第14話 過去編パート2 修学旅行 その3

夕暮れ時。

宿舎に戻るため、バスに乗っていた俺と撫子。

あの遊園地は朝から夜までいる客が殆どで、帰りのバスは俺と撫子以外、客はいなかった。

「すぅ…すぅ…」

隣合わせて座る俺と撫子。

そして、俺の横には撫子の寝顔が……。

「……起こすわけにもいかないよな」

きっと、遊び疲れたのだろう。

撫子は俺の肩に、ちょこんっと頭を乗せて、すやすや眠っていた。

「………」

「すぅ…すぅ…」

落ち着け俺ェェェェェェェェェェ!?

撫子に触れられているからって、取り乱すなっ!

いくら寝顔が可愛いからって、そういう気持ちになるんじゃない!

いくら心臓がドキドキするからって、そういう目で見るんじゃないぞ、俺!

何度も頭の中で、撫子に惚れないよう、自分に言い聞かせる。

「んん…すぅ…すぅ…」

「……………」

やべぇ、すげぇ可愛い。

今日、一日、撫子と過ごして思ったことは、沢山ある。

以外とおてんばな所があるんだな…とか。

お母さんみたいに頼れる所があるんだな…とか。

間違いなく確信していた。

俺は撫子 鴇羽という女の子に惹かれていると。

って、冷静になれ、俺ェっ!?

撫子は純粋に遊びたくて誘ってくれたのに、勝手に色恋沙汰を持ってこられたら、困るに決まってる。

だから、落ち着けぇ…。

落ち着くんだ、俺ェェェェェェェェェェ!?

このままじゃ好きになってしまう!?

「すぅ…露草…くん…手…もっとつなぎ…た……い……」

「!?」

いきなり、喋りだしたから、起きたのかと思ったが、どうやら寝言だったらしい。

ちなみに、何を言っていたのかはよく聞こえなかった。

「えへへ~……」

気がつくと、撫子の寝顔は可愛く微笑んでいた。

きっと微笑んでしまうほど、楽しい夢でも見ているのだろう。

「このまま着くまで…起こさないでおこう…」




その後。

起きた撫子が、俺の肩を枕にしていたことに、死ぬほど顔を赤くしていたのは、言うまでもないだろう。

とりあえず、可愛かった。

あと、可愛かった。

それと、可愛かった。

うん…俺、このままじゃ間違いなく……。

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