敵することが出来ない。
あとはこのまま刺激せず逃げ切れば良い。
と、3人は考えていた。
それはこの場において最も合理的な考えであり、最適解であった。しかし、合理的な行動はたった一つの綻びで全てが崩れ去る。
そう、たった一つの見落としで────。
「おーい! 鹿獲ってきたヨ〜ン」
「穫れたて新鮮な肉アルヨ!」
「「なんだ貴様ら!?」」
アホ面で銃弾飛び交う戦地で、獲ってきた鹿を抱えて大声でコチラに叫ぶバカ二人。
しかも迷彩シートで隠している姿を気配で探り、真っ直ぐコチラに向かって歩いて来ている。
二人は体術を駆使し銃弾をサッサッと避けながら弾幕をパスして3つの盛り上がった雪の前に立つ。
「あいつ
「アイヤー、なんか銃口がコッチに向いてるネ」
ロシア・アメリカ兵共は意識を二人に向けたことで、先ほどから話しかけている足元の膨らみに気がつく。睨み合っていた両者は共通の敵が現れたことによって、手を止めて同じ言葉を叫び始める。
「そこにいる5人! 今すぐ手を後ろに回して姿を表わせ!!」
「そもそも貴様らは何者だ!!?」
「5秒数える! それまでに全員姿を出さなければ撃つ!!」
雪に紛れていた3人は観念したのかゆっくりと、シートを剥いで立ち上がる。
混戦によって避けられていたはずの銃口達は、何故かコチラに全て向いている。
喜怒哀楽では表わせない表情で立ち上がった3人は、目の前のバカ二人に対し一言。
「「「サンドイッチって知ってる?」」」
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