第19話 現在編パート4 お見合い その1

「もう帰るのか?」

朝食後。

梔子はすぐに帰ろうと荷物を整え、今、玄関で靴に履き替えている。

「なに? もしかして、私と一緒に居たいとか~♪」

おちょくるように、俺にそう投げかけてくる。

「居たい」

もちろん、即答で返す。

「えっ、ちょっ! ちょっと!?」

顔を真っ赤にして、驚く梔子。

「勘違いするな。さっき言ってた、新作の話が聞きたいだけだ」

「はぁ…なんだその話…」

「もしかして、別の意味で捉えちゃった……? いやぁ~♪ 梔子さんは恋愛脳なんですねぇ~♪」

さっきやられたような、おちょくり方でやり返す。

「うっさいわねぇっ!?」

「先にやったのはお前だぞ」

「はぁ…介抱してくれたのは感謝するけど、あんたとはもう一生会いたくないわ…」

額に手を当て、俺といると疲れる…なんて言いたそうにしていた。

「それじゃあ…」

玄関の扉に手をかけて、外に出る梔子。

「あっ、梔子…」

「何?」

「新作のシナリオ…めちゃくちゃ楽しみにしてる」

「う、うん…」

「あと、昨日は楽しかった。まぁ…もう会うことはないだろうけど…それじゃっ」

「そ、そう…」

そう言って、梔子は去っていく。

扉が閉まり、梔子の姿が見えなくなる。

しばらく俺は玄関の前で立ち尽くしていた。

特に深い意味はない。

なんとなくだ。

ブルブル、ブルブル。

突如として、スマホが鳴る。

「誰だよ…って、母さんか」

連絡先は母親と表示されていた。

まぁ、母さんから電話が来ることはそんなに珍しいことではない。

月に二回くらいは、連絡が来る。

親心的に、一人暮らしの息子が心配なのだろう。

いつも通り、どうせちゃんとご飯は食べてるの…?とか、彼女はできたの…?とか、そういうどうでもいい話だろう…なんて思いながら、電話に出る。

「もしもし…どうした?」

『もしもし…奏人? いきなりで悪いんだけどさ、今日、実家に帰ってきてくれない? お母さん、ちょっとした相談があるんだけど…』

「は?」

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