第108話 蠢く全貌は始祖に遭遇 (レクスィオver)



 大地を蹴り叩く音の群が耳に響き渡る。

 蹄に蹴り上げられた土や草は、視界に現れては次の瞬間には消えていく。



 比較的に整備された道、尚且つ人目のつかない最短ルートでの移動。

 それは決して容易なことではないが、状況が状況なだけに選択せざるをえない道。


 これまでの通ったルートを考えれば、今進んでる道はかなり楽な部類に入るだろう。

 なんせ何の変哲もない森の中だ。――それに。



 私はすぐ後ろについている二人へ目を向けた。



 一人は長い白銀の髪を靡かせ、侍女服の上にローブを纏った女性。 リア・アルカード。

 表向きは専属侍女ということになってるが、本来の彼女は私の護衛であり、その正体は決してわかりあうことはないと思っていた吸血鬼。


 日光の下で活動でき、種族として相性が最悪な【火系統魔法】すら扱える種族の枠に囚われない存在。

 恐らく吸血鬼の"真祖"であり、先日の超常的な魔法行使も相まって私やディズニィ、ユーエスジェの見解ではその中でも古の存在ではないかと結論づいた。



 ああ、どうやら私の視線に気付いたらしい。

 同じ生き物とは思えない程の美貌を何気なく向けられ、吸い込まれるような碧い瞳と目が合う。



 『エルシアの様子は?』



 パクパクと口を開き、この数日で優に50回は超えたと思える問いかけ。

 私は慣れた手つきで婚約指輪に意識を集中し、いつもの様に首を横に振るうのだった。



 『生命活動に変化はない、無事だよ』



 すると結果を聞いた彼女はもう用はないと、その視線を森の方へと移す。

 いつもの彼女であり、特段なにも思わない。 むしろ、この状況で平常を保ってくれるのは非常に助かるというもの。



 そして、もう一人の護衛に目を向ける。

 全身をフルアーマーで包み込み、白いマントを風に靡かせて黄色の瞳を真っすぐに前へ向ける厳格な男。

 クルセイドア王国唯一の英雄であり、今は近衛騎士団長を任せることになったガリウム・スノウ。


 『要塞騎士』の英雄クラスを持ち、その背中には身の丈以上に大きなタワーシールドが背負われている。

 こと護ることにおいては、恐らく大陸最高とまで謳われている生ける伝説。



 そんな規格外な二人を護衛に、その後方には夥しい数の兵士達が列をなして馬を走らせていた。

 その数、約200人。


 私の所有する近衛騎士に合わせ、第一騎士団の中でも王国への忠誠心と能力の高い者で選抜した者達である。



 数々の山を超え、4つもの都市を通り過ぎた。

 もう数時間も走れば、ヤンスーラの国境が見えてくるだろう。


 レクスィオは額に浮かび上がる汗を拭い、森の中を駆け抜けながら先日のことを思い出していた。



 紅玉騒動が終わり、リアが寝てしまってから二人の信頼できる側近と話し終えた夜のこと。

 ある程度の方針は決まり、後回しになっていた事態にも漸く手が出せる。


 本来であればここまで迅速に、異例な速さで動き出すことは不可能だった。



 正直、不安要素が全くないといえば嘘になる。

 考え出したらキリがないがそれ以上に、怖いのは護衛の一人であり超常的な力を持つリアの存在。



 数日前から国内で次々に沸き起こる問題の数々は、とてもじゃないが数日で解決できる内容じゃなかった。

 きっとこれからも問題は水面下で増え続け、気づいた時には手遅れ、もしくは対処しようにもそれ相応の期間と労力を求められる筈。 そうなれば彼女に設けられた三日など束の間に過ぎ去ることだっただろう。



 だが、そうはならなかった。



 王都で抱える問題はとんとん拍子で片付いていき、想定の数倍、いや十数倍ともいえる速さで解決してしまったのだ。 もちろん、経過を見なればわからない不明瞭な問題もあるだろうが、それは別に信頼できる者に任せることで解決できる。


 特に、犠牲なしでは解決は不可能に思えた『紅玉』についての騒動も、一時的にとはいえ鎮火できてしまったのは計り知れない程に大きな一歩となった。


 何より、そのおかげで厄介だった王妃すらも閉じ込めることにも成功したのだ。



 それによって彼女の力の一端を知ることになり、――恐怖故、もしくは危険を察知してかもしれないが――心置きなくあの二人も協力を申し出てくれた。 もしかしたら、恩返しという意味合いもあるのかもしれない。



 国の防衛は元近衛騎士団長のディズニィ、各地の薬物中毒者の対処はユーエスジェを筆頭に任せられる。


 そうして私は晴れて、ヤンスーラに向けて手を打てるようになった。

 三日という期間。 正直、他の者に任せる他ないと……半ば諦めていたが。



 (あの国が水面下で動いていたのは分かっていた。 それでもまさか、ここまで根が深いとは思わなかった。 証拠は十分にこちらが握っている。 どう返答してくるかなど、ある程度予想はできるが私はそちら程に野蛮ではないんだ)



 ヤンスーラ王国へ一応は親書を送り、返答を先回りして使節団と念の為の王国軍を再編しようと考えていた時だった。

 何処からか聞きつけたのか、リアは突然に現れては私を信じられない力で強引に何処かへ連れて行こうとする。



 「な、何をするんだ、リア!? この手は……いったい、どこへ行くつもりだ」


 「問題が解決したんでしょ? ならすぐに行くわよ」



 確かに彼女の言う通り、問題はある程度解決したと言っていい。だが約束の期日は三日。

 基本的には約束したことを守る彼女が、今はまるで私の言葉を意識して無視しているように見える。



 ――いや、待て。


 これまでの彼女なら、ここまで一方的で強引すぎる行動はしなかった筈だ。

 確かにリアは自由奔放でわがまま、傲慢が形をなしたかのように私の言うことなど聞いているようで微塵も聞いていない。 聞いてくれる時は決まって機嫌が良い時か、彼女の恋人達に癒された時くらいだろう。 ああ、どっちも一緒か。


 それらを踏まえると、今の彼女は機嫌が悪いということになる。

 だが、私には機嫌が悪い様には見えない。 どちらかといえば、我慢が出来なくなったといった感じだ。


 そう納得した時には既に、部屋の隅へと引き摺られていた。



 「ああ、だから既に動いている。 まずはヤンスーラに親書を送って、相手の――」


 「なに悠長なこと言ってるの? そんなもの要らないわ、直ぐにエルシアを助けに行くわよ」



 顔の傍に手を置かれ、鼻先が触れそうなほどに至近距離で近付けられる彼女の美貌。

 それは美しいと思うと同時に、漂わせる雰囲気と有無を言わせない眼力はまるで、捕食者を前にした被食者のようだった。


 しかし、だからといってここで何も言わず、彼女に言われるがままではいられない。

 私は自分より頭一つ分は小さなリアを見下ろし、怯える本能を奮い立たせる。



 「待て、待ってくれ! 確かに、状況証拠や目撃証言、それ以外にも幾つもの件をヤンスーラが絡んでいるという確信はある。 だが仮にも他国の王族である私が、友好国でもないヤンスーラに一報もなく国境を跨いで入国してしまうのは」



 私は余りにも滅茶苦茶な彼女に必死に言葉を並べるが、リアは落ち着いた口調で一言だけ口にした。



 「大丈夫よ」



 そう言ったリアは目元を細め、慈愛の籠った微笑みを浮かべる。

 それはまるで母親が子供に言い聞かせる様な、優しくも何処か諭す声音。



 「大丈夫って……下手したらこちら側に罪が被せられる可能性だってある、今回の件も有耶無耶に」


 「ならないわよ」



 自信満々にどこか確信をもった様子で答えるリア。

 どうしてそんなことが言えるのか、そう思った矢先。 「だって」とリアは続ける。



 「……私が滅ぼすんだから、ね」



 リアは口元をにやりと歪め、白い牙を覗かせながら楽しそうに笑った。

 背筋にゾクリとした冷ややかなものが駆け巡り、脳内には聖王国で起きた災害の一件が思い出される。


 どうやら情報を知り『疑似紅玉』アレを見ていながら、実際には被害を齎さなかったことで何処か忘れていたのかもしれない。 目の前の女性は、存在そのものが災害と変わらない。



 ――美しい女性の見た目をした、最古の魔族だと。




 そんな彼女の意思を知ってしまえば、もはや観念する他なかった。


 レクスィオだってこれまで数多くリアに助けられた上に、今回の件で彼女がどれだけ譲歩してくれたのかは理解しているつもりだ。

 本音を言えば、そんな彼女に一刻も早く報いたいという気持ちはある。



 そして移動が遅いという理由から使節団は却下され、せめてもの計らいでガリウムを連れて行った方がいいとリア本人に提案された。

 一見、私の身を案じて提案してくれたように思えたが、近衛騎士と兵士を合わせ遠征隊を組むこと伝えると、リアには物凄く苦い顔をされた。 ……なぜだ?



 表向きは『紅玉』の奪還のみに搾る。

 そちらの方が兵の士気は高くなり、外野や貴族から要らぬ憶測や口出しを防ぐ為にも必要だと判断したから。


 だが実際は『紅玉の奪還』『エルシアの救出』『カセイドの捕縛』の3つ。

 ルシーに関してはリアが本気で事に当たるだろうことから、生きてさえいれば成功は約束されている。



 そうして2日目の朝、早朝から王都を出発し現在に至る訳だった。



 (魔導馬具アーティファクトを付け、強化魔法を施した馬でここまで7時間と少し。 休憩を挟みながらではあるが、既に順調すぎる所まで来ている。 恐らくここを抜ければ、もう少しで砂漠地帯に入る筈だ)



 そう思って少し先の景色まで目を向けると、そこには草木が徐々に減り砂漠化が進行している森の末端部分が見えてきた。


 大地を蹴る音が徐々に乾いた音へ変化し、頬に触れる温かい風も水分を持っていかれるような感覚に変わる。

 すると数分もしない内に景色はガラリと変わり、見える光景はいつの間にか緑から砂色へと変わっていた。



 「現時点をもって国境を超えた! 紅玉の力も強まっている。 足を取られないよう十分に気を付けて進んでくれ」


 「「「「はっ!」」」」



 振り返って偽紅玉・・・を掲げていると、リアが隣へ移動してくる。

 その様子は一見普段通りに見えるが、心なしか覇気はなく顔色もいつも以上に気だるげだ。



 「これから本格的な砂漠に入る、大丈夫か? その……(吸血鬼として)」


 「ええ、問題ないわ。 少し……怠いだけよ」



 リアはローブの袖に手を通し、どろりとした赤い液体の入った容器を取り出すと口に咥えて飲み干す。

 隠す素振りすら見せなかったが、恐らく袖の中で次元ポケットを使用したのだろう。


 レクスィオは平然と周囲を見渡し、内心で慌てながら軍やガリウムを見る。

 ガリウムは最も近い所におり、何故かリアを観察し続けてる様子からバッチリ見ていたみたいだ。


 目が合い、平然とした様子でコクリと頷くガリウム。


 もう……何度目だろうか。

 リアは大したことないと思っているのか、もしくは対処できる絶対の自信を持っているのかもしれないが、自分が普通という枠から逸脱してることをそろそろ自覚して欲しいものだ。


 レクスィオは異様に元気になった――いや、いつも通りの――リアを見て深く溜息を吐き、比較的緩やかな砂丘を歩き始める。



 すると、『もあっ』とした蒸しあがる様な熱気が全身を包み込む。

 砂塵が舞い、風に運ばれまるで集合するかのように渦巻き始めると、眼前には先程まで存在しなかった砂塵嵐がみるみるうちに巨大化していき、それは全てを呑み込む程に極大な規模へと化けていく。



 「なっ!?」


 「はぁ、……最悪」




 後方からリアの小さな呟きが聴こえてが、これは最悪と言って済ませていいレベルではない!

 今すぐ手綱を引き、方向転換しようとするがとても間に合いそうになかった。 しかし。



 「……下らん。 その程度の魔法・・で我が盾を敗れると思うな」


 【守護者】《地精憑依》《城壁の構え》――"壮大な護盾"



 いつの間にか、レクスィオの前に躍り出たガリウム。


 その後ろ姿はまるで巨岩の如く堅牢であり、何者も通さない鉄壁の守護を彷彿とさせる。

 構えた大盾からは可視化できるほどの闘気を滲ませ、瞬く間にそれは眼前の砂塵嵐にも負けない程の巨大な盾を前方に生み出した。


 砂嵐はまるで私達を狙っているかのように、全てを呑み込みながら迫り来るとガリウムの張った巨大な盾に阻まれるのだった。


 周囲には地面を抉る程の暴風が吹き荒れ、絶え間なく無限の砂塵と鋭利な風切りが巨盾を容赦なく削り続ける。

 その様子を薄い膜の様な障壁内で、見守るように見つめていたレクスィオは静かに固唾を飲んだ。



 もし、あの砂嵐に飲み込まれていたら、どうなっていたか。


 視界は無数の砂塵に阻まれ、身動きも取れないまま体をズタズタに切り裂かれる。

 そうなれば何もわからずに、ここで遠征隊は全滅していたかもしれない。



 (これが……英雄。 人という枠に収まらず、神に愛されし者の人智を超えた力)



 そんな存在をまじまじと見つめ、ふと思い出したように隣のリアへと視線を移す。

 リアは砂塵嵐にも巨盾にも反応を見せず、只々フードの下からジッと青い瞳を覗かせるのみ。


 するといつまでも続くような巨盾と砂塵嵐の衝突は、唐突に終わりを迎えることになる。


 砂塵嵐は一回転するごとにその規模を縮小させていたのか、気づけば最初の大きさの半分ほどまでその規模を収縮させており、とてもじゃないが巨盾に打ち勝てるようには思えなかった。


 それでもガリウムは盾を構えながら消えゆく砂塵嵐をジッと見詰め、気を抜くことなくそれが空気に溶けて霧散するまで盾を張り続けた。



 「助かった……のか?」



 そう口にしたのはレクスィオと同様に見ていることしか出来なかった兵士の一人。

 そんな彼の言葉を皮切りに、兵士達は各々に歓喜の声を上げだした。



 「うぉぉぉ! 助かった、俺達は助かったんだぁぁ!!」


 「これが英雄の力! あれ程の砂塵嵐すら……完全に防いでしまうなんて!!」


 「ガリウム様万歳! クルセイドア王国万歳!! 助かった、助かったんだぁぁ!!」



 まるで戦いに勝利したかのような兵士達の喜び様に、思わず苦笑を漏らすレクスィオ。


 だが気持ちはわかる。

 自分たちでは到底どうすることもできない、文字通り"絶望"とも言える規格外な規模の砂塵嵐。

 障壁の中からその破壊力と恐ろしさを見てしまった身としては、九死に一生を得て喜んでしまうのも致し方ないと言えるだろう。



 (あれ程の規模、見たことも聞いたこともない。 偶々、この辺りの砂漠地帯はアレが発生する時期だったのか? しかし、それにしては発生するまでの流れが少し不自然だったような……私の気のせいか?)



 拭いきれない違和感に、何か重要なことを忘れてる気がしてどこか気持ちの悪い感覚を覚えるレクスィオ。

 すると、先程まで歓声ではしゃいでいた兵士たちの声がいつの間にか止んでいることに今更になって気づく。 ……少し考えすぎていたようだ。


 兵士達の方へ振り返れば皆同じ方向を向いており、その表情はまるでありえないものを見たかのように目を見開き口をポカンとしたまま唖然とした表情で固まっていたのだった。



 (何だ? いったい何を見て、――っ!!)



 それを目にした途端、レクスィオも同様の反応をせざるを終えなかった。



 砂塵嵐によって砂丘は崩れ、視界を完全に覆う程の砂塵は時間とともに薄れていく。

 すると、ちょうど私達が立っている位置から、その全貌がハッキリと見えたのだ。



 広大な砂漠を埋め尽くすほどの、数えることすら馬鹿らしく感じてくる夥しい数の兵士の姿。

 既に陣形は構え終え、ぽつぽつと掲げられた国旗に見えるマークが余計にレクスィオを混乱させる。



 「ヤンスーラと、エルファルテ……? 何故……帝国がこんな所に? ッ! まさか……最初から?」


 「どうやら、手を組んだようです。 その証拠に最前列、大旗を持った兵士をご覧ください」



 レクスィオは混乱した状態で、ガリウムに言われるがままに指し示された方へ目を向ける。

 そこには明らかに他の兵士達とは一線を画す、異様な雰囲気を漂わせてまるでガリウムやリアを見ているような感覚に陥る者達が佇んでいた。

 十分に離れているこの位置ですら、突き刺さるような殺気がひしひしと伝わってくる。


 間違いない、あの者達は――



 「……英雄か」


 「はい。 それと見た限り、軽く見積もって2万を優に超えているかと」



 こちらはリアとガリウムが居るが、相手は英雄が3人に加えて兵士の数はこちらの100倍。

 無謀だ……地の利はあちらにある。


 長時間の移動に続けてこの炎天下の中、仮に万全であればリアによって退路を作る事も可能だったかもしれない。 だが、本来日光ですら危うい吸血鬼が砂漠地帯で活動をしているんだ。 通常通りに動ける筈がない……。


 思えば先程の砂塵嵐。 不自然に生まれ、消えたと思えばあの軍団が姿を現した。

 恐らく、あの英雄の内の誰かがやったのだろう。


何故、圧倒的に優位で攻勢を仕掛けてこない? 弄ぶ気か?



 視界がチカチカと点滅し、『なぜ』『どうして』という疑問が脳内をぐるぐる回る。

 汗は止めどなく溢れ、今にも吐き出してしまいそうだ。



 「殿下、私が殿を務めます故、即座に撤退の指示を」


 「……ッ! だが、それは!」


 (読まれていた? 偶然? そんなわけがない。 あの陣営の配置、向きからしてこの先には我が国クルセイドアしかない。 なら最初から……いや、それよりまずこの場から撤退することを)



 はっきり言ってレクスィオは今、十分に頭が回っていない。

 それは自分自身、頭の片隅で自覚できている。


 それ程までに目の前の光景は衝撃的で、何故もっと入念に調べなかったのか、いつから両国に繋がりがあったのか、カセイドは何か知っていたんじゃないかと後悔の波が押し寄せる。


 必死に頭を動かし、この最悪な状況を変えようと常識の範囲・・・・・で、思考を動かし続けるレクスィオ。



 ――だがら気づかなかった。


 この場には眼前の光景を目にしても、顔色一つ変えずに平然としている者が居るなんて。



 「ホワイト子爵令嬢? いったい……何を」



 そう口にするガリウムの声が、ぐちゃぐちゃになって何も聞こえなくなっていたレクスィオの耳に響く。


 見れば、自身の専属侍女であるリアが馬から降りており、怯えて絶望している兵士に向けて「借りるわよ」と平然とした口調で一言いっては、無理やりに剣を奪い取っていた。



 そのまま数歩前を歩き、振り向くリアの碧眼と目が合った。



 「レクスィオ、この先にエルシアは居るの?」


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