第15話 飼育係とかにすればいい

「生徒会メンバー全員で動く案もあったんだけど……」閑古鳥かんこどり会長の話は続く。「全員でぞろぞろ動いても効率悪いし……最低でも2つのグループには別れたかった。でも、幽霊が見えるのは幽見かすみさんしかいない」

「だから私が呼ばれたんですね」


 珍しく、ご主人が的を射た意見を言う。このご主人がまともなこと言い出すと、逆に不安だ。熱でもあるのではないだろうか。


「そうそう。生徒会の副会長と会計の人が、もう1つのグループになってるよ。今も幽霊の調査をしてくれてる」


 なるほど。だから神代じんだい幽見かすみがいなかったのか。そして残された閑古鳥かんこどり会長とゆうは幽霊が見えないから、他に霊感がある人を探していたわけだ。

 その霊感があるやつ、というのがご主人だった。他にいなかったのだろうか。このご主人で大丈夫だろうか。毎度のことながら不安しかない。


「もしよかったらなんだけど……問題解決に協力してほしいんだ。もちろん任意だよ。当然、私たちが全力で守るけれど、危険がないとは言い切れないからね」


 悪霊がいるのであれば、ご主人に危険が伴うこともあるだろう。私だって幽霊相手に戦えるとは限らない。今回ばかりは、私がいるから安全とも断言できんな。これは少し気合を入れなければ。


「報酬がほしいなら言ってね」閑古鳥かんこどり会長は悪い笑顔になって、「経費で落としちゃうよ。協力者への謝礼に使うなら、文句は出ないでしょ」


 冗談なのか、本気でやるつもりなのか……わからん。この閑古鳥かんこどり会長もポーカーフェイスなので、いまいち感情が読み取れない。本当に経費で落としそうな気もするし、経費で落としたと言いながら自腹を切っている可能性もある。


 まぁ、私には関係のない話だが。経費の出どころが生徒会長だろうが学校側だろうがどうでもいい。


「では……たまに生徒会室に遊びに来てもよろしいでしょうか?」


 突然ご主人はそんな事を言った。生徒会室に遊びに来ることを報酬にするつもりか?


「それはかまわないけれど……別に報酬として求めなくても、自由に遊びに来てもいいんだよ? 立て込んでるときは遠慮してもらうこともあるかもしれないけれど、そんなに忙しい時のほうが珍しいし」

「では、報酬はそれでお願いします」


 生徒会室への入室許可。もともと入室禁止ではない場所への入室許可。相変わらずご主人の考えることはよくわからん。唯一の友達であるゆうと会いたいのか? そんなことを考えるやつだっただろうか。


「ふーむ……」閑古鳥かんこどり会長もご主人の言葉の真意を測りかねているようだったが、やがて妙案を思いついたように、「そうだ。せっかくだし、入っちゃう?」

「……?」

「生徒会に」

「ニャー(いや、やめとけよ)」


 こんなやつを生徒会に入れてどうする。めちゃくちゃになるぞ。なんで勧誘なんかするんだ。気でも触れたか。


 それとも……目的は問題児の監視だろうか。その理由で糸谷いとだにも生徒会にいるのだろうか。だとするならば、糸谷いとだにも相当な問題児だった可能性がある。ご主人レベルの問題児がいるとも思えないが、その可能性も否定できない。


「え……?」さすがのご主人も驚いていて、「でも……私が生徒会に入っても……」

「籍を置くだけでもいいからさ。そうしたら、生徒会室に入りやすいでしょ?」

「……なんの仕事もできませんけど……」

「別にいいよ。役職とかも……そうだね、飼育係とかにすればいい」

「生徒会で、そんな役職が通りますか?」

「戦闘員がOKなら行けると思うよ」


 だろうな。この学校……かなりルールがゆるい学校なのは知っていたが、戦闘員がまかり通るほど自由だとは思っていなかった。生徒会の戦闘員……生徒会の飼育係がまともに見える。全国の学校を探せば生徒会に飼育係くらいいそうだ。戦闘員はいないだろうけど。


 本当になんで糸谷いとだには戦闘員なんて役職になったんだ……本当に戦闘員なのか、問題児を生徒会に引き込むために作られた役職なのか……


 そういえば私は未だに糸谷いとだにの声も聞いたことがないな。ずっとこの生徒会室であやとりに興じている姿しか見たことがない。強者の匂いはするが、果たして……


 ……生徒会で一番強いのは誰なんだろうな。こいつらのMTYランキングとやらはいくらなのだろう。

 そもそもMTYランキングとは何なのか……何を示しているランキングなのだろうか……


 猫の状態だと情報が集めづらい。まぁ仕方がないとはいえ、少しばかり不便だな。

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