第16話 現在編パート3 勘違い その2
あれから三十分後。
「ごめんなさい!? めちゃくちゃ勘違いしてましたっ!?」
「いやまぁ…勝手に家に連れてこんじゃった俺も悪いからさ…あんま気にしないでくれ」
「う、うん…あんたがそう言ってくれるなら―」
「初めてだったの…」
梔子の真似をして、そう呟いてみる。
「っ~~!? いやぁぁぁぁぁぁぁっ!? やめてぇえええええ!?」
顔を真っ赤にし、その場に悶絶する梔子。
「ずぞぞぞ…ふぅ、みそ汁って落ち着くなぁ~」
悶絶する梔子を見ながら、俺は朝ご飯に手を付け始める。
もちろん、梔子の前にも、同様の朝食を出している。
「あんた、絶対サイコパスでしょ!? 本当に、その神経が信じられないんだけど!」
「折角、作ったんだから早く食べないと冷めるぞ?」
「えっ…もしかして、これ私の分?」
「当たり前だろ。お前の目の前に出してるんだから。逆に他に誰かいるのかよ」
「いや…なんか悪いなって…」
「そんな大したことしてないぞ? いいから、食べろって」
「う、うん…」
梔子は俺の目の前に座り、箸を手に持った。
「私の初めて…この箸で破られちゃったのね…」
「勝手に私にアフレコしないでよ!? そもそも、そんなこと思ってないし、言ってないし!?」
「すまん、ついつい」
「あんたって、優しいのか優しくないのか、よく分からないわ…」
呆れたようにしながら、梔子はみそ汁の器を持って、一口。
「んっ…美味しい……」
「そんな素直に褒められると嬉しいな。大したものは作ってないんだがな」
「い、いやぁ…最近、新作のシナリオの〆切が近かったから、ろくな物食べてなくて…。こういう家庭的な和食が染みるっていうか」
「例えば、何食べてたんだ?」
「カップ麵」
「他には?」
「カップ焼きそば」
「さらに他には?」
「カップ春雨」
「お前…そんな食生活で、よくその容姿を維持してるな」
「えっ…?」
「ん? 俺、今、なんか変なこと言ったか?」
「い、いや…そ、それってつまり……私の容姿が可愛いってことだよね…」
「…………」
は、恥ずかしいぃぃぃいいいいい!?
ふと、率直に思ってしまったから、口に出したのだが…。
これじゃあ、口説いてるみたいじゃないか!?
俺、キメェェェェェェェェェェ!?
「ちょっと! 自分で言っておいて、そんなに恥ずかしくならないでよ!」
「す、すまん…あんまり、こういうのは慣れてなくてな…」
「あんた…もしかして……」
「ストップ! それ以上は言わなくていい! お前の想像に任せるし、お前の想像通りだから!」
「う、うん…」
それから、しばらく無言になる。
若干の気まずさが、波のように押し寄せてくる。
「「…………」」
というか、冷静になると……
今、異性と二人っきりでご飯食べてるんだが!?
そういえば…初めてこういうことしたのって…確か、撫子と…。
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