第44話 現在編パート8 言葉にできなかった思い その3

「少しは落ち着いた?」

「まぁ、一応…なんかごめん…」

あれから少し時間が経った。

撫子は俺が泣き止むのを、ずっと優しく見守ってくれていたのだ。

「ううん、別にいいよ…」

「優しい…」

「えっ? ぜ、全然、こんなの優しくないよ…そもそも私が日記を見せたから、こんなことになったんだもん…」

「いや、撫子のおかげで知れたことがある…その優しさに俺は救われたよ」

「そ、そう…かな?」

「ああ…本当にありがとう」

そっと微笑みを向けると、撫子は同じような微笑みで返してくれる。

「ははっ」

「ふふっ」

こうして笑い合えることがどれだけ大切なことか。

「あっ…そうだ…最後にこれ…」

そう言って、撫子は一つの小さな箱を取り出す。

「……こ、これ…俺があげた…」

その箱を見て、俺は驚きのあまり目を見開く。

「これも露草くんに…」

「わ、分かった…」

そう言って、箱を受け取る。

これは俺が卒業式の日に鴇羽にあげたヘアピンの箱だ。

まさか取ってあるとは……。

蓋を開けると、買った当初とは違って、明らかに使い古され、色がくすんだ鴇羽色のヘアピンが…。

「……ん?」

それを取り出す時、一枚の紙がペラリと机の上に落ちる。

俺はその紙を開いた。

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