第36話 現在編パート7 再会 その3
「はぁ…もっと話したかったな…」
家でくつろいでいるはずなのに、ちっとも休まらなかった。
理由は簡単。
頭の中が撫子でいっぱいだったからだ。
「う~ん…」
数年ぶりに会ったんだもんな…。
あんな素っ気ない感じでも、しょうがないよな。
それに最後は俺の方から疎遠にさせたんだから。
撫子は気まずいよな…。
「いやでも…せめてあの時のこと…」
携帯の画面をずっと開きながら、俺は頭を悩ませる。
再会してしまった。
この事実が、俺の心を苦しめる。
告白するとか、付き合いたいとか、もちろんそういう気持ちがないわけじゃない。
だけど、一番伝えたかったことがある。
それは…
「あの時はごめん…って言いたいな」
ただ再会しただけ。
でも再会できた。
「…………今さらだけど……やらないよりは…よし!」
俺は勇気を持って、撫子にメッセージを送る。
昔と違って、大人になった俺には、そんな勇気があった。
『久々に会えて驚いた。あの…話したいことがあるんだけど、今度会えない?』
正直言って、撫子からすれば、気持ち悪いと思う。
明らかに下心が見え見えだから。
というか、送った後に思ったが、連絡先変わってたりしないよな…?
「あああああああああ! どうすればああああああああ!」
頭を抱えながら、声を荒げる。
すると、通知音が鳴る。
「っ!」
『私も久々に会えて嬉しかったです。でもごめんなさい…』
距離を感じる敬語。
丁重なお断り。
俺は思わず声を出す。
「おぅ…もうダメだ…」
体から力が抜けて、俺はその場に倒れ込んだのだった。
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