第9話 戦闘員
私が床の上で適当に昼寝をしていると、
「ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさん。ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさん」
呪文が聞こえてきた。魔王でも復活させる儀式かと思ったが、なんのことはない。私の名前だ。誰がこんな長い名前を連呼しているのかと思っていると、
「起きて。そろそろ移動するよ」目を開けると、
「ニャ(いや……気にするな……)」
「よし。それじゃあ行こうか」
「これから生徒会室にいかないといけないんだ」
「にゃー(別に寂しくはないけどな)」
「ふふ……ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさんはお利口さんだね。私も猫を飼いたいんだけど……お父さんが許してくれなくて。ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさんみたいな猫がいてくれたら、きっと毎日楽しいのに」
「ニャオ(私も
「……返事をしてくれてるのかな? もしかして、ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさんは人間の言葉がわかったりして……って、そんなわけないよね」
「ニャー(人間の言葉くらい認識できているぞ)」
「ケントニス・ノレッジ・コネサンス・シュテルケ・ポテンツァ・サジェス・ウィズダム・ヴィスハイト・ヴィゴーレ・マハト・フォルスさんはご主人様のこと好き?」
なんで毎回フルネームで呼ぶの? なんで呼べるの? なんで噛まないの? なんで覚えてられるんだ? 出会った頃のご主人かよ。意味がわからん。なんだこいつ。ご主人のこと好きかって? 嫌いではないよ。
わからん……この
私が混乱しているうちに、
生徒会室、と書かれた扉を開けて、
生徒会室の中には4人の男女がいた。3人が女子で、1人が男子。
……こいつら……なかなかできるな。戦闘力はかなり高そうだ。
「すいません。少し遅れました」
「いやいや。まだ集合時間の5分前だよ」なんとも寛容そうな雰囲気を醸し出している女子が、「でも、
「いえ……ちょっと先生と話し込んでしまって……」
「ならば良し」その女子は立ち上がって、「
「……
「いいからいいから。お座りなさいな」
そう言ってティーポットの前に移動したのが、
背はかなり高め。栗色の長い髪。モデルみたいなスタイル。ちょっとばかり会長と呼ばれるには威厳が足りないかもしれないが、逆に場の空気を緩ませることは得意らしい。優しそうな笑顔が目につく女子。
会長……つまり生徒会長か。
生徒会長といえば、生徒のトップだ。たしかにこの
……いや……今は私の生きた時代とは違うのだ。トップに威厳や恐怖が求められた時代とは違うのだろう。寛容で誰かを許すことができる人材こそがトップにふさわしいのかもしれない。
テーブルを見ると、それぞれの男女の前に飲み物が置いてあった。おそらくそのすべてを会長が用意したのだろう。なんとも世話焼きの会長であるようだった。
「
「はい。
「いや、いいよ」こちらもなんとも威厳のない男だった。「猫がいると癒しになるからね」
「おや副会長」
「……そういう反応に困る話題はやめてください……」
「悪かったよ」
そう言って、
結構ガタイの良い男なんだがな……戦闘力は生徒会の中でもかなり高そうだ。背の高さは平均的だが、それ以上に大きく見える。この男が副会長か……
そこでふと生徒会室の壁を見てみると、なにやら名前と役職が書かれたボードがあった。どうやら生徒会メンバーそれぞれの役職がわかるらしい。
『生徒会長
なんとも商売に向いてなさそうな名前だった。しかし良い名前だ。妖しい華……私好みの名前だ。
『副会長
カミシロ……じゃなくてジンダイか。最近私はこの世界の漢字というものを学び始めたが、まだこの辺の名字の読み方が安定しない。フリガナがあってくれて助かった。
『書記
これがご主人の友達、
『会計
端の方に座っている古風な女子生徒のことだろう。なんとなく名前のイメージと合っている。
『戦闘員
なんで生徒会に戦闘員がいるんだよ。どの場面で役に立つんだよ。生徒会の役職である必要がないっだろう。
とにかく……背の高い女性で生徒会長なのが
ガタイが良くて穏やかそうなのが副会長の
そして
それから……おそらく髪の長い古風……というか和風な感じの大和撫子が
最後に……なんとも役職が浮いている戦闘員の
ともかく……これが生徒会メンバーか……なんとも頼りなさそうだ。いや……違うな。時代が流れただけだろう。私の時代とは違うのだ。これが平和な世の中なのだ。
時の流れというのは……なんとも言葉では言い表せない感覚を抱かせる。
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