第16話 シャンプーが一緒なんですかね
「じゃあ、さっそく幽霊探しに協力してもらってもいいかな?」
「はい」
「ありがとう」
「じゃあ、ちょっと書類にサインしてもらおうかな」
「書類、ですか?」
「生徒会メンバー以外に協力してもらうときは、ある程度の書類制作が必要なの。まぁ別に書類制作をサボったところでバレたりはしないんだけどね」
まだご主人は生徒会メンバーではないからな。これから生徒会にはいるのだろうけど、いろいろ手続きが必要だろう。だから、まだご主人は部外者だ。部外者を働かせるとなると、いろいろと面倒なのは私も知っている。
あとから報酬を付け加えてきたり、途中で逃げ出したり、裏切ったり……部外者を頼ると大抵は良いことにならない。かといって身内だけでは限界がある。部外者をチームに入れるなら、トップが完璧に統率しないといけないのだ。
トップに立つものは大変だよな、と勝手に
ご主人が書類を制作している間、
「ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさん」
「ニャー。ニャオ(私は見えん。他の個体は知らん)」
「ふふっ……かわいいなぁ……」
「おやおや……」ご主人の書類制作を見守っていた
そう言って、
いきなり撫でるのではなく、ちゃんと手の匂いを嗅がせてから距離感を詰めてくれるようだった。こうやって配慮をしてくれる人間には撫でられてやってもいい。
「ニャー、ニャーン(いいぞ。撫でてみろ)」
「おや、お許しをいただけたのかな?」
私の言葉がわかったわけではないだろうが、奇跡的に会話が成立していた。まぁそんな偶然もある。
そのまま、
しかし撫でるのは
「喜んでくれてるのかな?」
「にゃー(うむ)」
悪くない。おもわず顔がほころんでしまう。いくら魔王とは言え、猫の本能には抗えないようだった。
「ニャ……(しかし……)」
考えてみれば、私は相当なハーレム状態なのでは? 私を飼っているご主人も相当レベルの美少女だし、
なんだか意識すると変な気分だ。もちろん性的な感情ではないが、モヤモヤすることに変わりはない。
というわけで、私は閑古鳥の撫でる手から離れて、窓際に飛び乗った。
「ありゃ……フラれちゃった」
「はい」
ご主人が作成した書類を
「達筆だねぇ……」
そう、書類の文字は達筆だった。流麗で、それでいて読みやすい。偉人の書物にでもありそうな力強い字だった。ご主人のことだからミミズみたいなヒョロヒョロの字を書くと思っていた。
「書道はやったことないです」
「へぇ……じゃあ、なんでそんなにうまいんだろう」それから、
「はぁ……」なんとも曖昧な返事をする
「十分うまいよ。
「……?」
「そうそう。字のうまさ以外どこが似てるって明確に言えるわけじゃないけど……なんとなく、同じ匂いがする」
「匂いですか」
ピンときていない様子の
「シャンプーが一緒なんですかね」
「そうなのかな……」
「その時に安売りされてたやつです」
「あ、じゃあ私と一緒だ」
とくにシャンプーに対するこだわりはないらしい。なのに2人ともサラサラヘアーだ。世の中にはシャンプーを選んでも、サラサラになりたくてもなれない人もいるというのに。
それにしても……ご主人、自分のシャンプーにはこだわりがないんだな。私のシャンプーは毎回同じものだったので、こだわりがあるのだと思っていた。
その後、少しばかり3人はシャンプー談義で盛り上がっていた。気になるシャンプーの名前が出てきたところで、私には選択権がない。
早く悪霊とやらを拝みに行こうぜ。ハーレムに近い状態なのは別に良いが、ガールズトークにはついていけん。
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