第21話 現在編パート4 お見合い その3
「ただいま~」
俺の実家はそれほど遠くないため、帰って来ようと思えば、わりといつでも帰って来れる。
「あ、お兄ちゃん! お帰り~」
玄関を開けると、制服姿、黒髪ロング、瞳パッチリ系女子が。
妹の…露草 未来(つゆくさ みく)である。
「おう、未来…ただい―」
「ばきゅ~んっ♪」
「うおっ!」
びちゃびちゃっと、俺の服がビショビショに濡れる。
よく見ると、未来の手には大きな水鉄砲が。
「…………」
「お兄ちゃん……」
つい、黙ってしまった俺に、未来は少しためた後、キメ顔で言った。
「私の後ろに立つと、火傷するぜ…☆」
やたらでかい水鉄砲を構えて、目をキラキラさせながらの意味不明な発言。
そもそも、お前の後ろじゃないし、目の前にいるし。
というか…こいつは何をしているんだろうか?
今年で十八歳、高校三年生である。
うん、無視しよう。
こういうのは、絡むと余計、調子に乗るからな。
靴を脱いで、何もなかったかのように横を通り過ぎようとする。
「無視しないでよ~!」
「うおっ!?」
ビチャビチャビチャビチャ…。
未来の追撃をくらい、さらに服が濡れる。
普通にイラっとした俺は、未来から勢いよく、水鉄砲を取り上げる。
「あ~! 何すんの~!」
「没収だ」
「返してよ~。私の水鉄砲!」
水鉄砲を高く掲げる。
俺から、水鉄砲を取りたそうに、ぴょんぴょんと跳ねる未来。
しかし、身長が足りないせいか、全くもって届きそうにない。
「その水鉄砲でお兄ちゃんのハートを撃ち抜くんだから!」
ある意味、ハート撃ち抜かれたよ。
もう、頭の中がお前で一杯だよ。
ただし、イライラの方だが。
「お前…何がしたいんだよ…」
「別にいいじゃん! 家で水鉄砲、使ってもいいじゃん!」
「俺がめちゃくちゃ濡れたんだが!?」
「別にいいでしょ~。お兄ちゃん、水属性耐性あり、なんだから…。返してよぉ~。それ高かったんだよ?」
もう一度、言う。
未来は今年で十八歳だ。
「…………」
ああああああああああああああああああああああっ!?
どうして、うちの妹はこんなにも幼稚なんだろうか。
思わず心の中で叫んでしまう。
「うぇ~んっ! お母さ~ん! お兄ちゃんが水鉄砲返してくれない~!」
家の中に泣きながら、戻っていく未来。
そんな未来についていくようにして、リビングへ。
「ちょっと、奏人。どうしてそんなにビチャビチャなのよ。雨降ってたかしら?」
俺の姿を見て、母さんが驚いている。
「そこのバカにやられたんだよ」
母さんの後ろに隠れている、未来に指を向ける。
「未来…あんたまた、水鉄砲使ったの?」
「だってぇ…お、お兄ちゃんのハートを撃ち抜こうと思ってぇ…」
「今度、家の中で使ったら、処分するって言ったよね?」
「お、お母さん…それはぁ…」
「それに…奏人はこれからハートを未来じゃない人に撃ち抜かれるんだから…」
「は?」
発言の意味が分からなくて、思わず、首を傾げてしまう。
「とりあえず、あんたの使ってた部屋に着替え用意してるから…」
「着替え?」
「そうよ。バッチリ決めてるから、安心しなさい!」
「いや、濡れること分かってるなら、最初から未来を止めてくれよ」
「え? あんた何言ってんの? そんなの知らないわよ」
「え? いやだって…着替えって…」
「それはそうでしょ? だって、あんたの絶望的な私服センスのまま、お見合いに行かせるほど、私は母親として愚かじゃないわよ」
「ふ~ん…お見合いかぁ…」
なんて、何となく話しを流した、数秒後。
未来と声を揃えて、驚きの声をあげる。
「えっ…お兄ちゃん…お見合いするの!?」
「えっ…俺、お見合いすんのぉぉおおおおおおおおおお!?」
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