第16話 幸運の持ち主
目を閉じてからどれくらい時間が経過したのだろう。体に痛みを感じないのは薬草による影響なのか。それともすでに死んでいるからだろうか。
わからないことばかりで僕の頭は混乱していた。
ゆっくりと目を開けると、赤い瞳が地面に転がっていた。ゴブリン達は横たわって僕の顔を見ていた。
【デイリークエストをクリアしました】
脳内に聞こえてるデジタル音に僕はまだ生きていたんだと実感する。なぜ、僕は死なずに生き残っているのだろうか。
時間が経過したからだろうか、空も少し明るくなっていた。
僕は立ち上がると視界に僅かに点滅しているものに気づく。
「信号機がある」
少し明るくなったから気づいたのか。それとも必死に走っていて目に入っていなかったのか。
香里奈は以前、勝手に電気が点くと言っていた。それは僕が鏡の中から家の電気を点けていた。
ここは信号機がある横断歩道、現実世界とリンクしていると考えれば、何も見えないが車が通っていることになる。
ふとさっき足元が濡れたことを思い出す。
現実世界とリンクしていれば、足元に何がかかったのか。靴の臭いを嗅ぐと、おしっこのような悪臭を感じる。
「電柱に居たからマーキングされたのか」
きっと犬か猫にマーキングされたのだろう。これで鏡の世界と現実世界がリンクしているのがわかった。
ただ、車が通っているのかもわからない状態で渡ると、僕もゴブリンのようになってしまうだろう。
横断歩道を通らないように、近くにある歩道橋まで歩くことにした。
ゴブリンを探しながら、歩くが赤い瞳が光ることはなかった。何者かに倒されたのだろうか。それとも元々轢かれたゴブリンだけが存在するのかは僕にはわからない。
そもそも今までいたホーンラビットはどこに行ったのか。
今回はどうにかゴブリンを倒すことができたが、次に鏡の世界に来た時に武器がないと倒せないだろう。
今は感じない肋骨の痛みがズキズキと響くような気がした。
迂回して家に着くと普段と変わらない様子にどこか安心した。戻りたくないと思っていた現実世界がどこか恋しいと思ってしまう。
僕は鏡にそっと手を触れる。
【デイリークエストクリアに伴いステータスポイントがユーザーに反映されます。身長+3cm増加しました】
どうやら今回は身長が少し伸びたようだ。身長が伸びれば少しは見た目も良くなるだろう。
【特別報酬として称号幸運の持ち主を手に入れた】
新しい称号として"幸運の持ち主"を手に入れたが、ゴブリンの交通事故のことを言っているのだろう。
少しタイミングを間違えていたら、今頃"不運の持ち主"か生きては帰って来れなかっただろう。
【報酬としてゴブリンの首飾りを手に入れた】
僕はステータスを確認して現実世界に戻った。
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《ユーザー》
[名前]
[種族] 人間/男/童貞
[年齢] 17歳
[身長] 164cm
[体重] 68kg
[
《ステータス》
駒田 健 Lv.7
[能力値] ポイント0
[固有スキル] キャラクタークリエイト
[スキル] なし
[称号] ホーンラビットの殺戮者
幸運の持ち主
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