第63話 女将軍出陣
そして、僕たち《セネリアル州軍》と《革命軍》の戦いは第二幕を迎える。
舞台は《プテラーム
「《ハモリアル平原》は《レナンディ》も含めた北領に広がる大平原だからね。さすがに障害物が何もないただっ広い土地にノコノコと出ていくのは自殺行為だから、この《セネリアル州》に続く山岳地帯との境界線に
僕のその説明に息を
今、会議室には《
ちなみに、この場に不在なのが《山の民》の族長の息子であるフォルティスとメイリス将軍で、フォルティスは《ハモリアル平原》入口の陣構築に出ており、将軍は
「というわけで、僕たちも全軍を率いて急いで出陣します。《プテラーム城砦》には最低限の守備兵を残すだけで問題ありません」
集まった全員が一斉に
今回は回復班のプリーシアたちも後方部隊として同行する。
「砦に篭もっていても、前線の部隊についていっても、ノクト様たちが負けた段階で終わりという点は変わりありません」
穏やかな口調でサラッとキツめな言葉を口にするプリーシア。
確かに砦にいたとしても、僕たちの状況が
だったら、後方部隊に同行して《神聖術》で傷ついた兵士たちをひとりでも助けられればと主張したのだ。
正直、僕は悩んだ。
だが、最終的にフロースが背中を押してくれた。
「この戦える美少女メイドフロースがプリーシアちゃんたちをお守りします。プリーシアちゃんたちの、みんなの役に立ちたいという気持ち、痛いほどわかりますから」
「いざとなったら、ノクト様たちを見捨て恥も外聞も投げ捨てて一目散に逃げますので」とフロースは笑う。
フロースというメイド少女も、いつの間にか、とても頼りがいのある存在になっていた。調子に乗るから本人の前では絶対に言わないけど。
僕とフロース、そして今は生死不明、行方不明の元《トルーナ王国》王子のシラリス。
この三人は赤ん坊の頃から一緒に育ってきた。
その僕の想いに感づいたのか、少女メイドは僕の背中をパシッと叩いた。
「大丈夫ですよ、シラリス様もどこかでこの戦いの
そして、最後にこう付け加えるのも忘れなかった。
「この一連の戦いが終わったら、またシラリス様捜索の旅に出ますので、お
◇◆◇
《トルーナ王国》北領、その
今、《レナンディ》は
「ローザ将軍に
《レナンディ》の
その先には、
隣に顔の半分以上を覆う仮面をつけた金髪の少年騎士を
明るい茶色の髪を長く伸ばした美少女といった外見と、ゴツゴツとした甲冑のイメージがアンバランスな印象だ。
そのローザが口を開いた。
「状況の説明を」
「はっ!」
騎士たちの中から一人が進み出て、手にした書類に目を落としつつ、朗々とした声で報告する。
「現在、敵軍は《ハモリアル平原》の出口付近に陣を敷き、兵力を集中させている模様。また、別働隊が捕虜返還を申し出て、《レナンディ》から数日の距離に待機しております」
「捕虜か……」
ローザは「チッ」と小さく舌打ちをした。
「ジェンマの力なら上手く使えたかもしれない──いや、結局時間がかかるし、この状況では役に立たないか」
「捕虜どもには、すでに死刑判決が下っております」
仮面の少年が、そっとローザに
「わかっている」
スウッと息を吸い込んでから、ローザは声を張り上げた。
「全員出陣だ! まずは敵の別働隊を叩いて血祭りに上げる! もちろん、捕虜たちにも容赦することはない、正義の戦いから逃げだそうとした卑怯者たちを、我々の手で裁くのだ!」
「「「ハッ!!」」」
大広間に騎士たちの返事が響き渡る。
○
こうして、女将軍ローザ率いる《革命軍》は《レナンディ》を進発し、捕虜を抱えているメイリス将軍率いる《セネリアル州軍》別働隊へと一直線に突き進んでいった。
もちろん、メイリス将軍はその状況を確認し、事態を悟った。
「捕虜は置いて全軍急速撤退、全力で逃げろ!」
事前に打ち合わせ済みだったのか、別働隊は整然と撤退行動を開始する。
そして、いざ逃げ出すとなると、ものすごい勢いで本隊が構築している陣へと昼夜問わずに駆けだしていく。
メイリス将軍が念を押す。
「陣の構築を邪魔しないように西側から迂回して、そのまま陣の防衛にあたるぞ!」
「「「おうっ!」」」
兵士たちの明確な応答が返ってくる。
これも最初から決められていた流れだったのだ。
一方、混乱の極みに陥ったのが、残された捕虜たちである。
最初は《革命軍》が自分たちを救出に来てくれたのだと思っていた。
だが、その期待は裏切られた。
勢いを落とさず突っ込んできた《革命軍》は、そのスピードを落とさずに捕虜たちの一団へと突っ込み、通りすがりに左右へと槍や剣を振るい捕虜たちを容赦なく
「うわぁっ、逃げろ!」
蜘蛛の子を散らすように捕虜たちもあちこちへ逃げ出していく。
そして、そのうちの大半は、何かを決心したかのようにメイリス将軍の別働部隊のあとを追っていった。
ローザ将軍は手にした剣を掲げて、味方の騎士たちを
「敵は一戦もせずに逃げ出したぞ!
「「「おおおおおーーーっっ!!」」」
そんな中、女将軍の斜め後ろで馬を走らせる金髪の仮面の少年の呟きは、誰の耳にも届かなかった。
「単純すぎる、っていうかバッカじゃないの? 敵がただ陣を作って
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