第24話 現在編パート4 お見合い その6

「おーい、梔子。家に着いたぞ」

梔子のお母さんに、梔子が一人暮らしをしているマンションを教えてもらい、俺はそこまで梔子を運んだ。

まさか二日連続で、こいつのことをおんぶするとはな。

「んん~。まだもうちょっとぉ~」

なんて、眠そうに言いながら、きっちりと家の鍵を俺に渡してくる。

ん?

いやいや、落ち着け俺。

これは決して、そういう意味ではなくて。

これから一人暮らしの女性の部屋に入るのは、梔子をベッドまで運ぶためであり。

それをしたら、風のごとく一瞬にして去るんだ。

それまで耐えてくれ…俺の平常心っ!?

梔子から受け取った鍵で、扉を開ける。

「お邪魔します…」

そのまま廊下を進んでいると……。

「ん~…そこの…左の部屋…」

パッと見、3LDKだろうか。

なかなかに、一人で暮らすには広い家だった。

「ここか…?」

「私の寝室…」

さっきから、気だるそうな眠たそうな声をしながらも、しっかりと案内はしてくれる。

梔子の寝室の扉を開け、部屋の電気をつける。

そこには……

「うおっ、すげぇ!?」

壁には、一面、スタイルソフト作品のキャラクタータペストリーが。

もちろん、エロゲなので、色々な所が見えてしまっている。

ベッドの上には、茜の抱き枕。

「おお!? これ限定販売で手に入らなかったんだよなぁ…羨ましい…」

他にも、部屋中、至る所がエロゲキャラクターのグッズで染まっていた。

「って、俺は何してんだ。早く、寝かせて帰らないと…」

ベッドの上に、梔子を寝かせて、掛け布団をかけてあげる。

………よく見ると、この掛け布団、スタイルソフトの名作、あなたの色に染め上げて。の明莉たんブランケットじゃないか!?

今でも鮮明に思い出せる。

あなたの色に染め上げて。を始めてプレイした時の明莉たんの可愛さを。

元々、体験版で、明莉たんに惚れていたため、一日で明莉たんルートをクリアした記憶がある。

う、羨ましい…。

これも限定品で、手に入らなかったんだが…。

なんてことを思っていると…。

ぎゅっと、突然手を握られる。

「えっ……あの、梔子?」

「なぁに…?」

ゆっくりしていて、まるで眠たそうな小さな子供みたいな口調だった。

「離してくれないと、帰れないんだけど…」

「だ~めっ…一緒にいてくれないと…寂しくて死んじゃうから…」

甘える子供のように、そう言ってくる。

ど、どうしよう!?

可愛いすぎて、この手を振りほどけない!?

だ、ダメだ!

こ、このままでは大変な過ちを犯してしまう!?

そんな俺に追い打ちをかけるように…。

「えいっ!」

「あっちょっ!?」

思いっきり、手を引っ張られて、梔子の隣に寝てしまう。

「えへへ~♪ 暖かいよぉ~♪」

「っ~~!?」

ぎゅっと抱きしめられる、俺。

や、やばいィィィィィィ!?

この状況、まずいィィィィィィィィィィィ!?

何とかして、離れようと思い。

ゆっくりと、気が付かれないように、梔子の抱擁を抜け出そうとする。

「む~。だめっ! 今絶対、逃げようとした…めっ!だよ?」

今度は小さな子供を𠮟るような言葉。

しかし、口調が完全に甘える子供なので、怒られている気が全くしない。

背伸びした、女の子みたいだった。

「あ、いや…梔子…流石にこれは……」

「ぜ~ったいに…離さないもんっ~!」

そう言って、さっきよりも強い力で抱きしめてくる。

あぁ、もうこれダメだ。

とりあえず、煩悩を退散させることを考えよう。

出会って二日目だというのに…俺とこいつ…進展しすぎじゃないだろうか?

本当に、冗談じゃなく、エロゲみたいだぞ、これ。

もし、運命の赤い糸なんていう、都合のいいものが存在するのなら、俺、ワンチャンこいつと結ばれてるんじゃね?……なんて、思ってしまった。

「ふふ~♪ 運命の赤い糸って~♪ 本当にあったんだねっ~♪」

「…………」

だからこういう所なんだよなァァァァァァァァァァァ!?

お前はエスパーなのか!?って言いたくなるくらい、同じことを考えてる場面がちょこちょこ見受けられる。

本当に繋がってる説…濃厚。

いやまぁ…正直に言うと…………もしそうでも…。

別に悪い気はしないよな…。

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