第19話 神様とか?
「消されちゃう?」さすがの
「最初から説明するね」
「どうぞ」
「ありがとう」礼を言ってから、
良い幽霊、悪い幽霊、とホワイトボードに文字が書かれる。どうやらボードで示しながら説明してくれるようだ。これならご主人も理解できるだろう。たぶん。
「それで……良い幽霊がこの学校に最初に住み着いてたんだ。私もそのうち一人」
「へぇ……どれくらいからいるの?」
「先輩幽霊はいつからいるんだろう……ちょっと見当もつかないけど、私は5年前からいるよ」
「あ、先輩だったか」
「それを先輩っていうのかな? まぁ別に同い年くらいだと認識しておいてもらえばいいよ」
同い年……そういえば体が
「そんでね……別に幽霊だって生きてる人間に危害を加えるつもりなんてないよ。実際、この学校で今まで幽霊騒ぎはなかったでしょ?」
「私の知る限りはね」
「そう。私たち幽霊は生きてる人間にちょっかいを出したらダメなの。それがルール。まぁたまに間違えて物を動かしちゃったりして、怒られるけどね」
なるほど。それがポルターガイストの正体か。
「はい」
「消滅する」即答してから、「というのが最悪の場合の話」
「では、最悪じゃない場合はどうなるのでしょう」
「しこたま怒られるね」怒られるだけで済むらしい。「まぁわざと人間に関わったわけじゃないなら、大抵は怒られるだけで済む。意図的に何度も人間界にかかわると、消滅させられる」
「誰に、ですか?」
「さぁ? 神様、じゃない? とにかく、私たちより上位の存在がいて、その人が私たち幽霊を管理してるの」
神様かもしれないし、閻魔大王かもしれない。魔王かもしれないし、もしかしたらそれも幽霊なのかもしれない。
そこで、
なんにせよ、幽霊たちにも管理者がいるということだ。死してなお完璧に自由にはなれないらしい。
それも当然か。死んで自由になれるのであれば、死を望む人間が増えてしまう。そうなれば……困るからな。
「まぁとりあえず……私たち幽霊は管理されながらも、一応生きてきた……って死んでるんだけど……とにかく、幽霊として生活してきたんだ。人間に迷惑をかけずに、ね」
「なるほどねぇ」
「そう。人間と一緒さ」
そうかもしれない。人間も幽霊も、魔物も同じだ。組織があって仲間がいて仲間外れがいて、誰かが得をして誰かが貧乏くじを引く。どの世界でも同じだ。
「ところが一週間ほど前……急にこの学校に悪霊が住み着き始めた。原因はおそらく……破壊神とやらが蘇ったことだろうね」
「シックザール、だね」そこで、
「違うよ。私たちにそんな力はない。破壊神ほどの存在をあれほどあっさり倒せるのなら……そうだね、もっと圧倒的な力を持った存在が倒してるはず」
「もっと圧倒的か……神様とか?」
「そうかも」
魔王だ。まぁ別に誰が倒したことになっても良いけれど。猫の姿になってまで地位や名声を手に入れようとは思わない。
「まぁ原因は何でもいいんだけど……とにかく、一週間前から悪霊が現れ始めた。そして、その悪霊が引き起こした問題行動は会長も知っての通り」
最初に
「実は被害は生きている人たちだけじゃなくてね」少し、
「消滅……幽霊を消滅させることは、神様以外にも可能なの?」
「うん。人間だって人間同士で殺し合うでしょ? 幽霊だって幽霊同士で殺し合うこともできる。あんまりやり過ぎると、管理者に消されるけどね」
幽霊の世界も大変なんだな。私は死んでも幽霊になんかなりたくない。そのまま成仏させてくれ。いや……ご主人が心配だな……ちょっとくらいなら幽霊として現世に残ってもいいだろうか。
「私たちも悪霊を止めようと動いてたんだけどね……どうにも悪霊たちのほうが勢力が大きいみたいで。だから、生きている人間たちの力を借りようとしてるんだ。本当はそんなことしたらダメなんだけどね」
「そうなの? こうやって助けを求めてくれたら、いつでも助けるけれど」
「ありがとう」素直に感謝を伝えられる人のようだった。「でもね、さっきも言ったけれど、本来幽霊は生きている人に干渉したらダメなんだ。消滅しちゃうからね」
「……ふむ……」
「もちろん。私は正義の味方だからね」などとうそぶいてから、
「なら……どうして? こうやって人間に干渉したら消滅しちゃうんだよね」
「本来はそう。だけど今はなぜか、人間に関わっても消滅する幽霊がいなくなっている」
「ほう……つまりそれは……」
「そう」
「そうだね」同意してから、「あるいは……管理者が首謀者そのものか」
「その可能性もあるねぇ……だとしたら、ボクには解決方法がわからない」
「……ふむ……なかなか厄介なことになってるみたいだね……」
ご主人は……話についていけてるだろうか?
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