第13話 過去編パート2 修学旅行 その2

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」

「ふふっ、ふふふふっ♪」

「ジェットコースターはダメだってぇえええええええええ!?」

グルグルと宙を回るジェットコースターの中で、叫ぶ俺と、めちゃくちゃ笑顔の撫子。

しばらく地獄の時間を味わった後、アトラクションが終わり、ジェットコースターから降りる。

「面白かったね、露草くんっ♪」

「お、おう…すごく面白かったな……」

「って、大丈夫? 顔が真っ青だけど…。も、もしかして、こういう絶叫系アトラクション苦手だった?」

撫子が行きたがっていたのは、この地方にある超有名、遊園地だった。

着いた直後、いきなり日本一の怖さを誇ると言われているジェットコースターに乗せられ、俺の精神がすり減ったのだった。

「い、いや…別に……」

せっかく誘ってくれたのに、ここで無理ですなんて言えるわけがない。

というか、これもうデートじゃね?

まさかこんな展開になるなんて、今朝の俺は思いもしなかっただろう。

「そっか、よかったぁ~♪ じゃあ、次はあれ行きたいっ!」

子供のように、はしゃぎながら、アトラクションに指を指している。

何々……死人の口なし館?

「ひっ!?」

お化け屋敷じゃないかっ!?

や、やばい!?

お化け屋敷はジェットコースターより苦手なんだぁぁぁぁっ!?

「ほ~ら、早く行こっ♪」

上目づかいで、俺の手を掴み、引く撫子。

本来ならば、ドキドキする胸キュンシーンなのだが……。

なんだろう、違うドキドキが…恐怖のドキドキがすごいんですけど!?




「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」

「大丈夫だって…これただの人形だよ?」

撫子は見た目に反して、こういうのに耐性があるらしく、さっきからビクとも驚かない。

どんどん進んで行く撫子。

「あっ、撫子ぉぉっ! ちょっと待ってくれよっ!?」

一人にされることを恐れた俺は、勢いで撫子の手を握ってしまう。

「ひゃっ!? え、えぇ!? ちょ、ちょっと露草くん!?」

「ごめん! 本当にごめん! だけど、怖くて手を離したくないんだぁあああああああ!?」

「わ、分かったよ! 私と、ぎゅって手をつないでたら、大丈夫…だからね?」

まるで小さい子供をあやすように、俺にそう言ってくれる撫子。

それから、お化け屋敷を出るまで、ずっと撫子の手を握っていたのだが。

途中から、撫子は何故だか、顔を真っ赤にしていた。

特に声をあげたり、怖がっているような様子は見せていなかったし。

怖くても、あんまり声をあげないタイプなのだろうか?

それにしても、後半の仕掛け怖かったもんなぁ。

そりゃ、撫子も怖くて顔を赤くするわけだ。

しかし、変った怖がり方だよな。

顔を赤くするって……ちょっと聞いてみるか。

お化け屋敷から出ると、先に撫子が俺を気遣い、言葉をかけてくる。

「はぁ…え、えっと…大丈夫? 露草くん……」

「あぁ、俺は、撫子のおかげでわりかし。というか…さっきから顔を赤いけど、撫子は大丈夫か?」

「え、ええ!? わ、私!? ぜ、全然大丈夫だよっ!?」

と、声を震わせながら、言っている撫子。

きっと、お化け屋敷が怖かったのだろう。

最初は余裕そうにしていた撫子が噓みたいだ。

「って、すまん! ずっと手を握ってて!」

「えっ!? ううん! 私は全然、大丈夫だから!」

急いで、手を離すと…。

「本当に…その……大丈夫だからね?」

顔を真っ赤にしながら、何かを伝えようとしている。

なんかちょっと不服そう?

あっ……そんなに俺と手をつないだのが嫌だったの!?

「ごめん…勝手に手をつないじゃって…」

「あっいや…その…そういうことじゃなくて…どちらかと言うと…ごにょごにょ…」

「え?何か言った?」

「ううん、何でもないよ…」

「そ、そう?」

明らかに、何でもある素振りじゃん…。

え?何?陰口?

もしかして、今、陰口言われたのか?

目の前で陰口を言いたくなるくらい、俺にムカついてるのかっ!?

「と、とりあえず! 次、私、あれ行きたいな!」

話しをすり替えて、誤魔化すように撫子が言う。

まぁ、あんまり深掘りしない方が、お互いのためだろう。

俺も今の出来事は気にしないようにしよう。

と…気を取り直して、撫子の指差す方向を見る。

その先には…

世界最恐のジェットコースター!

の文字が…。

これ俺死ぬわ。


その後、俺は撫子の行きたいというアトラクションに行っては、断末魔をあげるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る