焦れ焦れ
家に帰ってきた私は、今日のお礼をメッセージで雪音に伝える。
例え雪音を依存させるために距離を置いたり計画を立てたりしても、一日中デートに付き合ってくれたのだから、それに対するお礼を欠いてはいけない。親しき仲にも礼儀ありである。
雪音にメッセージ送った後は少し休んでご飯を食べ、お風呂に入る。その後は眠くなるまでスマホでゲームをしたり配信を見て過ごす。たまに雪音からメッセージが来るが、寝る前までは返信をしない。
少し眠くなってきたので時計を見ると、12時を少し過ぎたあたりだったので、明日は昼までゆっくりと寝てだらだら過ごす事に決め、私は雪音に『おやすみ』とメッセージを送り寝る事にした。
日曜日は特に何かするという事もなく、お昼まで寝て、起きたらゲームをしたり動画を見たりしながら一日を終える。
そして月曜日。今日からいよいよ、私の計画は第3段階に入る。
それを実行に移すには、私が雪音の家に行くか、雪音が私の家に来なければならない。
私の家は母親がいつもいるから、途中で邪魔が入る可能性がある。
なので私は、さっそく雪音に今日家に行って良いかをメッセージで尋ねる事にした。
『雪音、今日家に遊びに行ってもいい?』
『いいけど、両親も仕事でいないし、大したおもてなしできないよ?』
『大丈夫。なら、今日行くからよろしくね』
『わかった』
雪音の両親は共働きのため、私たちが家に帰る頃はまだ帰ってきていない。その辺りの情報はあらかじめ聞いていたので、計画を実行に移すには好都合だった。
雪音の家に行くことが決まってからは、特に何かあるわけでもなく、午後の授業も終わった。
帰り支度も終わったので、雪音が来るまで莉緒に話し相手になってもらおうと思い、彼女に話しかける。
「莉緒、暇だから少しだけ話し相手になってよ」
「わるい、今日は無理だわ。妹と遊ぶ約束があるから急いで帰らないと。待たせるわけにはいかないんだよ。…よし。んじゃ、先帰るわ。また明日」
「またね」
莉緒はそう言うと、カバンを持ってすぐに帰って行った。
話し相手になるはずだった莉緒が帰ってしまったので、仕方なくスマホでゲームをして時間を潰す事にした。
(莉緒って割とシスコンなところあるよね。まぁ、歳の離れた妹さんが可愛いのは分かるけど)
そんな事を考えながらゲームをしていると、雪音も準備が終わったようで、私に声をかけてくる。
「六華、待たせてごめんね。もう帰れそう?」
「大丈夫だよ。雪音も忘れものとかない?」
「私も大丈夫。なら帰ろうか」
雪音のその言葉を聞いた私は自分の席を立ち、雪音の隣に並ぶ。雪音は私が来たことを確認すると、まだ学校にいるにもかかわらず腕を組んできた。
私はその行動に多少びっくりしたが、それよりも彼女が周りを気にせずにこういったことをしてくれるようになったことが嬉しくて、彼女の方を向き微笑む。
雪音も私の視線に気づいたのか、私の方を向いて微笑んでくれた。
(雪音の独占欲がまた強くなってる。このまま私に依存してくれるといいな)
そんな事を考えながら、私たちはそのまま腕を組んだ状態で教室を出て、雪音の家へと向かった。
「お邪魔します」
「どうぞー」
雪音の家に来た私は、彼女に連れられて家に入り、彼女の部屋へと向かう。雪音の部屋はとても綺麗に整っており、無駄な物がなかった。
それに、アロマを使っているのか、とてもいい香りがして落ち着く。
「椅子とかなくてごめんね。そこにクッションあるからそっちに座るかベットに座ってて。私は飲み物とか持ってくるね」
雪音は飲み物などを取りに行くため一度部屋を後にし、残された私はとりあえず先ほど言われたクッションに座って雪音のことを待つ。
しばらく待っていると、飲み物とお菓子を持って雪音が部屋に入ってきた。
「お待たせ。飲み物はサイダーにしたけど良かった?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
雪音は私の横に座ると、目の前にあるローテーブルの上に飲み物などを置いて、今日彼女の部屋に私が来た理由を尋ねてくる。
「それで六華。今日は急に家に来たいって言ってたけど、どうしたの?」
「たまにはお家デートもいいかなって。それに、雪音の家に来たことなかったから来てみたかったんだよね」
「そうなんだ。じゃあこの後はどうしようか。見ての通り、私の部屋ってあまり遊べるものとかないんだよね」
「それなら、スマホで映画でも見ようか。私はよく映画とか見るから、そういうサイトの契約してるし」
「いいね。なら何見る?」
「んー、ホラーとか?」
「……え?」
「あ、ごめん。苦手だった?莉緒とはよくホラー見るから、その感覚で言っちゃった」
「だ、大丈夫だよ!ホラーにしよう!」
「わかった。なら雪音、ここ座って」
私はそう言うと、自身の足の間を指差し、そこに座るように雪音に言う。
「わ、わかった」
雪音は少し上擦った声で返事をすると、私の足の間に腰を下ろして座った。
私は海外のホラー映画を適当に選び、テーブルの上にスマホを横向きに置くと、再生ボタンを押した。
今回見るのは、封印された人形の封印を子供たちがふざけて解いてしまい、そこから悪魔や幽霊が害してくるというものだった。
私は雪音の腰に腕を回して、彼女を後ろから抱きしめるような形をとる。
雪音はホラー映画が苦手なようで、私がそうしている事に気づいていないようだった。
その後もストーリーは進んでいき、雪音は時々悲鳴をあげたり、私の腕にしがみついたりしてくる。その一つ一つの行動が可愛くて、もっとその表情を見てみたいという加虐心が燻られる。
映画は大体2時間ほどで終わり、雪音は終わった頃には疲れたのか、身を私の方に委ねてぐったりとしている。
「面白かったね、雪音」
「…うん。こわ、じゃなくて、…面白かったね」
「また今度一緒に見ようか」
「え。…あ、うん。そ、そうだね」
雪音は笑顔を引き攣らせながらも笑って答えてくれる。そんな彼女が愛おしくて、抱きしめる腕に少し力を込めてしまう。
それによって、雪音は今どういう状況なのか理解したようで、急に顔を赤くして顔を逸らす。その反応に我慢できなくなった私は、彼女の綺麗な首筋にそっとキスをする。
「ひゃう?!ど、どうしたの六華!」
「ん?どうもしないよ」
私はそう言いながら、もう一度彼女の首筋にキスをして、ゆっくりと舌を這わせる。そして、そのまま彼女の耳を舐めたり甘噛みしたりする。
「り、六華!…あっ!……んっ」
私が後ろから抱きしめる形でやっているため、雪音がどんな顔をしているのか分からないが、正面からやっていたら最後までやってしまいそうだったのでよかった。
「ま、まってぇ、りっかぁ…みみ…よわ、い…から…」
耳を弄りながら、右腕で彼女を逃がさない様に抱きしめ、左手を服の中に入れる。そして、彼女のきめ細かくさらさらした肌に指を這わせたりする。
その後もしばらくは耳を重点的に攻め、最後に右手を彼女の顎に当ててこちら向かせキスをする。
ある程度満足した私は立ち上がると、自分のカバンを持って部屋の入り口に向かい、雪音に微笑みながら帰る事を伝える。
「またね、雪音。とても楽しかったよ」
雪音からの返事は無かったが、おそらく突然のことに頭が回っていないのだろうと判断し、私は雪音の部屋を出て家に帰る事にした。
私は今、いつもよりゆっくりと時間をかけて家に帰っている。さっきのことで火照った体を冷ますためだ。
(…ふぅ。雪音を焦らすためにやってることだけど、同時に私も焦らされてるから結構ヤバいなぁ。もはや我慢比べになりそう。でも、我慢できなくなった雪音に襲われるのも、それはそれでありかもね)
今後、どちらが最初に我慢できなくなるかは分からないが、それでもしばらくは、私が雪音を焦らして、私だけしか考えられないようにしてあげようと心に誓うのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
よければこちらの作品もよろしくお願いします。
『距離感がバグってる同居人はときどき訛る。』
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