第11話 現在編パート2 出会い その5

店から少し離れた所が桜の並木道になっていた。

三月上旬ということもあり、舞い散る夜桜の花があまりに幻想的だった。

なんて…ロマンチックなことを思った後になんだが…。

「すぅ…すぅ…」

いや…これどうしよう…。

そう思った瞬間。

ビクッと、背中の梔子が動く。

「んふふふっ~♪」

「ようやく起き―っ!?」

さっきまで、梔子が寝ていて動いていなかったから、あまり意識していなかったが…。

今、彼女が動いたことで、むにゅっと柔らかい感触が…。

や、やべぇ!

おっぱいがめちゃくちゃ当たってるんですが!

これはまずい、このままじゃただの変態だ。

急いでこいつを家に送らなくては…。

「お、おい…家まで送ってくけど、家の場所、教え―」

「分かんないっ♪」

まるで幼稚園児のように、子供っぽく言う梔子。

「いや、分かんないって…」

「私~♪ 自分お家分かんなくなっちゃたぁ~♪ 本当に思い出せないのぉ…」

「どうすんだよそれ…」

「だからぁ…後は任せたぁ~♪ すぴぃ……すぅ…すぅ…」

と言いながら、そのまま二度寝してしまう梔子。

「なんて自分勝手なやつなんだ…」

とは言っても、このまま道端に置いていくわけにもいかない。

「はぁ……変なことすんなよ、俺…」

とりあえず、自分にそう言って、聞かせた。



「ふぅ…これでよしっと」

自宅に着くと、俺はベッドに梔子を寝かせる。

「はぁ…起きたらちゃんと説明しないとな…」

多分、記憶飛んでるだろうから。

「それにしてもなぁ…」

梔子の無邪気な寝顔を見ながら、今日のことを振り返ってみる。

こんなに家族以外の異性と話したのは、いつぶりだろうか。

それこそ、高校生の時、以来かもしれない。

初対面とは思えないほどの会話の盛り上がり方だった。

共通の話題があると、俺、異性相手でも、あんなに喋れたんだな…。

「…………撫子」

その名前を呟いてしまった、自分に女々しさを感じた。


彼女のことを、強く意識したのは、修学旅行中のことだった。

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