第18話 カッコいいし
それこそ幽霊みたいな声だった。覇気がなくて抑揚がない。息のような声。部屋が静かでなければ、聞き逃してしまうであろう声量。
一瞬、私は誰が喋ったのかわからなかった。はじめて聞く声だったし、今の状況なら幽霊の声でもおかしくない。
声の主に気づいたのは、
「
「はい」とても小さな声だったが、たしかに
「ふむ……」
「……」ご主人は幽霊の声を聞いてから、「ないって言ってます」
「……まぁ悪意があるなら、了承なんて得ようとしないよね。勝手に体を乗っ取れば良い話」
それもそうだ。もしも幽霊が
今まで幽霊側から危害が加えられていないということは、おそらく敵意はないのだろう。
しかしそれでも
「大丈夫」
圧倒的な自信だった。幽霊に体を奪われても、自分なら最終的になんとかできると確信しているようだった。そして、それに見合う実力もあるのかもしれない。
とにかく、
「よし……じゃあ
「了解」そこで
そういった。幽霊に『自分の体を使っていい』という意思を伝えたのだろう。
しばらく、沈黙があった。体を乗っ取るなんて嘘なのかと疑いかけた瞬間、
「お……」不意に、
どうやら
「では、改めましてはじめまして」いきなり
「あれ……ボクの名前は何だっけ?」どうやら名前が思い出せないらしい。しかし、特に気にした様子はない。「まぁいいか。じゃあボクのことは……そうだね、
「
「カッコいいから」シンプルな理由だった。これでは反論などできない。「まぁ別に、名前なんて個体が識別できればいいんだよ。
「いや……
たしかにカッコいい。
「とにかく、よろしくね」
「時間がない?」
「そうそう。あとで詳しく説明させてもらうけど……最近、この学校には悪霊が住み着いてんの。それをなんとかしないと、生きてる人間も幽霊も、みーんな消されちゃうかも」
どうやら、事は私が思っていた以上に切迫していたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。