第10話 現在編パート2 出会い その4

「ええっ!? お前、スタイルソフトのシナリオライターだったの!?」

「そうよ。茜ルートはまさに私が書いたわ」

あれから数分後。

衝撃の事実が発覚した。

梔子 姫花。

彼女は、俺が先ほどあげた、出会いの花は何色ですか?こと…通称、であいろを作った、大手ゲームブランド、スタイルソフトのシナリオライターだったのだ。

しかも、であいろでは俺が一番好きな、藤崎茜ルートのシナリオ担当。

なんだこの偶然。

俺、明日、隕石が直撃して死ぬんじゃないか?と思うほどだ。

「で、茜の可愛い所、もっと言ってくれてもいいのよ?」

「年上にも関わらず、たまに出てくるあの子供っぽいギャップがいい」

「それな! めっちゃ分かる…特に…」

「「遊園地デートのシーン!」」

二人して、発言が揃う。

「あんた…分かってるわね!」

「梔子こそ…分かってんな!」

「当然でしょ? 私が書いた超絶可愛いヒロインなんだから!」

「強がってるけど、お化け屋敷に怖がってるの超萌えたんだが」

「それもいいし、その後のマスコットキャラクターについて、熱く語るのも子供っぽくて、ギャップ萌えで死にそうになったわ」

「あー、それめっちゃ分かる!」

「でしょでしょ。それじゃあ、他には?」

茜を褒められるのが、すごく嬉しいらしく、先ほどからやたらと茜の可愛い所を聞いてくる。

まぁ、この手の話で盛り上がったのは久々だからすごく楽しい。

「そうだなぁ…あとはやっぱり……」

「「告白シーンは外せない!」」

また発言が揃う。

「最初、初めて出会った、あの公園で、星空の下告白する茜の可愛さは異次元級よね!」

「しかも、出会った時の朝とは反対っていう、背景の演出もえぐかったよな!」

「そうそう! あれ、最初は背景担当の人が勝手に作っちゃいましたって言って、作ってきたんだけど…見たらもうやばくて! ほんとは朝焼けにする予定だったんだけど、もう、あまりにも良すぎたから、シナリオちょっと変えたのよ!」

「まじか! あの神シーンはそんなふうに出来上がったのか」

やべぇ、こうやって制作の裏話聞けるとか、まじで嬉しいんだけど。

それから、またしばらく、永遠に茜の可愛さについて語り合っていた。

俺はあんまりだが、梔子は機嫌が良かったのか、どんどんとお酒が進んでいく。

気がつくと…

「わらひね~。やっぱり自分の…ヒクっ…書いたキャラが褒められりゅの嬉ひいの~♪」

「お、おう……………っと、大丈夫か?」

「え~♪じぇんじぇんらいじょ~ぶだよ~♪」

呂律が回ってないだが!?

大丈夫って言えてないんだが!?

「ほんとはしゃ~…茜に人気投票、一位取ってほひかったにょにぃ~…」

あぁ、今日結果が発表された、であいろ人気投票の話か。

メインヒロインの中で、茜、ビリだったもんなぁ。

あんなに可愛いのに…。

「わらひショック受けてたけどぉ~♪ あんたみたいな茜ファンがいてぇ~♪ 嬉しくなっちゃった~♪」

やっぱり自分が担当した、ヒロインが不人気というのは悲しいものなのだろうか。

俺はただの消費者目線、ファン目線なのでそこら辺はよく分からないが…。

まぁ、好きなキャラが不人気なのは普通に嫌だよな。

独占欲がある、同担拒否ならまだしも。

「はぁ…本当にぃ…今日は楽しいなぁ……カクっ……すぴぃ……すぴぃ……」

とうとう寝やがったんだけど!?

これどうすればいいんだよ!?

「お~い、起きろ~」

軽く肩をゆすってみるが、びくともしない。

「…すぅ…すぅ…」

「このまま置いていくわけにもいかないしなぁ…はぁ…しょうがない」

これも何かの縁だ。

このまま放置して帰るなんて、俺はそんな鬼じゃない。

お会計を済ませて、俺は梔子をおんぶして、店を後にする。

ちなみに、レシートはちゃんと貰ったので、あとでこいつにちゃんと請求する予定だ。

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