第62話 動き出す兄

「おい、お前なんでそんなところにいるんだよ!」


 僕は鏡に話しかけるが、香里奈に聞こえるはずはない。何かに追われているのか、スマホ片手に走っている。


 なぜ香里奈が鏡の異世界にいるのかわからないが、間違って入ったのなら危ない。


 家を出た瞬間にシズカがいるため、出会った瞬間に僕ではないと気づいて攻撃するかもしれない。


 僕は鏡に触れるといつも通り体は通っていく。


【キャラクタークリエイトをしてください!】


――――――――――――――――――――


《ユーザー》

[名前] 駒田健こまだたける

[種族] 人間/男/童貞

[年齢] 17歳

[身長] 181cm

[体重] 65kg

[チン長] 最大7cm


《ステータス》

駒田 健 Lv.21

[能力値] ポイント0

HP体力 40

MP魔力 17

STR物理攻撃力 33

INT魔法攻撃力 0

DEF物理防御力 23 (+3)

RES魔法防御力 0

DEX器用さ 20

AGI素早さ 28

LUK 11 (+1)

[固有スキル] キャラクタークリエイト

[スキル] 逃走、急所突き、合成、短剣術、反映

[称号] ホーンラビットの殺戮者

    幸運の持ち主

[テイム] シズカ(種族:ホブゴブリン)


――――――――――――――――――――


 スキル:反映によるシズカの影響も含めて、足りないと感じたDEF物理防御力に+3ポイント振ることにした。


 それにしてもチン長に変化がないことが残念だ。体のサイズに合わない小ぶりな息子もいつか成長することを願う。


【本日のクエストはイーヴィルアイの討伐です】


――――――――――――――――――――


【デイリークエスト】

[クエスト名] イーヴィルアイの討伐

[討伐数] 10体

[制限時間] 5時間


――――――――――――――――――――


 聞いたことない名前に僕は戸惑う。"アイ"って名前に付くぐらいだから可愛らしい見た目をしているのだろう。


 静香と愛ちゃんって良いコンビになりそうだ。


 僕は武器を装備しようと、下駄箱に置いてある装備を見て迷っていた。一度ゴブリンの棍棒を持つと、振り回せなかった棍棒が扱えるようになっていた。


 ただ、スキルのことを考えるとトングを使った方が短剣術が発動するため有利に戦えるかもしれない。


「今回はトングにして……いや、ここは合成させるぞ!」


 この間報酬でもらった15万円のうち10万円を使うことにした。


「合成させるアイテムはこれとこれだ!」


 右手にホーンラビットのトング。


 そして、左手にもホーンラビットのトング。


 前回報酬でホーンラビットのトングを2つ手に入れたのだ。


 両手に持っていたトングは光の粒子となり、少しずつ形を変えていく。どこか尖っている見た目は変わらないが、新しい装備に胸を躍らせた。


――――――――――――――――――――


[装備品] ホーンラビットの責手裏剣(武器)

効果 DEX器用さ +15

   スキル:回帰

説明 ホーンラビットの角でできた責手裏剣。魔力を通すことで戻ってくる責め手裏剣。掴むところを間違えると腕に穴が開くかも?


――――――――――――――――――――


 完成したのはトングの持ち手同士がくっついて、十字になった手裏剣だった。しかも、大きさ自体がトングの倍以上はある。


「魔力が使えないと戻ってこないのか……?」


 初めてスキルが付与された武器だが、明らかに使いこなせる感じがしない。


 それでもゴブリンの棍棒よりは振り回しやすいため、いざとなったら投げれば良いのだろう。


 僕が扉を開けるとそこにはやつがいた。


「グギャ!」


 ニヤリと笑うシズカは待っていたのか、金棒を担いで仁王立ちしていた。予測していたら特に怖さも感じない。


「おい、妹を見ていないか?」


「グギャ?」


 シズカも香里奈を見ていないのか、首を傾げている。誰かが出てきたらシズカなら気づくはずが、香里奈は見つかることもなく外に出た。


 何が起こるかわからない異世界で香里奈は一人迷子になっているのだろう。


 そう思うと胸が強く押しつぶされそうだ。


「兄が妹を助けないで何やっているんだ!」


 昔の気持ちが沸々と湧き出す。あの時の僕は香里奈を守るために必死だった。それは今も変わらない。


 僕は香里奈を探すために走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る