第3話 夕方

店では閑古鳥が鳴きっぱなしだった。


ランチ時間には、数名、物珍しそうに来客はあったが。


売り上げ的には、まぁこんなもんか?と楽観的に受け止めた。



お金をジャラジャラと勘定している時……またもや


嬢ちゃんの姿が?!



俺は嬢ちゃんに声を掛けようとしたが、隣に誰かいる。



その人は、俺に申し訳なさそうに話し掛けてきた。



『すみませんでした。うちの子が

になった様で。』


『あ!お母さんッスか。良かったなぁ、嬢ちゃん!』



『あの、その、…………』


『??』


『実は、うちの子がこちらに来たのは……ちょっと。家で……。』




非常に話し辛そうに、そのはゴニョゴニョとしている。見た目は金持ちそうだが?



さてはと俺は思ったが。



俺が椅子を用意すると、奥さんは申し訳なさそうに

椅子に腰掛けて、話を始めた。




『実は、ウチの亭主……経営者なんですが。その……あの……。』


『どうぞ。話して楽になるなら』



『はい。取引先と上手く行かず……近頃、様子が変わってしまいまして……。』


『うん。それで?』



『昨晩は、始めて打ち明けられたんです。』


『なにを?』



『え……だから不渡りが……

ゴニョゴニョ。』


俺は、何となく睨んだ通りの答えが返って来たので、少し深いため息をつく。



そして鑑定に入った。



奥さんは首を傾げる。



俺はお構いなしに鑑定を続ける。



『今から話す事を、奥さんは実行して下さい。先ずは神社参拝に行って、今までの御守りを処分して下さい。そして買い替えたら。

肌身離さず、持っていて下さい。


ここまでは、大丈夫ですか?』



『は?……あ、はい。??』



『それから、3日間、お風呂に

入る前に、今は夏ですからね?

水を頭から掛けて下さい。良いですか?3日間ですよ?』



『は?……はい?はい。』


『その後は、旦那様に御守りを渡して、3回目の取り引きで挽回出来ますから。』




奥さんは、とても驚いた様子だったが。



俺にとってはまだまだ、鑑定は終わってない。


俺は続ける。


『そこで、嬢ちゃんにもパパを助けてもらう事になるぞ。』



嬢ちゃんは目を真ん丸く見開く。



俺は、可愛らしく妖精の絵が描いてある御札を嬢ちゃんに渡した。



『嬢ちゃん、お庭があるだろ?』


嬢ちゃんはコクリ。と頷く。



『キンモクセイの木に、その御札を嬢ちゃんがパパの為に付けるんだ!良いか?!やれるな?』



嬢ちゃんの表情は、途端に明るくなる。



『さぁ、仕上げに生ジュースあげるから。お代は鑑定結果がどうなったか?で決めてもらう。』



俺は、柑橘系の生ジュースを作り始めた。



嬢ちゃんには少し甘めに。

お母さんにはスッキリ目に。



2人に生ジュースを持たせると、



2人は、お互いに目を合わせて、

キツネに頬を抓まれた様な表情を浮かべながらも、


帰って行った。







俺は


必ず大丈夫だ!あの家庭は。




まだまだ愛があるからな?!



閑古鳥が鳴いていた店にも、ようやく客足がと出始めた。

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