第3話 最初の4人
俺たちは唖然としていた。
空威や仲間たちと過ごした道場は焼かれていて、炭しか残っていなかった。
俺たちは一度別れ、急いで他の生徒たちを探すため村の家を片っ端から訪ねた。
ドンドン!
「健人っ!健人はいるか!」
唯一親の家を譲り受け、若くして一人暮らしをしていた健人という生徒の元を訪れた。
そこそこ広い家だからもしかしたら全員を匿ってるかもしれないと思っていたが。
「なんだクソ餓鬼!扉を叩くな!うるせーぞ!」
「すいません…家を間違えました…」
おかしい…健人はここに住んでいたはずだ…
「奏さん…何してるんですか?」
「ひゃぁあ!!」
突然後ろから肩を叩かれて、変な声を上げてしまった。
修行したことで人が近づいてきたらわかるようになったのだが、今は全く気配がしなかった。
「びっくりしたぁ…あっ!健人!」
「お久しぶりですね…無事で何よりです」
このジト目をした長髪気味のいかにもやる気のなさそうなこの男は、俺の一個下の平永健人と言う。
「それより!ここお前の家だよな?なんか知らない人いるんだけどっ!」
「あー僕も空威先生の件で政府の連中の事が気に食わなくて、3人くらいはっ倒したんですけどねー見事に捕まって家取られちゃいました」
「えっ…?」
無気力を絵にしたような顔のくせに、やることはえげつない…
「まぁ、それで住む家取られちゃって、焼かれちゃった道場跡地に住み着いてるんですよねー」
「ところで、奏さんはなんで戻ってきたんですか?」
「道場の仲間の安否確認しにきたんだよ。それが済んだらあとは政府の連中に喧嘩ふっかけにいくつもり」
健人は、ほぉ〜みたいな顔をして俺の話を聞いていた。
「そ、それなら…平気だと思いますよ」
「他の生徒の半分は、この村出てっちゃいましたし…残ってる奴らも上手く生きてます…」
「ならいいんだけどな〜」
少しバツが悪そうな顔を浮かべた健人を無視し、とりあえず健人と一緒に道場跡地に戻ると先に戻っていたライトが見知らぬ女の子と揉めていた。
「だから謝ったじゃないですかっ!」
「謝るんだったら、俺の弁当を返せ!」
「なんですか!胃から出せと?吐けばいいんですかっ!」
どうやらこの女の子に弁当を盗られて、挙げ句の果てには中身を全て食べられてしまったらしい。
「私ら半人には誰も関わろうとしないんです!私に関わる人間は人攫いくらいなんですよ!村の配膳にも並ばせてくれないしっ…!どうですか?同情してもう少しご飯をください!」
よく見ると、その女の子の頭には動物の耳と尻尾が生えていた。
「はぁー…とりあえず奏おかえり、どうやら生徒たちはほとんどこの村から出ていったらしいなー」
「てか、健人じゃん!久しぶりだな!」
「うっす…ライトさんお久しぶりです」
「そこの2人!私のことは無視ですか!」
この半人の女の子は、なんだかすごい元気な子だ。
「悪いな…もう1人が戻ってきたら俺たちはもうこの村を出るつもりでな。構ってる余裕がない。せめて弁当くらいあげるよ」
「あ、そうだ。さっきここに着いた時に見つけたんだが、翔介はなんか先に向かうって置き手紙かあっだよ」
「えっ。なんなんだよ…翔介のやつ…」
悔しいが翔介がいないだけで、少し心細くなってしまった。
そんな俺のことなど気にも止めず、物欲しそうな目線が気になる。
しょうがなく腰に携えていた弁当を取ると、それを半人の女の子に渡した。
それを奪うように俺の手から取り、無我夢中で食べ始めた。
「あわわちは、こをあおどおにいくうえうか?」
「口のものが無くなってから喋ってくれ。何言っているかわからん」
「ごくんっ…あなたたちは、この後はどこに行くのですか?」
俺とライトは顔を見合わせた。
よくよく考えたらどこに行くか決めてない。
「とりあえず、今の政府をぶっ潰すつもりだけど…」
「そうですか。ご飯のお礼です。私もお供しましょう」
なんだろう…きび団子をあげた桃太郎の気分だ。
「命を落とすかもしれないんだぞ?」
「別に私が死んでも悲しむ人はいません。それに今の政治家たちには私もムカつくことが多いですからね」
「君がいいなら…ありがたいけど」
「えーこいつも一緒に来るのかよ」
「そちらのおかしな髪色をした馬鹿は置いといて、よろしくお願いしますね!えっと…奏でしたっけ?私はまいって言います。見ればわかると思いますが猫の半人です」
「あの…俺も同行していいっすか?俺なりに修行もしてたんで奏さんたちの力になるかと…」
こうしてまいと健人が仲間に加わった。
4人が揃ったところを見て、俺は一緒に戦ってくれる仲間がもっと欲しいと考えた。
政府の連中の軍隊は数万、数十万人といる。
それと戦うためにはこちらも数が必要だ。
翔介の手紙の情報だと、政府の連中はどうやらここから数百キロ離れたカントウってところに集結しているらしい。
現在はそのカントウ周辺で反乱軍と政府軍が争っている。
そこに向かいながら仲間を探そう。
「なぁ俺たちで軍隊を作らない?名前はそうだな…奏軍団!」
「ははっ…4人で軍隊か?名前はともかく面白い。賛成だ」
「やはりここは、まい軍団にしましよう!」
「革命隊とか…」
ボソッと健人が言った。
「「「おぉ〜」」」
パチパチパチパチ
3人で目を合わせ、健人へ賞賛の拍手をした。
「名前も決まったところで…リーダーはどうするよ?」
「それは奏に任せた」
「私は嫌です」
「自分も奏さんでいいかと…」
なんか嫌な仕事を押し付けられたみたい。
まぁリーダーという響きに悪い気はしない。
「よーしっ!俺についてこいっ!!」
「「「おお〜」」」
こうして俺たち4人はカントウへ向けて旅立った。
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【公開情報】
題名 桃太郎
むかーしむかし。あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。
お爺さんは山でモンスター退治に、お婆さんは川モンスター退治に行きました。
お婆さんが1匹の巨大な鮫のようなモンスターを見事な手捌きで討伐していると、ドンブラコ〜ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
お婆さんはお爺さんへの良い土産になると、その大きな桃を片手でヒョイッと持ち上げると、家に持ち帰りました。
そして、お爺さんとお婆さんが桃を食べようと、桃を斬ろうと剣を振り上げると、なんと中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出し、その剣を見事に白刃取りしました。
これは神様からの贈り物だ。と子供のいなかった2人は大喜びです。
桃から出てきた男の子なので、お爺さんとお婆さんは桃太郎と名付けました。
桃太郎はスクスク育って、やがて強い男の子になりました。
そしてある日、桃太郎は言いました。
「ぼく、鬼ヶ島に行って、悪い鬼を退治してきます」
お婆さんにキビ団子を作ってもらうと、鬼ヶ島へ行きました。
旅の途中で喋る不思議な犬に出会いました。
「桃太郎さん、どこ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ」
「それでは、そのバックパックにつけたキビ団子を1つ下さい。お供しますよ」
犬はキビ団子をもらい、桃太郎のお供になりましょう。
そして今度は猿に出会いました。
「桃太郎さん、どこ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ」
「それでは、そのバックパックにつけたキビ団子を1つ下さい。お供しますよ」
猿はキビ団子をもらい、桃太郎のお供になりましょう。
今度は不死鳥に出会いました。
「桃太郎さん、どこ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ」
「それでは、そのバックパックにつけたキビ団子を1つ下さい。お供しますよ」
不死鳥はキビ団子をもらい、桃太郎のお供になりましょう。
こうして犬、猿、不死鳥の仲間を手に入れた桃太郎は、ついに鬼ヶ島にやってきました。
鬼ヶ島では、鬼たちが近くの村からぬすんだ宝物やごちそうをならべて、酒盛りの真っ最中です。
「みんな、皆殺しだ。それ、かかれ!」
犬は鬼の喉を噛みちぎり、猿は爪で鬼を背中から斬り裂き、不死鳥は仲間が倒れるたびに、自らの血を飲ませ復活させ。
そして桃太郎も、刀をふり回して大あばれです。
とうとう鬼の親分が、
「まいったぁ、まいったぁ。こうさんだ、助けてくれぇ」
と、手をついてあやまりました。しかし桃太郎は勢いを弱めることなくそのまま鬼の親分の首を斬り落としました。
桃太郎と犬と猿と不死鳥は、鬼から取り上げた宝物を車につんで、元気よく家に帰りました。
おじいさんとおばあさんは、桃太郎の無事な姿を見て大喜びです。
そして三人は動物たちを逃し、宝物を売り飛ばし、幸せに暮らしましたとさ。
おしまい
革命戦記 あるご @6143natuki
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