いつもと違ったかも

 「矢間ちゃん、やーまーちゃん。あの爺さんの酒屋、つぶれるんだとよ。」

授業終わり、香田こうだが話しかけてきた。こいつは幼馴染以外の友達一号だ。

「まじで?なんで?」

「都市開発であの一帯が全部立ち退きなんだとさ。」

あの爺さんの酒屋っていうのは、宮濱酒店みやはまさかてんっていう、俺のじいちゃんの代からある酒屋さんで贔屓にしてもらってる。近所で一番ジュースが安い。そしてたまに顔を見せる爺さんの孫娘の恵菜ちゃんがめちゃくちゃ可愛い。

「都市開発って、このド田舎に?田舎のデートスポット代表のギャスコも、エオンモールも電車で行かなきゃ、一時間かかるようなところに?意味ないって。」

何を隠そうこの街は、街とは名ばかりのド田舎である。昔は賑わっていたとかもなく、ただ何個かの村やら集落が合併しただけの大きい村が名前変えただけ。

「都市開発って言ったって、三年もしたらゴルフ場が出来上がってるだけだろうな。矢間ちゃんどうする?爺さんのとこ行く?」

「もちろんよ。最後ぐらい恩返ししに行かないと。」

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